魔装少女 起動
「腕で?杖は?」
「ですから、彼女が戦闘終了後に到着したのでもしかしたら杖を仕舞っていたのかもしれませんが、状況的に腕で引き裂いた様にしか見えませんでした。」
魔法少女達は杖を使い、魔物と戦う。それが魔法少女の常識。
だが、アルタイルの話だとその野良の彼女は魔法少女の常識から著しく離れている。ただ、杖にも様々な形状がある為、アルタイルから見えなかった可能性もある。
その事も気になるが、どうやって件の彼女がここから逃げたのか聞いておかなければ。
「そ、それで?その子は貴女からどうやって逃げたしたのかしら?」
「彼女を捕縛しようとした時、急に目の前に閃光魔法を撃たれて視界を失っている間に煙幕まで張られて逃げられました……」
「目くらましを使って逃げ出すって事は戦う意思は無かったのかしら?」
「はい、彼女も戦う気はないと言っていました。あっ最後に聞こえたのは「また会おうフハハハハ!」とかなんとも言えない言葉でしたが……」
なんとも芝居っぽいというか……子供っぽいというか……
「とりあえず貴女が無事で良かったわ、一度支部に戻りましょうか。」
ここに居座る意味ももう無くなったので支部に戻り、アルタイルの報告書を見てから再度調べてみよう。
「分かりました。支部に戻ったら報告書を書きますね。」
「よろしくね。あ、そうだ。その野良の子って名乗ったりしてた?」
報告書で上がってくるだろうけど聞けるなら先に聞いておきたい。
「魔装少女クロガネと名乗っていました。」
魔装少女?魔法少女では無く?
「魔装少女クロガネ……出来る限り良好な関係で居たいわね。」
きっと飛び掛かったアルタイルにも攻撃せずに態々目くらましで対応して逃げている辺り中々のやり手ね。
「次会った時はキチンと謝ります……」
「そうね。次会ったら謝ろうって考えているのは良い事よアルタイル。えらいえらい。」
アルタイルの頭を撫でて、褒める。
そうしてモールの前に停めてある特殊車両に二人で乗り込み、北海道第一支部へと帰還する。
(新しい野良の子、クロガネ……いったい貴女は味方なのかしら?それとも……)
「クシュン!」
くしゃみが出た。風邪かなぁ?
「誰か噂しているのではないか?」
「まっさかぁ?」
噂だなんてそんな事ある訳ないじゃん?
「クロトよ、今日は我々が大変な事をしたではないか?」
うん、気にしない様にはしてたけどやっぱ現実だよね。
「俺達が魔法少女……いや、魔装少女になっちゃったのはやっぱ現実なんだよなぁ。」
「そうだぞ現実なのだ。そして今日は疲れたであろう?早めに寝るとしよう。」
確かに変身してたとはいえ、俺自身はモール内を走り回ったりして結構疲れているので、サッと風呂に入って寝よう。
湯舟に入り、今一度自分の体を見る。いつ見ても小さな体だ。本当に良く生き残ったものだと改めて思う。変身を解除した時に痛めつけられた傷は消えていたが、背中の傷は消えていなかった。
「やっぱり、この傷は残ったか……」
忘れたい過去の傷、俺の時間が止まった時の傷。
「そんな都合よく、消えてくれないよな……」
気分が沈んでいくが、何時までもこうしてる訳にはいかない。
「さっさと体洗って、さっさと寝る!」
そう自分で踏ん切りをつけて体を洗い、風呂から上がる。
「おっ?クロトよもう上がったのか?今からゲームしようと思っていたのだが一緒に少しやらないか?」
さっき早めに寝るとか言ってたのは何処の誰だ。まぁ今の気分ではぐっすり寝る事も出来ないだろう。ここは一つ、魔王様の提案に乗ってやろうじゃないか。
「おう、やろうじゃないか。どんなゲームでもコテンパンにしてやろう。」
「随分とやる気だな?だがそう来なくては!」
いそいそと、準備しているヴァイスの顔は楽しそうだ。
「クロトよ、我らはもう一心同体の様な物だ。落ち込んでいるのなら励ましてやるのも親友の務めよ。それに……」
ヴァイスは俺が落ち込んでいるのが分かったから、元気付ける為にゲームに誘ったのか。ホントにすごい奴だよ。
「今なら勝てるかもしれんしな!」
前言撤回、ただの負けず嫌いだった。これはお仕置きが必要ですね……
「それは無いな、俺を励ますつもりが俺に励まされない様にする事だな!」
だが、感謝するよヴァイス。お陰で元気が出てきた。
「「絶対にお前(おぬし)を倒す!!」」
そして俺達は夜が明けるまでゲームをして、その日の昼までグッスリ寝るのだった。




