第13話
熱い! 体が溶ける程の熱が僕を包む。
全てが溶け、交じり合い、新しく生まれ変わる。
体も……心も……
これまでの力を超越した快感。他の者を上回る優越感。
晴れる気持ちと同期するように周りの煙も離散する。
「やっぱりそういう格好になるんだ。意識はちゃんと保ってるよね?」
言われて自分の姿を見ると、さっきまで着ていた患者衣が真っ黒になっている。
しかも肌にくっつくかのように脱ごうとしても脱げなかった。
「じゃあ時間もないし行こうか」
「どこへ行くんですか?」
村井は答えず部屋を出て行ってしまう。
僕はここへ連れてこられてから、トイレ以外での部屋からの外出は禁止されていたので、少しドキドキしてしまう。
村井は部屋から右手に進んでいくので後に続く。左右に同じ作りの扉を見ながら進み、階段を使って2つ上のフロアに来た。少し先にあった、1つの扉の前に立ち止まる。
扉を開け中に入ると、さまざまなマシンが設置してあるトレーニングルームだった。
「今からそのスーツの性能がどの程度なのか調べるから、順番に機械使って測っていくからね」
「身体測定ですか……」
「これからやるんですか?」
村井がウエイトを調整したマシンに座り、グリップを握って力を入れる。
ガシャン、ガシャン。
「おっ! まだ余裕あるね!」
ガシャン、ガシャン。
「全然軽いですね! まだまだイケますよ!」
村井は後ろに回りウエイトを重たくする。
ガシャン、ガシャン。
「見てくださいよこのパワー!」
ガシャン、ガシャン。
「すごくないですか! もっと重くして大丈夫ですよ!」
「……さいなぁ」
さらに重たくする。
ガシャン、ガシャン。
「結構重たくなってきましたけど、もう少しいけるかも! 今何キロいきました?」
「さっきからうるさいんだよ! 阿部君! 紙とペン!」
突然怒り出した村井に驚き振り返る。
「あっ……すいません……でも、そんないきなり……」
走って持ってきた阿部から紙とペンを受け取り、それを僕に押し付けてくる。
「さっきから何言ってるか分かんないよ! 言いたいことあったらそれに書いて!」
「えっ? 分かんないってどういう――」
「イーイーうるさいよ! ほら早く書いて!」
「イーイーって……」
それを聞いて僕は仲間たちがイーイー叫んでいたのを思い出していた。