第12話
「そのボタンの事だけど?」
「これは明日に参加できない時に押さないと駄目みたいです」
僕は耳のボタンを触りながら話す。
「明日?」
「はい、通信が来た20時間後に指示された場所に集合っていう決まりなんで」
「ボタン押さなかったらどうなるの?」
「どうなるんでしょう?」
顎に手を当て、村井は考え込んでいる。
「次に通信が来たときは押さないでおこう」
「大丈夫なんですか? ちょっと怖いんですけど」
「そんなおかしな事にはならないと思うよ。それにボク等に協力してくれなかったら、前田君逮捕されちゃうかもしれないし」
「そんな……」
「まぁ大丈夫だから! じゃあボクは南さんに明日の事、伝えてくるね」
「はい……」
出て行く村井を見ながらため息をつく。ホントに大丈夫なんだろうか。
桃子ちゃんの方を見ると、まだシュンとしていた。
「そろそろご飯食べようかな」
「はい……」
3日後、午後21時。
「来た?」
通信が来たという事で、村井が尋ねてきた。
「はい、相変わらず雑音だけでしたけど」
「押してないよね?」
「押してないです……」
「じゃあまた20時間後に様子見に来るけど、早めにご飯は済ませて待っといてね。押しちゃ駄目だよ!」
「わかりましたよ!」
村井は機嫌が良さそうな感じに出て行った。
翌日午後16時55分。
部屋には村井ともう一人、白衣の男性がいる。
「こちら助手の阿部君」
「よろしくお願いします」
阿部は頭を下げて挨拶をする。
「こちらこそお願いします。なぜ今日は助手さんも?」
「たぶん今から忙しくなるだろうから。こっちに立って手を出して」
言われた場所に立って手を前に出すと手錠を掴まれ引っ張られる。
カチャ、カチャ。
「え?」
「もうすぐ時間だからそのまま立っててね」
ここに来てからずっと僕の両手を縛り続けていた手錠を、村井は突然外したのだ。
いきなりの事で驚いたが自由になった両手を見ていると涙が出そうになる。
「いいんですか?」
「うん。でも逃げないでよ。逃げたら射殺するように言ってあるから」
村井は笑顔で話しているが、目は笑っていない。
涙が引いてしまった……
午後17時。
「そろそろだね……」
僕の足元から突然煙が吹き上がる。
「やっぱりね」
村井が満足顔でいるが、それもすぐに見えなくなる。
僕の全身は煙に包まれた。




