1/3
虹色湖(1)
一定の感覚で身体を揺する、心地よい電車のリズムに耳を澄ませる。
昼下がりの眠気に意識を遊ばせながら、視線をボンヤリと手元の本に落とした。
特に面白いというわけでも、読まなければならないというわけでもなく、電車に乗るための小道具としての本だ。
表面に印字された活字は、何事か語りかけようとしているが、私の意識の表面を通り抜けることは出来ない。
まどろむような感覚の中、電車は止まることなく進んでいく。
大きなため息のような音を立てて、電車が扉を開いた。
何時の間にか停車していたようだ。
周りを見渡しても、他に乗客の姿は見当たらない。
しばらく待ってみても、再び走り出す気配はみえないので、とりあえず私も電車を降りてみることにした。
電車の外にはホームのようなものはなく、目の前には虹色に揺らめく湖が広がっていた。
風に水面が揺れるたび、滲むように色が混じり合う。
目を凝らすと、湖の底から背の高い植物が、湖面ぎりぎりまで葉を伸ばしている。
その色とりどりの葉や花が、波に揺られ陽の光を受けて、湖を幻想的な色に染めてた。
私は湖の美しさに言葉を失い、時を忘れて立ち尽くした。




