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神様を継ぐ日 ~Angel Hazard~  作者: 千夜
第三章 離散

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27:果たすべきこと

 家に向かう道中、鳴神駅の交差点を通り抜けた。明と初めて出会った時のあの混乱はもはや見る影もなかった。

「そういえば、俺をここに連れてくる前、居場所は分かったのに家の住所は特定しなかったんですか」

 シャッター街でアステリズムに捕まった時、気になっていたので質問した。

「いやー、そこは分からなかったなあ。あくまでも俺たちは研究機関であって警察じゃないから名前までは割れなかったんだよねー」

 広田はそう答えた。しかし、俺の疑問がまた新しく生まれた。

「そうだったんですね。でも、どうして俺にターゲットを絞ったんですか?」

「煤垣君とユタ君の因子反応が他の覚醒者の反応と比べてかなり特殊でね、村上がどうしても捕獲したいって言うからそう決まったんだ」

 捕まった理由はなんとなく理解できた。それだとやっぱりあいつ実験する気じゃね?俺の心の不安は収まらない。そういえば明がアステリズムは天界因子を検出する機器を持ってるって言ってたな。多分それで逃亡先がバレて待ち伏せされてたんだろう。


 そうして出発してから20分ちょいで俺の家に着いた。

「ええっと、ここで合ってるよね?」

 広田は目的地が間違っていないか俺に確かめた。近所は特に変わったことは無さそうだ。

「はい、ここが俺の家です。ありがとうございます」

 5日ぐらい留守だったな。空き巣に入られてないか不安だ。


 俺は車から降りるとすぐに玄関に向かい、ズボンのポケットから鍵を取り出してドアを開けた。部屋を確認すると荒らされた痕跡は幸いにも無かった。安堵しているとノック音がして広田の声が聞こえてきた。

「煤垣君ー、俺も上がっていいかな?何個か段ボール持ってきたから」

「あ、どうぞ。段ボール持ってきてくれたんですか?助かります」

 広田の存在を忘れてしまっていた俺は、慌てて玄関を開けて広田を部屋に案内した。どうやら引っ越しの準備を手伝ってくれるようだ。まず充電器をしまい込んだ。身分証は全部携帯に動機されているから充電が切れてしまうと何もできなくなってしまう。そして教科書の他に衣類や冷蔵庫に残った食べ物をそれぞれ段ボールの中に入れた。


 一通り箱詰めが終わるとその段ボールを車に積み込んだ。そして家の鍵を閉めて車に乗り込んだ。

「いやー、大学時代の引っ越しを思い出すなあ。じゃあ行こうか」

「手伝っていただきありがとうございます」

 そして車が出発した。住み慣れた街並みを通り過ぎていく途中で、河川敷に架かる橋梁に差し掛かった。対岸には海神高校が見える。

 夏休みももうすぐ終わる。あいつらにどんな顔をしたらいいだろうか…。この街から一度逃げるまでに海岸や交差点で因子を発動させたことはSNSで話題になっていたからもし言われたらどう誤魔化せばいいか全く思いつかない。強いて言い訳するなら”AI映像だろ”、と一点張りするぐらい、か…


「そういえば、ユタ君ってどんな人なの?」

 これからの学校生活について悩んでいると、広田が話しかけてきた。

「…友達、というか…恩人ですね」

「へぇー、恩人か。そう言うなら村上も俺の恩人なんだよな」

 広田の横顔はどこか懐かしく思うような表情をしてそう言った。

 個人的に村上は他人に興味が無さそうな感じがするが意外と親切なところがあるのだろうか。

「村上さんがですか?」

「うん、さっきも言ったけど村上とは大学が同じでね。その時の俺は勉強全然やってなくて何度も留年しそうだったんだ。で、その度にあいつに助けてもらったんだ」

 恩人という言葉で思い出したのか、広田は村上との思い出話を語り始めた。

「めっちゃ世話になってるじゃないですか」

「マジで感謝しきれないよ。村上はああ見えて割とお人好しなんだよな」

 

 村上も、根は良い奴なんだ。広田の話で認識が変わった。


 アステリズムに到着すると2人で段ボールを新しい俺の部屋へと運んでいった。引っ越しが無事に終わっもののそれなりに疲れたのでしばらく部屋でそのまま休むことにした。

「いやー疲れたなあ」

「マジで助かりました。我儘を聞いてくださって本当に申し訳ないです。」

「いいよいいよ全然」


 ーピコン!ー


 突然、メールの着信音が部屋に響いた。発信源は広田の携帯だった。

「ん?村上からか」

 返信すると広田は立ち上がり、少し急ぐような目つきで俺を見下ろした。

「煤垣君、村上が君に用があるらしい。ロビーまで着いてきて」

「わ、分かりました…」

 理由を教える間もなく広田は俺を部屋から連れ出すとロビーまで向かっていく。俺に用があるってなんだ?もしかして今度こそ実験台にされちまうのか?


 ロビーに着くと村上がそこで待っていた。隣にユタの姿は無かった。

「急に呼んで悪いな煤垣。でもお前に伝えなきゃいけないことがある」

 村上は真剣な眼差しでそう言い切った。車で喋った時のめんどくさそうな感じとはまるで別人だ。

「お前には部屋を用意したがただそこで暮らせという意味じゃねえ。アステリズムの使命は天界因子の研究を通して社会の平和に貢献していくことだ。そのために、お前の力を借りる必要がある」

「…力?」

「ああ、お前も知ってるとは思うが最近覚醒者(エヴォルバー)が暴れる事案が多くてな、こっちだけでは対処が難しいんだ。先に言うが今日からお前を特別任務実行者として任命する」

 村上の言いたいことが分かった。良いことではないのは確かだ。

「それってつまり…」

「覚醒者の暴走が確認され次第、そいつらと戦え。それがお前の果たすべきことだ。」


 マジかよ…。俺、今日から戦わされることになったらしい…

 


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― 新着の感想 ―
読了しました!! まさかの永住して保護してくれるみたいな意味ではなく……住み込みで覚醒者の討伐任務を受けるってことΣ(゜д゜;)!? 凄い話変わってくるやーつ!! 次回の展開も楽しみにしております(…
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