表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/100

第21話 運命共同体

現実ではまずあり得ないことやらせました

『最後に、タイムにとっても、マスターにとっても、とっても大事なことをお話しします』

『ん? エイルに聞かれたくない話なのか?』

『そうですね。タイムはまだ話したくありません』


 いつになく真剣な表情のタイム。

 その上エイルには聞かれたくないという。

 一体なんの話だ?


携帯(スマホ)の電池が切れたことについて、お話ししなければならないことができました』


 そのことについてはもう話が終わってたんじゃなかったの?


『その……マスターの電池のことです』

『俺の……電池?』


 なにを言ってるんだ?


『はい。マスターは携帯(スマホ)と融合したことによって、マスターは電池で動くようになりました』


 こいつ、真顔でなに言ってんだ?


『あはは、なにそのギャグ設定』

『ギャグじゃありません。真面目な話です。茶化さないでください』

『あ、はい。ごめんなさい』


 ギャグでないとしたら、一体なんだというんだ?


『タイムもよく分かっていませんが』


 分かっていないのかよっ。


『マスターの電池が切れたら、活動が停止してしまうそうです』

『その前に、俺の電池って、なに?』

『それが分かっていたら、タイムも苦労しません』


 おいおい。真顔で言うな。


携帯(スマホ)はマスターから電源をとって、電池に充電しています。3m以内なら、電源が繋がっていられるそうです』

『えっと……俺がモバイルバッテリーで、そこから電源をとって携帯(スマホ)が充電されているってこと?』

『あまり難しいことを言わないでください。タイムに分かるわけ――にょ? その認識であっているそうです』


 あ、なんかいつものタイムっぽい。

 でも俺の電池については解説無いんだ。なんでかな。


『マスターの充電は、基本的に呼吸や食事でできるそうです』

『あー、それが大食いの原因なのか』

『いえ、単にエネルギー効率が悪いからと言っています』

『そうですか……』


 エイルが言ってたことって、こういうことなのか。

 効率が悪くても、食べ繋げることを喜ばないと。

 0は何万倍しても0だけど、そうでないならなんとかなる。


『ここからが本題です』


 あれ、まだ本題じゃなかったんだ。

 前提条件? なのかな。


『アプリを使うと消費電力が上がります』


 あーそうね。いたずらにアプリを入れまくると、バッテリー切れるの早くなるよね。

 不要なアプリはアンインストール、基本だ。


『最初のうちは大丈夫なのですが、アプリの消費電力が上がっていくと、充電が間に合わなくなります』

『それってつまり……バッテリー切れになるってことか?』

『……だそうです。問題なのは、携帯(スマホ)と違って切れたら充電ができなくなるとのことです』

『……予想はつくけど、つまり?』

『マスターとタイムは死にます』

『タイムも?!』

『当たり前です。タイムはマスターを依り代にして生きているんです。マスターが死んだらタイムも生きてはいられません』


 一蓮托生ってことか。

 せめてタイムだけでも助かってくれれば……ま、それも悪くない。


『いたずらにアプリを入れまくったり、使いまくったりすると、寿命が縮まるそうです。なので気をつけてください』

『分かった』

『それから、筋肉量が増えても消費電力が増えるって言ってたよ』

『えっ? つまり戦力アップすればするほど寿命が削れる的な?』

『うにゅ? ……? 寿命じゃなくて電池……?』


 おい、頭に〝?〟を浮かべるな。

 あ、またなにかと話し込んでやがる。

 そんなに難しいこと言ったか?


『んー……と。もうそれでいいって言ってるよ』


 あ、タイム相手に説明を放棄したんだな。せめて俺には説明をしてくれよ。


『筋力量は増やし過ぎない方がいいってことなのか?』

『筋力が付けば、アプリの消費電力が軽減される……事もあるって』


 なんだかなー。

 一長一短か。


『強力なアプリを使うと、一気に充電を持っていかれるから注意しろ、だって』


 なるほど。大技を使うにはそれなりの電力が必要ってことか。


『それに、食事以外の充電方法を確保できれば問題ないって』

『具体的には?』

『さあ? ……って〝さあ?〟じゃないでしょ!』


 役に立つんだか立たないんだか、よく分からん。

 でもあれだよな。

 要するに充電量がSP(スキルポイント)で、消費電力が消費SPって感じか。

 呼吸が自然回復で、食事がSPポーションかな。

 そうやって考えると、わかりやすい。

 問題なのは、SPが0になると死ぬってことだ。

 食事以外の充電方法……うーん。どうやって確保しよう。そもそもどうやって充電するんだろう。

 エイルが魔力を流そうとして弾かれたから、やっぱり魔力と電力は別物と考えていい。

 となると……あれ? この世界って魔力と魔素しかないんだから、方法なくない?

 エイルも「電気なんて無いのよ」って言ってたし。

 詰んでる?!

 長生きしたければ……エイルに養ってもらうしかない、と。


『それで、タイムのことなんだけど……』


 タイムが下を向いて、なにか言いづらそうにしている。

 この期に及んでなにを言いよどむ必要があるのか。


『タイムが……その』


 言う勇気がもてないのか、続きが出てこない。

 仕方ないな。頭を撫でて緊張を解してやるか。


『いいから言ってみろ。今更拒むとかしないよ。気楽に、な』

『うう……はい』


 意を決したのか、俺をじっと見つめてきた。

 さて、なにが飛び出すやら。


『その、タイムがこうやって外に出ていると、それなりに電力を使います』


 なるほどね。

 半ば予想はしてたけど、今更だな。


『だからタイムは、携帯(スマホ)の中に引きこもった方が――』

『バカ言うな!』

『にゃあ!』


 なにを言い出すかと思えば、こいつは……


『あのな、携帯(スマホ)の中にタイムを閉じこめてまで長生きしようとは思わねえよ!』

『でも――』

『デモもクラシーもねえ! ここは絶対王政なんだよ。だいたい、携帯(スマホ)の中からじゃアプリの使用タイミングなんて分からないだろ』

『タイムの視界は、マスターの左目とリンクさせられるから大丈夫』


 俺の見ている光景が共有できるってことか。だからって許容できることじゃない。

 それに……


『まさかとは思うけど、携帯(スマホ)のアップグレードもしないつもりじゃないだろうな』

『うゆ……』


 考えてたのか。

 まったく、この子は。


『よーし、分かった。タイムがその気なら、今ここでアップグレードしてやる!』

『にゃ! だ、ダメだよ。ホントに消費電力が上がる――』

『すぐにヤバくなるようなレベルじゃないだろ!』

『そうだけど……、無理だよ。お金がないもの。携帯料金と違って、一括払いだけなの』

『そうか……』


 だったら。


『最低いくら必要なんだ?』

『えっと……いくら?』


 またタイムがなにかと話し始めた。

 お、珍しくメモを取っているぞ。

 いや、取らされているのか?


『んと、とりあえずCPUとGPUとRAMをワンランク上げるのに、下取り込みで2万9000円かかるって』


 それが高いのか安いのか分からない。

 でも必要なら突っ込むしかない。


『分かった』


 そういうと、俺は立ち上がってタイムを椅子の上に下ろした。

 タイムに微笑みかけ、それからエイルの方を向く。


『マスター?』


「エイル、少しいいか?」

「ん? なんなのよ」

「相談があるんだ」


 エイルは振り返ると、ぎょっとした。


「な、なんなのよ」


 俺はエイルに対して深々と(こうべ)を垂れていた。


「少しばかりお金を貸してくれないか?」


『マスター?!』


「突然なんなのよ」

「入り用なんだ。頼む!」

「……家族での金の貸し借りはダメなのよ」


 そういうと、再び仕事に戻った。

 俺を家族と思ってくれているのか?

 それは嬉しい。嬉しいけど。


「どうしてもダメか」

「ダメなのよ」


 まあ、家族だからでなくとも、昨日今日会ったばかりの奴から「金貸して!」と言われて、二つ返事で貸す奴も居ないか。


『わるい、嘘ついた』


 そもそも他人任せとか、しまらないよな。


『ううん、気持ちは分かったから、もういいよ』


 タイムを抱え上げて、椅子に座ってうなだれる。

 仕方がない。アプリをインストールして狩りをして、地道に稼ぎますか。

 ふうと1つ、ため息をついた。


「いくら必要なのよ」


 顔を上げると、エイルは仕事をしていた。

 聞き間違いかな。


「いくら必要なのよ、聞いてるのよ」


 もう1度エイルを見ると、今度はこっちを向いていた。

 聞き間違いじゃなかった。


「貸してくれるのか?」

「貸さないのよ」


 貸してくれないのに、聞く必要なんてあるのか?


「……2万9000円」

「? いくらなのよ?」

「2万9000円だよ」

「〝円〟てなんなのよ?」


 あれ? ここの通貨単位は〝円〟じゃないの?


『タイム、どういうことだ? 携帯(スマホ)の請求は〝円〟だったよな』

『うゆ? にゅー……分かり易いように〝円〟で管理。現地通貨とは随時レート交換して取り引きされるから問題ない……って』


「いいのよ、とにかく請求するのよ」

「請求?」

「身分証で必要な金額のよ、請求するのよ。金額を見てのよ、振り込むのよ」

「どうやるんだ?」

携帯(スマホ)でのやり方のよ、知らないのよ」

「マスター、タイムがやります!」


 タイムが手を挙げ、自信満々に宣言した。


「おう、分かった。任せる」


 タイムがガマグチケータイアプリを起動した。

 所持金は見事に0円。少しくらい持たせてくれてもよかったんだけどな。

 ……電子マネー?

 現金じゃないのか。

 考えてみれば、現金を借りられても、支払い方が分からなかった。

 タイムがサクサクと操作している。

 いつの間にこのアプリの使い方を覚えたんだろう。

 なんとなく頭を撫でてやる。


「うへへ」


 変な声を漏らすな!


「マスター、準備できたよ。後はタッチするだけー」

「ん、ありがとな」


 ワシワシと頭を撫でてやると、のどを鳴らして喜んだ。

 エイルの身分証に携帯(スマホ)でタッチする。


「……ま、いいのよ」


 今度はエイルが身分証を携帯(スマホ)にタッチさせた。


「大事に使うのよ」


 所持金を確認すると、2万9001円に増えていた。

 なにこの1円は?


「貸してくれるのか?」

「貸さないのよ」

「じゃあ……これは?」


 エイルはなにも言わず、仕事に戻っていった。


「なあ」

「うるさいのよ! 細かい男はモテないのよ」

「それ今関係ある?!」


 黙々と仕事をこなすエイル。

 どうしたものかと思ったが、まあ後で返せばいいか。

 今は感謝しておけばいい。


「ありがとう」


 エイルの背中に礼を言うと、左手で返事が返ってきた。

 早速使わせてもらおう。


『じゃあタイム、手続きを頼む』

『……本当にいいの?』

『いいんだ』

『うにゅ、分かった』


 CPUの換装ってどうやるんだろう。

 ……頭を開いて入れ替える?

 それはグロいな。

 そもそも開くのか?

 ちょっと不安になってきた。

 タイムが購入手続きをしている。

 ネットショッピングまでできるようになっていたなんて、成長したんだなあ。ヨシヨシ。


「うなぁー」


 目の前にメッセージウインドウが表示された。


「後はマスターが確定すれば終わりだよ」


[購入を確定しますか?]


 [確定]っと。

 これでいいの――

 俺の意識は、そこで途絶えた。

スマホもPCみたいにカスタムできたら、買い換え周期も変わるのかな

防水性が無くなるかもだから無理か

次回はタイムに変化が?!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ