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オタク姫 ~100年の恋~  作者: 菱沼あゆ


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逆だろう、朝霞

 


 夢の中――。


 イバラの中には、城ではなく、小さな花畑があった。


 そこに朝霞が眠っている。


 朝霞は、ふんわりと広がっているパステルカラーの美しいドレスを着ていた。


 みんなが姫と呼びたくなるのもわかる感じだ、と思いながら、十文字は汚れない感じがする朝霞の顔を見下ろしていた。


 ゲームの中では、自分よりも恐ろしいルートを平気で思いついたりする女のようなのだが……。


 この間、廣也と三人でゲームをしているとき、自分と話している廣也の後ろから、

「だったら、そこは、引き出しに入っていた注射器を……」

となにか恐ろしいことを口走っている朝霞の声が聞こえてきていた。


 面白い奴だ。


 顔と性格にギャップがある、と思いながら、十文字は朝霞の側に膝をつき、その寝顔を眺めた。


 朝霞はなんの夢を見ているのか、微笑んだような顔で眠っている。


 その顔を見ながら、十文字は思っていた。


 なんでお前が俺を起こすんだ。


 逆だろう――。


 十文字は花咲くイバラの中に眠っている朝霞の白く小さな顔の側に手を置き、見下ろした。





 次の日、朝霞たちは電車に乗ってこなかった。


 どうしたんだろうと思っていると、スマホにメッセージが入った。


「出遅れました」

と朝霞から、ごめんなさいのスタンプとともに入ってくる。


 いつも一緒になるのに、いなかったら驚くだろうと思って、わざわざ送ってくれたようだ。


「みんな、一本あとの電車で行きます。

 私が、うさぎして、風邪ひいて、支度が遅れたんです。

 すみません」

というメッセージが朝霞から来た。


 だが、すぐにまた、ピコンと鳴って、メッセージが来る。


「すみませんっ。

 打ち間違いました。


 薄着して、風邪をひいたんです」


「このボケが」


「すみません。

 これはおにいちゃんです」

と立て続けに入ってきた。


 相変わらず、仲の良い兄妹だ、とか言うと朝霞は、

「何処がですかっ」

とか言いそうだが。


 十文字はスマホを読み返し、うさぎな朝霞を想像する。


 廣也と同じように、このボケが、と思う自分と、可愛いじゃないか、と思ってしまう自分がいた。



 


 俺は100年の呪いにかかったのだろうか。


 いやいや。


 ……その呪いは諸般の事情により、ちょっと嫌なんだが、と十文字は思っていた。







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