子守唄
タンシアが、ふとした拍子に涙を流す。本人も何故、涙が出るのか分からないらしく、とまどうばかりだ。
流れ落ちる涙に双方で焦る。もの凄く焦る。
私にすら分からない気配を、タンシアが察知しているのかと思うと、居ても立ってもいられない。
連れて行かれたらと、考えるだけで身体中から力が抜けてしまう。この世にいない者がタンシアをどうやって連れて行くのかと、冷静に考えようと努力する。
けれど万が一ということもあると、悪い想像ばかりが心を占めていった。
これだけ私が動揺するのだから、あいつなら泣いているタンシアのために蘇ってくるのではないかと、あり得ない想像までしてしまった。
蘇ってきたあいつには絶対に渡さないとか、闘争心に我を忘れかける。
馬鹿すぎる思考に、頭を抱えた。
涙を止めたくて、止まれば、私のものと意味の無い願掛けをしている。胸元にタンシアをきつく抱き締めて、流れる涙を吸い取っていく。
早く、早く、早く、泣き止んでくれ。
一番、側にいるのが誰なのか。私だ。私なのに、タンシアの涙を見る度に、不安になる。
タンシアの涙を止めるための試行錯誤を繰り返す。
眠りにつけば、泣き止んでくれるかとタンシアを抱きかかえあやしたりもした。端から見れば、滑稽だろう。
眠たげなタンシアのために、私が歌っているのだから。
眠りへと誘うようなそんな旋律を、歌い続ける。
タンシアの寝顔が、嬉しそうな楽しそうな表情になっていくのに安堵する。よし、今日も勝ったと、大きな達成感とともにタンシアを抱き締める。
私達の間に何ものも入り込めぬよう、しっかりと抱きかかえて二人、寝台に身を沈めた。