底辺のおっさん、『口は災いの門』である事を実感する
短いです
主人公のおっさんは同郷のモノに出会います。
「秘剣、半歩ずらし······」
船に乗るとだいたい気絶して浜辺に打ち上げられる赤毛の冒険家並みに意識を失ってるな俺。
上半身を起こして頭を振るとコスプレしたカ●ジが寄って来た。
「お目覚めですか、我が君」
「まだ寝てる、コスプレしたカイ●ってどんな夢だよ」
「マスター、現実です。
『古代ゴブリン』のイットゥー『ホワイトゴブリン』のシブ両名と私がマスターをこの河川に運搬しました」
『召還姫』の説明に俺は息をつく。
あぶね、チェンジとか言いそうだった。
「あー、ありがと。
俺、どんぐらい寝てた?」
「直に夕暮れに成ります、我が君。
御身は万全には程遠く、我らに任せ今しばらく御休み下さい。」
片膝立てて右手を胸に当てた臣下の礼とか言うポーズで『ゴブフ』仮名じゃなくて『古代ゴブリン』が俺を見る。
こいつ、ぶん殴りてぇ! 見た目コスプレ●イジなのに動作がサマになってるのが一周回ってムカつく! だいたい、柄じゃねーし! 自分がハゲた負け組底辺のおっさんって理解してるてーの! マイロードとか気取ってんじゃねーよ! てーか、実は馬鹿にしてね? 馬鹿にしてんよコイツ! あーうん、駄目だ、悪い方にしか頭が回らん、とりあえずは。
「そのマイロードての、やめてくれ」
川の水で水分補給し、えぐ味と苦味と渋味に満ち溢れる『滋養強草』を川の水で洗ってから食らい、ゴブリン達が着けた焚き火のそばに座り、色々落ち着いた夕暮れの空の下、俺は白ゴブリン2号、3号を複数顕現する。
間を置いて活動し始めた2体の白ゴブリンとシブが桃園の誓いみたいな事をし始める。
ものクソどうでもイイので無視してダークエルフイビルプリーストの『古代』ゴブリン化を始める。
ダークエルフイビルプリーストの頭部には帽子があるので、その帽子を白ゴブリン6号の頭部に付け首を差し替えてスミ入れして、手に持ったメイスを青く塗り完成、すげぇ手抜きだな。
次にダークエルフウィッチの『古代』ゴブリン化にかかる。
ウィッチ、魔女、つまりは女性って事なのだが、ゴブリン頭にすると頭だけお伽噺の魔女になるんだよなぁ。
と、言いながらも、実行するけどさっ。
マントにかかる髪の毛が邪魔、カッターで削る作業の前に刃の交換。
ガタガタな木の皿や小さなバケツがある事から、それらはカッターを酷似して作られた品だと推測。
作ってくれたのは有難いけど、お陰で刃がボロボロだ。
刃を交換してマントに掛かる髪の毛を違和感が失くなるまで慎重に削り、うなじの部分も修正して魔女の帽子を切り取り残った頭部を切断。
切断した頭部は小さ過ぎて加工素材にすら出来ないのでプリーストの頭部と一緒に焚き火の中に投擲して始末。
白ゴブリン5号の頭部を使うのだが、ゴブリン頭とは言えど女性。
元のダークエルフウィッチよりはマシな顔に見える様に加工する。
長く尖った鼻を整えながら削る、目を二重風にマジックで書き込み、瞳も赤のマジックで塗り、尖った顎を削って丸く整える。
ヤスリの類いが無いのでかなり妥協するが両目を見開き、厚い唇の口を吠える様に開けたダークエルフウィッチの顔よりはマシ、カ●ジでもなく成ったし。
帽子を接着して頭を付け替えて完成。
「マスター、顕現しますか?」
『召還姫』が完成した2体を眺めながら尋ねるが俺は首を横に振って断る。
「もう夜だから顕現の閃光が目立つしな。
変なのに寄って来られてもアレだし、ね。
ところで、シブと『古代ゴブリン』は何処行った? 家出?」
「シブは周囲の探索に出ています。
イットゥーは警戒歩哨中です。
現在『ホワイトゴブリン』2体がマスターの警護に当たっております」
無表情なのに呆れた風に『召還姫』が答えてくれた。
まぁ、家がないのに家出って、我ながらバカな事を言ったと思うけどな。
「マスター、この2体に名称はあるのですか?」
『召還姫』が古代ゴブリンを指差す。
「んー、ウィッチが『ヨウ』プリーストは『カドゥ』あ、ウィッチのタクトを加工して目玉を先端に着けよう。
んで、古代3体でセブンアイ。
白ゴブは······剣と盾がシゴ、薙刀がシン、4体目は多分、シリロかシリンかな? 全部、白ゴブリンから抜き出した手抜きだけどな」
古代はデパートだし。
「他に名前の候補が有るなら教えて、本人に選ばせる。
最も、呼び難いのは無しだけど······」
おいおい、聞くだけ聞いておいて、川の方に行きやがったよ、あの娘。
『人と言う文字は人が支え合って出来ている』と言う言葉がある。
詳しくは知ら無いので間違ってるかもしれないが、ウソッパチな言葉だと俺は思う。
人と言う文字は人が組み合い押合いで相手を屈服させ様として出来ているのだと俺は思う。
「だかんよー助け合いだろ? オレの言ってん事、間違ってねーし。
つか、謝ってねーよなおっさん? 人として終わってね? おっさんさぁ。
ふつー、土下座して謝罪とバイショーだろまともなヤツならよ!! てめぇのキメぇ連れに追い回されてっぞコッチ!! なんとか言えやハゲ!! 聞いてんのか!!」
少なくとも目の前で喚き散らしてマウントを取ろうとするチャラ男はその類いだと思う。
シブ曰く、チャラ男を発見したので声をかけたら、チャラ男は悲鳴を上げて逃げ出したので追いかけ、イットゥーと協力して捕ったとの事。
全くこんな馬鹿、拾って来て。
ウチでは飼えないから捨ててきなさい!!
人と言う文字は、人が歩く姿から出来た文字です。
プロレスの様に正面から組み合い優劣を競う姿や支え合ってる姿で出来た文字ではありません。