閑話 かみさまがみてる
残酷描写と思われるシーンがありますので、あしからず。
今回、異世界に誘う神の目的が明らかに成ります。
「おーっと、ここで大本命の『大賢者になる予定』の川崎、5匹のスライムとリンクしたぁー。
川崎、のたうつ、地べたをのたうち回るーぅ。
苦しいか? 苦しいよなぁ川崎ーぃ」
嘲り嗤う実況の声が部屋に響く。
身体が沈み込む程に柔らかなソファーに身を任せた青年は大画面モニターに映し出される番組を眺める。
『異世界サバイバーズ』下位世界の娯楽作品のジャンルの一つ『異世界への転移、転生』をベースにして生存と死亡を予想し賭けを行う番組。
視聴者は全て、神とも呼べる存在。
主演者達は生前の頃から欠陥だらけの死者達。
ある者は社会の落伍者。
ある者は幼稚な人間性の落伍者。
ある者は人格者なれども夢に溺れる者。
されど外道の類い程には堕ちて無い中途半端な存在達。
廃品の再利用感覚なシミュレーションリアリティ番組とコピーを付けた、この『異世界サバイバーズ』はそれなりの人気番組だった。
「愚かですねぇ、全く別の感覚を持つ種とリンクするなど人間に出来る筈が無いでしょうに発狂モノですよ、ですが流石は川崎、今回の初日死亡予想の大本命は伊達では無いと見せてくれましたね」
解説者の声は嘲りを含み主演者を嗤っていた。
「今回は珍しく初日全滅の予想が少ない様ですが何故でしょう?」
「私の予想ですが『出来損ないのヒーロー』の竹井の存在が大きいですね。
竹井は心身共にしっかりしてますから。
ただあの顔で特撮番組のヒーローを志望する役者とは笑ってしまいますよ」
「愚かですねぇ、あのクレーター染みた顔で役者! しかも29歳でヒーロー志望! ノーメイクで怪人役でもやれば売れたのでは?」
「いやー、竹井は実生活でもヒーロー、正義の味方を実践してましたから悪役は無理ですよ」
「正義の味方! 愚か者の代名詞じゃないですか! 凄いですね竹井。
では『出来損ないのヒーロー』の竹井を注目しつつ他の参加者を見てみたいと思います」
川崎がスライムとのリンクを解除し顔をグシャグシャに汚して失禁までしていた場面が変わる。
「おっと、ここで予想を裏切る初死亡者が発生! 予想では川崎が初死亡と初日死亡の大本命でしたが、川崎より先に死亡者が出ました! 死亡者は『無の敵対者』の氏家だ! 氏家、死亡!」
「どうやら『ノーマルゴブリン』の群れに出くわした様ですね。
流石に20体を超える『ノーマルゴブリン』を相手では専用アイテムか特効異能でも無ければ初日では生き延びれませんよ。
しかも氏家は川崎や竹井の様な総合強化系で無く特化系の異能ですから直の事ですよ」
「えー、資料に寄りますと氏家は転移時に『無敵』を希望してますね。
どの様に無敵なのかハッキリしていない為『無の敵対者』と成った模様です」
「はい『無の敵対者』は存在感が増加する異能ですから友好的な存在ならば徒党を組易く成りますが『ノーマルゴブリン』等の敵対者にも気付かれ易く成ってしまいます。
氏家は愚か者らしく、異能を理解せずに襲いかかった様ですね」
「なるほど」
「あの手合いは暴力ばかりの頭の悪いチンピラが多いですから『ノーマルゴブリン』程度の知能しか無いのでしょう」
「運と頭の悪いヤツだったと」
「そうですが、元々事故の被害者ですから運の良し悪しは言えませんよ」
「確かに。
氏家を食事する場面は此処までにして他を見て見ましょう」
『ノーマルゴブリン』達がぐちゃぐちゃな死体の臓物を咀嚼する場面が切り替わった。
「おっと、どうやら『出来損ないのヒーロー』の竹井の様ですね」
「はい、あのクレーター顔は竹井です。
どうやら戦闘中の様ですが、相手は······
『オーク』ですね、なかなかの強敵ですよ」
「竹井のローキックが『オーク』にクリーンヒット!『オーク』はたまらずダウン! 竹井、何か叫んでいます? どうやら同行者の女性に逃亡を呼び掛けている模様です。
そうこうしてる間に『オーク』が低姿勢でタックル! しかし竹井、カウンターの膝蹴りを『オーク』の鼻面に叩き込む! ですが竹井、反動でよろけた!『オーク』は首を振りダメージを抜いているー」
「竹井の攻撃力が足りてませんね。
これはピンチでしょ」
解説者の声が歓喜の色を帯びる。
「竹井、ここでまさかの死亡か?! おっと竹井の同行者の女性『決壊結界』の朝丘、ここで逃亡! 竹井ここでポーーズ!! 右腕を突き上げ、そして斜めに振り下ろし叫んだー!!」
「竹井の異能発動ですよ! 異能発動!! 『出来損ないのヒーロー』と言えども『ヒーロー』ですから、危機的状態や救助活動等で発動するんですよ」
「竹井の異能発動!! 右足が魔力の輝きを放つ! 竹井、駆け出しそのまま跳び蹴りー!!『オーク』の顔面にクリーンヒット!!『オーク』の首があり得ない方向を向くぅー。
『オーク』が『オーク』が今、竹井に殺されました」
「竹井の初勝利ですね。
竹井がこの勝利でどの様に変化するか今から楽しみですよ」
「そうですね。
何かしらの精神性の変化は過去の主演者達にも有りましたし『決壊結界』の朝丘とどうなるのかも気に成りますね」
「はい、今後ストレスに負け暴君に成るのかどうか楽しみですよ」
『オーク』を仕止めた男が同行者の女性を追いかけて場面は変わる。
「ハゲ、ハゲです、ハゲが『ノーマルゴブリン』に襲われております。
ハゲ死亡か?」
「『召還姫』だと! このハゲはアイテム選択者ですよ、アイテム選択者!」
「アイテム選択者と言うと無能者じゃないですか!」
「ええ、異能を持たない代わりにチートアイテムを持つただの馬鹿ですよ。
しかも召還系アイテム! さしずめ召還した『ノーマルゴブリン』に襲われてるので······何だ、あのゴブリンは?」
「ゴブリン? 今ハゲを襲ってる『ノーマルゴブリン』ですか?」
「違う! もう1体の方だ。
ゴブリンは2体いる」
「『ノーマルゴブリン』2体ですか? 絶望的ですね」
「そうじゃない!! 『ノーマルゴブリン』と正体不明の白いゴブリンの2体だ、あのハゲは『ユニーク』を召還しやがったんだよ!!」
「はぁ『ユニーク』ですか?」
解説者が怒鳴るが実況者はピンと来ずに生返事を返した。
自室で番組を眺める青年は嗤う。
「見つけたぞ改変者」
今回の話を4行で表すと
マジカミゲス
ブサメンだから『出来損ない』
オークの首がボッキンぶらり
名前が出ないハゲは主人公
以上




