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吉岡綾乃は魔女をやめたい  作者: 椿 雅香
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手品部

 Ⅴ 手品部

 

白い天井が目の前に迫って、ベッドに寝ていることに気が付いた。身じろぎすると、白衣を着た女の人が側に来た。

「気が付いた?あなた、五時間目の終わりに、近くに雷が落ちたショックで失神したのよ。クラスの人が連れて来てくれたの」

「今は?」

「もうすぐ六時間目が終わるわ。良いのよ。今日は、生徒総会だから全校集会になってるの。終わったらクラスの子が迎えに来てくれるはずよ」

安心して、体中の力を抜いた。

しばらくして、バタバタと足音がして、今井恭子を先頭に、小林真美、長野貞子がドアを開けた。

「吉岡さん、大丈夫?突然倒れたから、びっくりしちゃった」

「だって、あんなに近くに落ちたんだもん。誰だって驚くわよね」

今井が心配そうに言い、小林が笑った。

「でも、あれって、避雷針に落ちたから被害はないんだって。心配しなくていいわよ」

長野は理論家だ。

ゆっくりと起きあがると、三人が私を支えてくれた。

四人で歩くと、あの魔法使い三人組を思い出した。同じ四人でも、雰囲気が全然違っている。私は共通だから、あの三人と、と言うべきか……。

「吉岡さん、さっき、三組の中島くんがあなたに手品部に入って欲しいって言ってた」

今井が思い出したように言った。

「いいなあ、手品部って部員の推薦がないと入部できないんだよ」

小林が心底羨ましそうに言う。

「そんなに入るのが難しいクラブなん?」

「まあね。静香さまが部長してるから、中島くんが、静香さまが消耗しないように気を遣ってるってのが、一般的な観測ね。中島くん、静香さまの守護者(ガーディアン)だから」

長野は、下世話なことにも詳しい。

「でも、どうして私なんか呼んでくれるんやろ?」

「しばらくお試し期間があるはずよ。今まで、それで入部できなかった子もいるの。

吉岡さんの場合、この前、『山』で一緒に遊んだから、とりあえずお試し期間どうぞって感じじゃない?」

今井が嬉しそうにウインクした。

「違うと思う。静香さまが吉岡さんに興味を持ってるみたいなの。これって珍しいことなのよ」

「貞子って、小学校の時からズッと中島くんや静香さまと一緒だもんね。中島くんに告って振られたって噂があるけど、本当なの?」

小林が遠慮会釈なく割って入った。

「悪かったわね。中島くんって静香さま一筋だけど、静香さまは中島くんのこと何とも思ってないみたいだから、何とかならないかなって頑張ってみたの!」

長野がやけくそになって言った。

「無理無理。例え、静香さまが相手にしなくっても、中島くんは静香さま一筋で忠誠を尽くすのよ。だって、守護者(ガーディアン)なんだもの」

小林の笑い声が廊下に響く。

 角を曲がると中島が立っていたので、私達は余りのバツの悪さに顔が赤らんだ。

 でも、中島は平然としたものだ。私達の話なんか全く聞いていなかったような顔で言ったのだ。

「吉岡さん、今井さんから聞いてくれたと思うけど、シズが望んでるんだ。手品部に入って欲しい」

「私、手品なんか興味ないんですが……ぶきっちょだし」

「そんなぁ、もったいない」

長野の小さな声がした。

「大丈夫。別にそんなに必死に手品の練習しなくても良いんだ。毎週木曜日に例会があるから、部室に来て欲しい。手品部に入れば、君もそうしょっちゅうめまいや失神しなくても良くなるはずだ」

それだけ言うと、クルリと向きを変えて行ってしまった。

今井が首を傾げて言った。

「どうして手品部に入ったら、めまいや失神しなくて済むんだろ?あれって、どういう意味だと思う?」

きっと魔法のクラスへの近道があって、あのクラスに行く都度経験するめまいや失神をしなくて済むようになるのだ。

魔法使いからの招待だった。ついに、魔法使いがこっちの世界でも接触して来たのだ。腹を括らなければ。


 

「達也く~ん。会いたいよ~。ここって、何かおかしいんや」

甘えながら、魔法の話はしちゃいけないんだと、自分に言い聞かせた。魔法憲章第三条だ。魔法の存在を魔法を使わない一般人の達也くんに知られてはならないのだ。

『しゅけん』は、掟破りで殺されかけた。私が掟破りをすれば、護ってくれる人は誰もいない。口を塞がれても、つまりは、殺されても文句も言えないのだ。

「綾乃。どうしたんや?えらい落ち込んでるやないか?」

「だって、手品部からオファーがあったんや」

「何や?それ?そんなクラブあるん?」

「うん。部員の三人までは知ってるんや。この前のお祭りの日に一緒に遊んだんやけど……」

「そんなヤツ等と遊んだお前が悪い」

「分かってる。でも、向こうが勝手に付いて来たんや。大体、連休に達也くんがこっちに来いひんかったから、こんなことになってしもたんや」

「風が吹けば桶屋が儲かるってか?この分じゃ、郵便ポストが赤いのも、電信柱が高いのも、みんな俺のせいにされてしまいそうや」

「だってぇ」

「とりあえず、しばらく付き合って、後で、やっぱり無理やって辞めたらいい」

「それができる相手やないんや」

私は頭を抱えた。

ふと、達也くんの感じが変わったように感じた。気のせいか、頭の中で達也くんの声が響くのだ。耳に聞こえるんじゃなく、頭の中で感じるのだ。そう、『しゅけん』の声のように。

「達也くん、何か冷たい。誰か別の子と付き合い始めたん?」

電話の向こうで、達也くんが動揺する気配がした。達也くんは嘘が下手だ。真正面から訊かれると、どぎまぎするのだ。でも、この臨場感はいつもと違っている。頭の中で耳で聞く声と違う声を感じながら追求した。

「連休かて、クラブが忙しい言うて来てくれんかったし」

去る者日々に疎しだ。誰か別の女の子と付き合いだしたのだろうか。

「だって、お前、連休って本当にクラブ忙しかったんや(でも、五日だけ休みやったから、日帰りで行こうと思えば行けたんやけど……)」

「一日ぐらい休みがあって、誰か別の人とデートしたんやない?」

達也くんは動揺が激しくなると咳き込む癖がある。これで咳き込むなら、嘘をついている証拠だ。

「そんな、ゴホッ、ゴホッ、ことない。俺は、ゴホッ、いつだって、ゴホッ、綾乃一筋や(何で分かるんや?ほんまは、美加とデートしたんや。でも、綾乃には内緒や)」

 瞬、目の前が真っ白になった。耳を疑うという言葉があるが、耳から入った声じゃく、頭に直接感じた台詞だ。そして、何故か、それが真実だと確信した。

こんなところへ来たせいだ。

オトンのせいだ。オトンの転勤のせいだ。

オカンのせいだ。オカンが、私を見捨てて、オトンと海外へ行ってしまったせいだ。そのせいで、達也くんが心変わりしてしまったのだ。 

 


木曜日の放課後、手品部の部室へ出掛けた。ドアを開けると、真正面に静香が座っている。後手で戸を閉めると、静香が表情も変えずに言った。

「welcome to magic club.」

なるほど、手品も魔法も英語で言うとマジックだ。ここは魔法使いのクラブだったのだ。

私をこの地に呼び寄せたものは、私がこのクラブに入ることを望んでいるらしい。でも、それって、従わなくちゃならないんだろうか。

魔法使いの一族は、一族を絶滅から救うため、子供達を一堂に集め、魔法のレベルアップと魔法使い同士の結婚を推奨している。

私が『しゅけん』とナミさんの子孫だってことは、魔法使いの末裔の一人であり、同様なことが求められるのだろう。

って、そんなの理不尽や。魔法使いの末裔だってだけで、好きな学校へ通うことも、好きな人と恋することも結婚することも許されないなんて。私の人権はどうなるん?私は、魔法使いの種の保存のために生まれて来たんじゃない。

静香は、魔法使い社会が、自分を種の保存のための存在だと見なすことに、不満を覚えないのだろうか。

私には霊力は見えないし、魔法も使えない。魔法の勉強も始めたばかりだ。魔法使いの末裔かもしれないが、能力という意味じゃ血が薄いのだろう。そもそも、『しゅけん』とナミさんの子孫ってことは、魔法使いと一般人の混血っていうか、純血種じゃないのだ。

でも、この人は、子供の時から魔法について学び、魔法使いが種の保存のため苦闘した『大猿』の一族と『しゅけん』の一族の戦いを学んだはずだ。その過程で、自分に求められる役割を教え込まれて来たのだろう。多分、中島や小西も。

「彼女、来たんだ」

聞いたことのある声がして、小西が顔を覗かせた。

「俺も部員なんだ」

ウインクしながら言う。

軽薄なヤツ。

ちょっと待て。魔法使いが魔法使いを恋愛や結婚の対象とするってことは、こいつも魔法使いの男だ。あわよくばって、狙ってるんだろうか。

そう思ったら、背筋が寒くなった。

「綾乃ちゃん。人を色魔を見るような目で見ないの。別にお前に目ぇ付けなくても、魔法使いの女の子はいっぱいいるんだ」

「そうなん?」

疑わしそうに尋ねると、静香が頷いた。

「『大猿』と『しゅけん』の戦いを見た後では、魔法使いの全てが色魔に見えても仕方がないかもしれないわね。

でも、気に入った相手と結婚するんだから、一般人の結婚と変わらないのよ。一般人だって、種の保存を目的として結婚するでしょ?むしろ、自分の血筋の秘密を妻や夫に言えないという悩みがないだけ、魔法使い同士の結婚の方が気楽かも知れないわ」

「ウチのお母さんは、お父さんに言うてないわけ?」

何となく、魔法使いの家系はオカンの方だと思っていたのだが、静香から驚くべき情報がもたらされた。

「こっちのデータじゃ、あなたの家はご両親とも魔法使いの家系だってことになってるわ」

「でも、二人とも魔法使えへん。ってことは、劣性遺伝だったってことなん?それで、私に魔法使いの能力が出たってわけ?でも、私かて、まだ魔法なんか使ったことないし、私も劣性かもしれへん」

魔法使いの子供は、霊力が現れなければ、一般人として生活するのだろう。そう、オカンやオトンのように。オカンやオトンは、遺伝子レベルでは魔法使いのDNAを持っていても、その能力が発現しなかったのだ。

待てよ。ということは、オカンもオトンも、私がこの年にこの地に来ることを知っていたってことになる。海外赴任を決めたのは会社だ。でも、魔法使いのやることだ。きっと、あの転勤も魔法を使ったのだ。そうに違いない。

ジグゾーパズルのピースが、カチッとハマった。今まで思い出そうとして思い出せなかったのは、これだ。

オトンの転勤が決まってから、両親の態度がいつもと違っていた。

魔法使い社会が私をここに呼び寄せ、両親はそれを知っていたのだ。だから、大阪で一人暮らししたいと言っても却下されたのだ。

知っていながら、口をつぐんで送り出した両親に腹が立った。

ウチの両親は魔法を使えないから、魔法使い社会から私を隠すことなんかできない。だけど、それにしたって、もっとジタバタしてくれても良かったのに。親というのは、子供のためにありとあらゆる手を使うものだ。青柏祭のナミさんの父親だって、娘を守るために山王神社に忍び込んで、越後へ『しゅけん』を捜しに行ったのに。

それなのに、ウチの両親は、二年の辛抱だから、と送り出したのだ。

騙された。こっちへ来れば、魔法使い社会へ取り込まれることが分かっていたのに送り出したのだ。魔法使い社会じゃ恋愛や結婚の対象が魔法使いに限定されるって知ってたくせに、私には達也くんがいるって知ってたくせに、知らん顔して送り出したのだ。

子供を騙す親がいるか!

クソッ、グレてやる!

親の言うことなんか、聞くんじゃなかった。

どうして来てしまったんだろう。例え一人ぼっちでも、大阪に住むことにすれば良かったのだ。私だって、魔法なんか使えないのに。


「あの二年一組は最も霊力の高い生徒のクラスだから、あなたがあのクラスに転入したってことは、あなたの霊力が魔法使いとして水準行ってるってことになるの」

静香が当たり前のように説明して、小西がコクコク頷いた。

何がなんだか分からないながらも、私は手品部に入部し、毎週木曜日に魔法のクラスで勉強することになってしまった。


ああ、もうっ、神様はどこに行ったんやろ。どっかで一休みしてるんやろか。早いとこ休憩時間を切り上げて、助けに来て!

両親や神様を散々っぱら呪っても、事態は変わらない。

そう、やり直すことはできないのだ。魔法使い社会に足を踏み入れた以上、逃げることはできない。どうしようもないのだ。

もう、やけくそだ。やりたいことをやりたいようにやって、納得することだけにしか付き合わないことにしよう。と覚悟を決めた。

そのためには、情報収集しないと。

腹を括って尋ねた。

「あっちの学校のスカーフやボタンのことやけど……」

「何?」

静香が、目を上げた。何かの書類に目を通していたのだ。

「みんな虹色やけど、よく見ると赤が強かったり、オレンジが強かったり、紫の強い子もいたみたいやった。あれって何か意味があるん?」

「ピンポン。よく気が付きました。大ありってこと。綾乃ちゃん、良い線行ってる」

小西がおちゃらけたので、ジロリと睨むと肩をすくめた。

静香が事務的な声で説明し始めた。こうやって聞くとなかなかきれいな声で、松村の声ほどじゃないけど、人の心を掴む魅力がある。

「虹は七色だから、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫が配色されているのは知ってるでしょ?

魔法使いによっていろんな能力のパターンがあってね、能力の色があのスカーフやボタンに現れるようになっているの。

赤が強いのは火の魔法の使い手。橙は太陽と風の魔法の使い手。つまり、雨と雷以外のお天気を操るの。黄は雷の魔法の使い手。これが特別な扱いになってるのは、電気の魔法も使うからなの。『しゅけん』を倒した男はこれね。緑は木や草の魔法の使い手。魔法薬や癒しの魔法もこの人達が得意としているわ。青は、水の魔法の使い手。龍を操ったりするのはここに入るわ。だから、雨もこの人達の担当ってわけ。藍は人の心を読む、いわゆる読心術の使い手。人の心を読むってことは、逆に人の心を操ったりもできるわ。紫は時空を越えて旅をする、いわゆるタイムトラベルとテレポテーションね。体が時間や空間を越えるってことは意識だけ飛ばすこともできるわけで、この人達は予知能力もある場合が多いの。

それでね、魔法使いの個体によって、初歩的な魔法だけできる者――この人達の色は、ぼんやりとした白ね――どれか一つの色が顕著な者――薄く虹色なんだけど、一色だけ顕著なの。いくつかの色が顕著な者――薄い虹色に二色以上の色がはっきりしてるわ。そうして、いわゆるパーフェクト、つまり、どの色も均等にはっきりしていて全ての能力を有する者――に分けることができるの。ついでに言うと、トオル――小西くんは、小西 透って言うの――は、寒色系で青の水、藍の読心術、紫の時空旅行の魔法を使うの。カオルは、暖色系つまり、赤の火、橙の太陽、黄の雷を使うわ。

使える魔法の色の数が多いほど、全体のパワーが強いの。一つの色の魔法のパワーを一とすると、使える色の数でその能力が倍増して、つまり、二つの魔法が使える人はそれぞれのパワーを併せて一つの魔法に集中できるから二倍のパワーを使えるし、三つの人は三倍のパワーを、七つのパーフェクトは七倍のパワーを使えるって理屈になるわ。

私は若い世代で唯一のパーフェクトだと言われていたんだけど……どうやら、唯一じゃなくなったみたい」

静香が、私を見つめた。

ドアが開いて中島が入って来た。今の説明を聞いていたのだろう。固い声で言った。

「吉岡さん、君はどう見てもパーフェクトなんだ。

信じられないよ。ご両親に魔法を使う能力が現れなかったのに、その子供がパーフェクトだなんて」

「長老のばあさん達が大喜びで研究するだろうな。だって、綾乃ちゃんみたいなヤツが大勢現れれば、能力ある子孫が絶えるって心配しなくっていいんだぜ。待ってりゃ、いつかDNAが発動して、魔法を使う能力のある個体が出現するんだ」

小西が面白そうに言った。

「でも、残念ながら、私かて何の魔法も使えへん」

「綾乃ちゃん。お前、魔法使ってる。この前、電話で彼氏の心を読んだだろ?」

小西がニヤリと笑った。

何で、こいつが、そんなこと、知って、るんだ?

「悪い。今、読ませてもらった。『魔法も使えへん』って言いながら、彼氏の心を読んだこと考えただろ?」

 He smiled a cynical smile.(彼は、皮肉な笑いを浮かべた)という英語の構文を思い出した。こいつがいつも皮肉な笑いを浮かべているのは、周りの人の心を読むからだ。建前と本音を使い分けているつもりの、薄汚いやり方が鼻につくのだろう。

静香もそうなのだろうか?でも、静香は、いつも茫洋としていて、現世じゃなくて別の世界を見ているような雰囲気がある。

「シズは、人の心を読まない。読みたくないんだ」

中島が私の心を見透かしたように言った。

中島は心を読めないはずだ。でも、私の心を読んだ。顔に出てたのだろうか。

静香が小さな声で言った。

「大丈夫。私は他人の心を読まないことにしてるの。トオルは強いから人の心を読んでも気丈に対応できるけど、私にそんな甲斐性はないから。だから、フォーカス掛けて、人の心を覗き込まないようにしてるの」

「小さい頃から、男達がシズを見ちゃ淫らな妄想にふけるの見たら、フォーカス掛けなきゃやってけないさ。シズは魔法使いの男達にとっちゃ究極の女、つまりメスなんだ」

小西が投げやりな調子で言った。

「だから、カオルが護って、俺がフォーカスの手伝いしてる」

「手伝いって?」

「シズがフォーカス掛けやすいように、俺が、軽く魔法を掛けてやってる。じゃないと、シズが疲れる」

小西が肩をすくめた。

周りの男達が、静香を究極のメスとして見る。信じられないが、ありそうな話だと思った。

魔法使いは、種の保存のために優秀な個体との結合を望む。だったら、若い世代では、静香はパーフェクト、つまり最優秀のメスの個体だ。男達は目の色を変えて近づくのだろう。しかも、それは静香が幼い時から始まっていたのだ。

生まれながらの巫女。あれはそういう意味だったのだ。

魔法使いの男達の標的にされている。彼等は、欲望に満ちた目で静香を見る。

小西じゃないが、やってられないだろう。周りの男達が妄想にふけると、その妄想はそのまま静香の中へ流れて来るのだ。十八歳未満禁止。ファーカスどころか、シャットダウンすべきだ。

「気が付いた?これからは、君もその対象だってこと」

中島に言われて、血の気が引いた。

私は静香みたいな美人じゃない。でも、魔法使い達は容姿じゃなく魔法の能力に惹かれるという。だったら、私もこれから十八歳未満禁止の妄想に付き合わされることになるんだろうか。しかも、主役に抜擢されて。向こうが勝手に作るAVアダルト・ビデオの主人公になって、しょっちゅう相手を替えて蹂躙されるのだ。

とんでもない話だ。誰かがそんな妄想にふけったら、絶対半殺しにしてやろう。と、固く心に誓った。

「綾乃ちゃんの反応って、シズと全然違う。むっちゃ面白い」

小西が面白がった。

「悪かったね。今んとこ、まだ、読めへんから黙ってるけど、万一、あんたがそういう妄想にふけったら、覚悟しとき。ギタギタにしたる!」

 






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