168. ヴィルノアという人⑩
あと一話で完結予定です。
最後までお付き合いくださると嬉しいです。
シアといると僕の世界は途端に色づく。一人だと無味乾燥な世界でも、シアと二人になると目まぐるしく様々なことが僕の周りで起こっていく。不思議とそれは、嫌ではない。ものぐさな僕ではあるが、シアがいるだけでそれが不愉快ではない。僕一人だと極端に狭い世界が、シアがいるだけでどこまでも広く広がっていくんだ。
バルトが一人の女性に惚れた。
僕はシア以外に興味がない。人に対しても概ねそうだ。だからバルトはそんな僕を補ってくれる貴重な存在だ。バルトは僕を常識の範疇に存在させてくれる。普段、僕のストッパー的役目を負ってくれているが、実際は数少ない僕の友人であり、理解者だ。
比較的クールなバルトも、マリア嬢が関わると人が変わるように思う。マリア嬢の良い所は延々と、彼女と付き合う前から散々聞かされた。それこそ延々とだ。マリア嬢のことなら何でも知っていそうなくらい彼女に関する情報を覚えてしまった。興味は皆無なのに・・・。
まぁ、シアが僕のものになる前は、いろいろ気遣ってくれたのはバルトだったから、僕もバルトの恋には協力はしたい気がする。だが、何をしたらいいか分からない。対人スキルの低さは自覚するところだ。そもそも、僕が何かをできるわけない。僕の世界はシアでいっぱいなんだから。
その点シアはすごい。様々な方面で友達を作っては、様々な問題に巻き込まれ自身の問題に巻き込んでいる。そして、何となくみんなが幸せになる形で解決してしまうんだ。バルトのことにしてもそうだ。マリア嬢のコンプレックスをクララ嬢とベンジャミン殿で見事に和らげ、エリザベス王女とアゼリア王女でその原因を潰し、シアの説得でマリア嬢の本音を引き出し・・・と大活躍だ。
そして、一方ではバルトの背を押していた。もし振られても諦めるな、と。バルトは少なくない時間、僕の側で僕のシアへの執着、諦めの悪い僕を見てきたのに・・・なぜか、シアの言葉はバルトの心の琴線に触れたようだった。
僕のシアへの執着は決して褒められたものではない。でも仕方がないんだ。シアと初めて会ったあの日まで、白黒のような僕の世界が可憐な花々に包まれたんだ。シアが兄上の婚約者だって聞かされてもそれは変わらなかった。兄の婚約者が好きで諦められないなんて・・・どんな修羅場なんだ。兄上達が優しかったから、シアが鈍感だったから、シルビアが優しかったから、僕は存在し続けられただけで、そうでなかったら隣国に長期留学とかの体で放り出されてたに違いない。シアを忘れるまで帰ってくるな、とでも言われて、ね。僕は環境に恵まれている。それは間違いない。
バルトがどこまでマリア嬢に心酔しているかは分からないが、僕程ではないのなら、他の女性に目を向けてもいいと思う。僕の影を追うのは勧めない。永遠に苦しさがつきまとうんだから。もし、マリア嬢が振り向かないのだったら、僕は僕の話はしようと思っていた。適当な所で、他の子を見る努力をしなよって。自分ができなかったくせに無責任なんだけど、バルトに僕と同じ苦しみは味わってほしくないと思った。杞憂で終わって良かった。
シアが卒業するまであと二年。僕が卒業するまで、さらに二年。基本王族が結婚するのは学園が卒業してからだ。つまり、最短で四年後でなければ結婚できないんだ。これ、何とかできないものかな?僕のやる気はシアに起因してるんだ。学園をシアと一緒に卒業する手段はないか、兄上に相談してみよう。今、制度がないんだったら、新たに作れないか相談してみよう。シアが卒業してしまったら、僕は学園に来る理由がなくなるんだ。
結婚すれば昼間は会えなくても家に帰ればシアがいる。毎日シアがいる。それはこの世の最上の幸せだろう。シアがいれば毎日頑張れる。シアが笑顔になるならどんな仕事でも頑張れる。そこは自信がある。そのこと訴えたら、シアとの結婚が早まらないかな。
僕は式には興味ないけど、きっとシアは違う。ああ、シアのウエディングドレス姿は見たいかな。きっと天使のようになるんだと思う。うん、それは見たいね。あっ、でも式をあげるってことはかわいいシアの姿を他の人たちの前に出さなければならないんだ。うーん、見せたくないな。僕だけが知っていればいいんだけど、シアのかわいい姿は、ね。
事実婚という形で先に結婚してしまって、式は後でってできないかな。そう、シアが卒業と同時に僕と同居。これすごく良くないか。うん、この方向も考えてみよう。
シアとの結婚問題は、今後の重要課題として取り掛かっていこう。
そうそう素敵なプロポーズもね。
多分僕のほとんどがシアで構成されていると思う。シアは僕で構成されていない。僕のことを好きではいてくれているけど、それでいい。シアに対して僕は病的だとすら思う。
そんな僕を好いてくれるシア。
そんな僕を受け入れてくれるシア。
そんな僕の頭を撫でてくれるシア。
そんな僕に口付けを落としてくれるシア。
うん、僕の世界はシアでできてる。
今日も学園で会ったのに、もう会いたい。
シアと出会えてよかったな。
明日もシアに感謝と思いを込めて好きって言おう。大好きって言おう。
シアの『うん知ってる』が早く聞きたいな。




