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1.プロローグ
「僕は一人の女性としてシアが好き。」
いつもの柔らかい表情ではなく、固く真剣な顔で彼はハッキリと言った。その声はこわばっていたものの迷いは感じられなかった。
驚きを隠せず、見つめた彼の濃紺の瞳は熱を帯びていた。彼の顔は少しだけ大人びて見えた。少し前まで見下ろしていたはずの年下のかわいい少年は、今では頭一つ分背が高くなっている。見上げる形で合わせた視線を外せないまま、何と言っていいのか頭の中は混乱の嵐であった。
ここは学園の奥庭。教師の控室と教室に挟まれた奥庭は一日を通じて人通りは少ない。木々が生い茂り、風が穏やかに吹く度に木漏れ日がキラキラと揺れていた。昼休みだが二人以外誰もいない。たまに吹く風が葉を揺らし、ざっざっと音を鳴らした。
「だから」
何の言葉も発せずに固まるフェリシアを優しくふわりと抱きしめて彼は言った。
「だから僕に落ちて」
そして、回した腕にぎゅっと力を込めた。




