第十二章 王都攻/抗/交/鋼(こう)戦 ~ひまり!? どうして工業系免状コンプリートしてるんッスか!?~
二日後。
かつて訪れたアイアンマウンテン。
同、『イルズ刑務所』。
執務室では、刑務官たちが椅子にかけながら時計を見やり苛立ちを言葉にする。
「遅いな、オルドたち」
そうつぶやく刑務官に、所長『ギーノ』が答える。
「まあどこかでキャンプでもしているんだろう。王都が狙われたとあれば各州からゴーレム鎮圧のための部隊が差し向けられただろうし、途中で職質されたらたまらんしな」
「だとしてもなあ。もう昼だぞ? 到着予定は今朝だろう」
そんな彼らに、部屋の片隅のデスクにかける男が言う。
「もしそうなった時のために、オルドたちの名簿や給料帳簿などを焼く準備をしておけ。何かあった時に私たちは知らぬ存ぜぬを通すのだ」
「かしこまりました。『アルマ閣下』」
刑務官が不在の職員の勤務登録ファイルやネームプレートなどを取ろうとした時、イルズ刑務所のベルが鳴った。
「やっと帰って来たか。どうした、鍵でもなくしたか?」
そう言って刑務官がドアを開けると、そこには四人の男たちが縄で縛られて伏せており、その向こうには八人の冒険者がずらりと並んでいた。
「ここッスね、イルズ刑務所って言うのは。この男、代表のオルドから全て話は聞いたッスよ」
そのうちのひとり、探偵スタイルの少女アレットが言った。
「なっ! どういうこったよこりゃ!?」
「この収容所は犯罪者を更生させるためにゴーレム製造に強制従事させていると。そこまではまあいいんッスが、その従事先が実はホムンクルス量産の研究所で、看守、囚人、みんな一定の血液を採取させられて、それをもとにホムンクルスを製造していたと。そして生まれたばかりの彼らに武器を渡し、破壊を楽しむように教育させたとも」
「なっ! 全部しゃべりやがったのか、貴様オルド!」
拷問のために顔面を殴られた男オルドは、うめくばかりで何も答えない。だがそれは肯定を示していた。
「さて、申し開きはあるッスか? なければレアガルド王国領主ライノック・レアガルドの名において、王国議会保安庁諮問探偵アレット・ドイルが家宅捜索を開始するッス。一同、表に出てもらえるッスかね!?」
「くっそ……! ああ出てやるさ。出ろ! お前ら掛かれ! こいつらひとり残らず生きて返すな!」
そう指揮するギーノだが、彼は早々にアレットの銃撃に倒れた。
「お前はまだ死んでいないから安心するッス」
その後わらわらと現れた刑務官は伸縮警棒やピストルなどを手に現れる。空たちはひるむことなくそれぞれの武器を構えたのだが、フリューゲルが前に出て言う。
「あなたたちなんて、猟犬ほどの怖さもないわ! 『アークルバレット』!」
何とフリューゲルは、拳銃も使わずアークルバレットを、それも一度に雨のように多数のアークルの弾丸を刑務官たちに見舞ってしまったのである。
「すごい……」
唖然となる空たちだが、小声でフリューゲルはつぶやく。
「範囲攻撃ですからねー、そこに味方がいたら使えないのが使い勝手の悪いところなんですよねー」
全員片付いたところで、ギーノにアレットは尋ねる。
「公的機関が犯罪に手を染める、そしてそれに錬金術が関わっている。どう考えてもカリオストロ協会にいいようにされていると見るべきッス。さあ吐け。吐いちまえ。お前らにこんな真似をさせたのはどこのどいつッスか!?」
「……あぁ。カリオストロ協会の幹部、アルマって男だ。一度は囚人たちの更生に熱意を持って働いた俺たちだ。悪事に手を染めた以上はただであいつを逃がすわけにはいかない。『第三区画』へ行け。そこに『株式会社スラヴァーゴーレム』に続く囚人更生用のトンネルがある。奴はそこから逃げるか、研究成果を燃やして隠滅、雲隠れする気だ」
「ご協力感謝するッス。勇者卿!」
アレットに呼ばれ、アルスは強くうなずいた。
「ああ。勇者パーティー、突入だ!」
空たちやアルスたち合わせて八人は、イルズ刑務所に突入する。
立体的に地下へと続く巨大空間、受刑者の収容所。現在受刑者たちはゴーレムやホムンクルスの製造に従事させられているのか独房には誰もいない。そして区画をふたつ過ぎた先の第三区画、黄と黒のラインが施された大きな物資運搬用の大扉があり、区画の中央から扉の向こうまでトロッコ用のレールが伸びている。
「走っていくのは骨ッスが、ちょうど予備のトロッコが残されているッス。みんな、運ぶのを手伝ってほしいッス!」
「クレーンの免状を持つ拙者が指揮を執ろう」
「ゴーレムと言いクレーンと言い、ひまりって何者ッスか……?」
「ヤマトも大陸に近づいてきた、と言うことでござるよ。あと、玉掛けも」
「『三種の神器』はい揃ったー!」




