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第六章 踊銃使いの錬金術師 ~母は娘を案ずるものでござるな。~

 これまで町長がルペシッサ錬金術協会から求められてきた要求と、クラヴィア激闘後の顛末は、次の通りとなる。

 そもそもルペシッサ錬金術組合とは、クラヴィア店内で町長に詰め寄りアレットの杖の一撃に倒れた男『ヨハネス・デ・ルペシッサ』を組合長とし、錬金術を商売とする会社のような組織。最後にピエリーナに右耳を撃たれた男は、カリオストロ協会の幹部のひとり『コードネーム:ヴォーバン』だと言う。ルペシッサ錬金術組合が他の会社と違う大きな点は、卸売先がそれこそギャングなどの悪徳集団であり、生産している物のほとんどが武器ないし武器に転用できる日用品である。

 ルペシッサ錬金術組合が発足したのは、二年以上前。アルケモートの東の端に小さな工房を構え、最初は良心的な錬金術事業者であると思われていた。だが交渉の席で無茶な取引を持ち掛け、または小さなごまかしによる不正を働かせ、それをネタに強請りや更なる無理な要求を突き付けるなどして力をつけてきた。

 これには何度か保安庁やアルミス州営『錬金術商工会』も注意しに来たが、とは言え取引相手も架空の会社名を使い立場を偽っていたこともあり表立って悪事を働いているという証拠は出ず、営業許可状を取り上げることもできない。そしていつの間にか、ルペシッサ錬金術組合はアルケモートの四分の一ほどの錬金術関係の取引相手、工房、事業所を手中に収めるようになり、保安庁アルケモート分署や冒険者ギルドにもワイロを強引に握らせるようになる。その頃から徐々に「カリオストロ」の名が聞かれるようになった。クラヴィアの店長シュピールマンもまた、同じ手口で自店を取引の場に使わされるようになる。

 空たちがルペシッサ錬金術組合の幹部や護衛、及びカリオストロ協会が差し向けた銃士隊を殲滅した後は、ロッソがセントラルから連れてきた保安庁アルミスセントラル分署の保安官と護衛の冒険者たちが錬金術協会の事務所とクラヴィアを徹底捜索、各所から不正な取引の証拠が見つかった。こうしてルペシッサ錬金術組合は営業許可状を剥奪され、関係する組織も芋づる式に武力制圧、カリオストロ協会の一部の関係者を逮捕するに至る。

 だがヴォーバンが「吾輩は末端」と言ったように、逮捕できたカリオストロ協会の会員もまた「上の層の人間に関しては事務所すら教えてもらっていない」と証言。ルペシッサ錬金術組合のように使える者は使いつぶし、しっぽをつかまれてもトカゲのようにいつでも切り捨てられる、そのような体制の組織のようだ。

 さて残存組織の武力制圧に関しては、空、アレット、ひまりはもちろんだが、冒険者としてのライセンスを持っていないピエリーナまでもが参戦した。さすがにアーラ・ビアンコ社長にして彼女の父のジャコモは妻である『カテリーナ・マルゲリータ』と共に大反対したが、「こういう時のために師匠にガン=カタを習っていたのです!」と反対を押し切った。条件として師匠ジェフリーを同行させることでしぶしぶ折れた。

 駆け付けた冒険者の中には、かつて空たちに蒸気駆動車を贈った勇者アルス・ライトアームズのパーティーメンバーもいた(しかもこの際の町長の態度から、空たちはアルスが『第九代ライトアームズ伯爵/通称:勇者卿』という貴族であることを知り、驚愕、唖然となった)。アルスは「この町の汚職が撲滅されるまで、この町のために尽力しよう」と冒険者ギルドの『暫定ギルド長』に就任。空に決闘を挑んだゴールドメイルは軍の人脈を頼り、そこから保安庁アルケモート分署の新署員を集めてくれた。

「ありがとうございます、アルスさん、ゴールドメイルさん。……アルス伯爵とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

「今更だ、アルスで構わないよ。こちらこそ今回のきみたちの活躍には本当に驚かされたし、この町に平和をもたらしてくれたことを感謝する」

「俺も元軍人としてできることをせねばならんからな」

 ところでアルスパーティーにはもうふたり仲間がいる。

「紹介しよう。精霊族(エルフ)シュッツバルト群の魔法使いフリューゲル、魔族(エヴィル)フォギースプリング群の双剣士ジョン・ナカハマだ」

 空たちはパーティーメンバーとあいさつと握手を交わす。フリューゲルは絹のような白髪にガーネットのような赤い目とふさふさのとんがり耳と尾を持つ少女で、空の第一印象は「ウサギっ娘?」だった。ジョンはエヴィルでありながらメリクス共和国に帰化したヤマト人を先祖に持つため、浅黒い肌に鎧のような筋肉にヤマト人の雰囲気のある目つきをしている。そして武装も剣と言うよりはヤマト刀に近い重量のある湾刀である。

「では、わたしたちは次のジグラスに向けて出発しようと思います。思い出深いこの町を、どうかよろしくお願いします」

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