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第二十六章 冒険再開! ~へぇ、天然の砦かぁ。って、師匠は知ってたの?~

 翌日。

 北に向かう車の中。

 フォレストは後部座席でずっと鼻血を流し続けていた。

 空は車のハンドルを握りながらも、フォレストを気にかけ続ける。

「……殿下? 今からでも引き返してもいいんですよ? わたしたちはあなたに付き従っているわけですし、リーダーが不調では視察にも響きます」

「いっ、いえ、大丈夫です、空師匠。帰っちゃったら時間の無駄になりますし、休むくらいなら近くの村に泊めさせてもらいましょう。立ち寄った村を見て回るだけでも視察になるでしょうし」

 現在、ピエリーナはサンクティス工務店で廃材建材の錬成をカルパッチョから教わっている。戦力がひとり減った分は冒険者ギルドで護衛を雇っており、護衛は空とは別の蒸気駆動車でついてきている。

 なお、冒険者ギルドで「魔導ガトリングガンくらい積んどいたほうがよくね?」と指摘を受け、「そう言えばアルミス州マグの町で暴徒に襲われた時もそんな話をしていましたね」と空は思い出し、とりあえずレンタルして荷台に装備した。

「まあ、無理はしないでくださいね。今日は何か血になるような料理を作りましょうか。動物を狩り、鉄鍋で鍋料理でも作りましょう」

 『昨晩のありさま』を知っているリューンだけが深くため息をついた。

「しかしこうしていると、領地を頂く前にしていた旅を思い出しますね。メンバーは違いますが、四人で席にかけて町を方々回って、旅先を観光して美味しいものを食べて。まあ食事にありつけない村もありましたが、今、その時に戻ったような気分で楽しいです。ヴィントやフォレスト殿下にも、そう言う旅の楽しさを味わっていただければと思います。あと一時間走ったら昼食にしましょう」

 そして冒険者たちを交え、空はアレットと旅を始めたあたりから自分の旅物語を楽しそうに聞かせた。美食と美景を追い求める中で盗賊や暴徒と戦うこともあるなど、決して楽しいことばかりではなかった空の旅に、一同は「よくやったぜ!」「すげぇハラハラする旅だな!」「ヤマト、常軌逸してやがる!」と盛り上がった。


 昼食後、さらに走り。

 空たちが辿りついたのは、『ムスペルハイムル村』。

 空が地図を見ながら説明する。

「ムスペルハイムル村は『フリズレイクル湖』の下流に開拓された村です。カルパッチョ店長の話によれば、大昔の戦で戦火を逃れた人たちが身を寄せ合って開拓した村だそうで、『外からの侵入は難しく、中からの避難はしやすく』と言う構造をしているようです。ヤマトの稲葉山城に似ていますね」

 ムスペルハイムル村と稲葉山城の大きな違いは、もちろん大きな砦を作ることができないムスペルハイムル村は森そのものが入り組んだ道にしていること。迷いようのない一本道だが何度か曲がりくねっており、盗賊・侵略者対策としては稲葉山城と通じている。

 わざと整備のなされていない細い林道を抜ければ、開けた土地に出る。家の軒数は少なく村と言うより集落に近い規模だが、畑は青々としており、様々な野菜が育てられている。村民は軍事バギーが来たということでしばらく警戒していたが、敵意はないと知れば農作業に戻る。

 空は村長邸の前に車を止めた。村長邸は、空たちが住むフォーマメント州領主邸に近い構造をしているようだが半分ほどの大きさで、丸太を積んで作られた『ログハウス』である。何とも素敵ではないかと、空たちは感動すら覚えた。

「では心してかかりますよ、殿下!」

「はい、空師匠!」

「モヤシ王子、師匠、今から侵略にでも行くのかよ!?」

 ノックののちメイドに出迎えられた空たちは、執務室まで招かれて村長の『アスト』に謁見した。アストは銅色の髪の若い美女であった(エルフのようなので、実年齢はサーパスを基準に思わないほうが良い)。

「初めまして、レアガルドからお越しの皆さん。村長をしておりますアストです」

「初めまして。一団の代表のフォレスト・レアガルドと言います。心ばかりのものですが、こちらを納めください。素敵なお召し物にお似合いかと」

 フォレストがアストに手渡したのは、ジュエリーケースに納められたダイヤモンドの指輪にハンドクリームであった。

「うそ!? 手土産程度にこんな高価なものを!?」

「そちらの指輪に用いられているのは『偽銀(ぎぎん)ステンレス合金』で、宝石は『人工ダイヤモンド』で、ここにはいない僕の連れである錬金術師にこさえさえました。さすがに鑑定士が見たら本物の銀とダイヤモンドではないことは分かるでしょうが、多くの方にお求めやすい装飾品として販売することを検討しています。今回はあいさつのための贈り物ですので、城下町の宝石店の匠に仕上げていただきました」

 本物の銀とダイヤではなくとも、そもそも偽銀ステンレス合金と人工ダイヤモンドの錬成そのものが大変であり、品質次第では宝飾品として鑑定書・製品保証書をつけられるレベルである。

「そこまでできるなんて……! その匠と錬金術師に伝えてくださる? なかなかのお手前ですと」

 言いながら、アストはジュエリーケースから取った指輪を右手中指にはめてみた。調整道具が必要ないほど、ぴったりとおさまったようだ。

「かしこまりました。やっぱりよくお似合いですよ。事務仕事をなさることも多いようで、仕事姿が映えること間違いないでしょう」

 よく見ると、アストの右手中指の爪側の関節には『ペン胼胝(だこ)』ができている。

「ありがとう、王子様。さてサンクティス店長からお伺いしていた用件だけど、この村の開拓・建築に関してだったわよね。衛兵の『レヴァンティン』に案内させましょう」

 そして現れた人物は、引き締まった筋肉を誇る長身黒髪のエヴィルの男であった。

「村長より紹介に与ったレヴァンティンだ。よろしく頼もう、お客人」

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