エピローグ
俺達が出会ってから二年後の夏休み。
俺は机の上で寝ていたらしく、盛大に地面に落下した。
何の夢を見ていたのか、懐かしい様な馬鹿馬鹿しい様な夢を見た。
起き上がると体が固まっていて、少し動くだけで骨が軽快に鳴る。
「唯久くん、大丈夫?」
「寝落ちてたらしい。体が凝り固まってる」
「隣で寝ればよかったのに」
「そういうことしないからって父さん達に言って、昨日泊ったんだろ?」
そう宣言して同衾なんかしていたら確実に極刑を言い渡されてしまう。
「じゃあこれで我慢しとくね」
千歳は俺の口と自分の口を軽く重ねる。
一日俺と同じ生活をしていたのに、こんなにいい匂いがするってどうなってるんだろうか。
魔法使いだし、考えるだけ無駄か。
「おじさん達はもう出ちゃったの?」
「今日は二人とも早番だからな。日が昇るくらいに出発してるよ」
「じゃあ、適当に朝ごはん作っちゃうね」
俺と二人だからか、寝間着姿のままリビングに出て行った。
「ちゃんとできてるよな」
机の上に鎮座する大きな球を俺は誇らしく感じる。
作り始めて早二年。
沢山の失敗を重ねた末、ようやく完成した。
どうしても夏休み中にこれは作り上げたかった。
去年は死にかけたし、今年こそ成功させないと卒業してしまう。
卒業してしまったこんなどうでもいいことに時間は裂けない。
学園を卒業したらこの町を離れないといけない。
ここを離れて鏡の世界にある大学に進む。
そこはこの町みたいに絶対に安全な場所ではないけど、俺が強くなるためには必要な場所だ。
千歳も同じところに進学する予定だ。
「ご飯できたよ」
「今行く」
朝食を食べ終われば、夜が来るのを待つだけだ。
†
夜になり、俺達は学園に忍び込み鏡の世界で屋上に上る。
千歳が作った筒に俺が作った球を入れ、距離を取る。
長めの導火線に火を着け、校舎の反対側に移動する。
少しすると笛の様な間延びした音が周囲に響き、腹まで響く爆発音、そして音ともに火の花が開く。
多発式六尺玉。
筒が六尺玉を複製し打ち上げ、一定の回数上がると最後に本物が打ちあがる。
今回は五連発だ。
色とりどりの花火が一度二度と打ちあがり、五発目が打ちあがると打ち止め。
「やっと見れたな」
「去年はちゃんとしたの見たでしょ?」
「自作なのがいいんだろ」
「そうだね」
二年前の夏の約束は今果たされた。
立派かどうかはわからないけど俺達には本物よりも綺麗に見えた。
形は楕円だし、一種類しかできなかったけど、それでも花火を打ち上げられた。
「千歳、卒業したら結婚しよう」
「いいよ」
あまりにも軽い返事。
まるで遊びに行く約束でもする様な軽いやり取りで俺達は婚約する。
指輪も何もないし、婚姻届けなんかも無い。
この約束は口だけだ。
それでも俺達の決意は変わらない。
形式を知らないまだ子供の俺達二人ができる二人だけの確認作業だ。
花火を満喫した俺達は肩を並べ、明日を目指す。
さあ、どんな未来を創造ろうか。




