第四十四話:
第四十四話
静かになった周囲の音、前に進んでいるようで実際は後ろに進んでいると言う矛盾した感じを数度受けて、俺とマシロの動きは止まった。
「戻って来られたか?」
辺りを見渡し、警戒すべき相手が居ないことに安堵をおぼえ、ほっと胸をなでおろす。ま、助かったと思った瞬間が一番やばいんだけどな。そんな気配はみじんも感じられないから大丈夫だろう。
「そうみたいですね」
「ああ、マシロがいなければやばかったぜ」
ほっと一安心する俺達の元へ、誰かがやってきた。
「冬治さーんっ。もうっ、どこに行ってたのっ」
「ハルカ……そんなに怒るなよ。まだ八時間も経ってないだろ」
ちょっとかこの世界に飛んでいったが、かかったとしても一時間程度だ。
「何言ってるのっ! もう二日経ってるっ!」
「え、マジで?」
ケータイが無い為、日付を確認するためにわざわざ近くのコンビニまで三人で出向いて確認した。
「本当だな……知ってたか、マシロ」
「わかるわけ、無いですよ」
「それで、二人してこの二日間どこに行ってたの?」
マシロの言葉に俺たち二人は唸りあった。
「うーん、過去の世界」
「過去ぉ? そんな非日常的な話、誰が信じるのっ」
いや、ね、不可思議な話をして怒ってるけどさ……俺だって異世界からやってきたんだよ。それに召喚したのはハルカじゃないか。
「どうしてハルカはこんなに怒っているんだろうな。信じるだろ、普通」
「……冬治さん、時間を操る魔法は準備が必要なんですよ。一日前で、約半年……これだけでもう説明としては充分でしょう?」
「なるほどね」
不可能じゃないけれど、相当難しい事をやってのけたってわけか。
「すげぇんだな、マシロは」
「偶然ですよ」
「ちょっと、私の話聞いてるのっ」
無視されて怒りだしたハルカに、マシロは笑いかけた。
「ハルカ」
「何っ」
「無事に戻ってくる事が出来たら、言おうと思ってたんだ」
「何を?」
「またハルカの家でお世話になっていい?」
そういえば、マシロとハルカはちょっと危なっかしい雰囲気になっていたんだったな。だが、それも心配する必要はなさそうだ。二人の間に優しい空気が流れている。
「……冬治さんが、マシロの事を守れる程、立派な男になったら追い出すからね。それまでは、いい」
「うん、ありがとう」
手と手を取り合う二人の姿に、俺はこの世界に戻ってきて二度目の安堵をした。
また三人で暮らせる……それは実に喜ばしいことだ。
「でもね、マシロ。冬治さんを諦めきれないから誘惑しちゃうかも」
俺の左腕に抱きついてハルカは俺に笑いかけた。
「駄目ですっ」
そして、反対側……ではなく、俺の正面からマシロは抱きついてきた。
「ちょっと、それは反則でしょ! こういうときは両脇でしょっ」
「これが、ハルカには超えられない壁っ!」
騒ぎ始めた二人に俺はため息しか思いつかなかった。
こうやって三人で暮らし続けるのは無理だろう。だが、思い出として語り合うことは出来るはずだ。
異世界に消えた、あの冬菜も……マシロとは違うマシロと仲良くしているのだろう。いつかまた、出会う日が来るのであればその時、お礼を言おうと思う。
何で俺がお礼を言うのか、さっぱり理解しないだろうがね。
どうも、作者の雨月です。今回でマシロ編終了。というか、魔法使い終了。気づけば無駄に長い連載に……それでもまだ、一年ちょっとぐらいでしょうか。ちょいちょい、期間が開いてしまったのは作者の精神が弱いんです。ま、作者の精神状態はさておき、毎度謝っていますがすみません。もっと、作者に文章力があればみなさんを楽しませることができたんです。いや、ハードルは朝の時間の暇つぶしですからね。それさえ達していればそれでいいんです。私は読者の期待にこたえられているんだろうか……なんて考えた事は実はあんまりないのです。もっと言いたいことは色々とありますが、今回はここらで〆たいと思います。これまで読んでくれてありがとうございました。次は、必ず進歩します。




