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「お姉様と比べなさい」と言われ続けた私、辺境の村で錬金術師になったら初めて「ありがとう」と言われました  作者: P作


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第十話(最終話) 人形の仮面が剥がれるとき

 セリーヌ姉様は長い間、私を見つめていた。

 周囲を取り囲む村人たちの強い意志。私の背後にある実績と、公爵家の証書。自分が完全に敗北したことを悟った姉様の手から、魔力の輝きが消えた。

「……羨ましいわ、リーナ」

 その一言は、私の予想のまったく外から来た。

「私はずっと、お母様の言う通りに『魔法の天才』という人形を演じてきた。誰かが貼ったレッテルの中で、息を詰まらせて生きてきた。でも、あなたは自分の力で、自分の名前で、こんなにも愛される場所を作ったのね」

 完璧だった姉の仮面が剥がれて、そこには私と同じ、一人の不器用な少女の素顔があった。

 私は一歩進み出て、姉様の手を握った。冷たく震えていた。

「お姉様。もし、その肩書きが重くて息ができなくなったら——いつでもここに来てください。ここには、あなたを縛るお母様も侯爵家もありません。温泉だけあります」

 セリーヌ姉様は目を丸くして、それから、社交界用の完璧な笑みではない、少し困ったような本物の顔で笑った。

「……馬鹿ね。お母様には『リーナはもう我が家の手が届かないほどの錬金術師になっていた。これ以上手を出すと公爵家に潰される』と報告しておくわ。……また、来てもいい?」

「いつでも待っています」


 走り去る馬車を、ガルド爺さんとミアとラルフと、村のみんなで並んで見送った。

 その夜、物置の工房のランプの前で、私は古い入門書を開いた。

 表紙には幼い日の落書き——「りーな さいきょうのれんきんじゅつし」。

 王都の人間が何と言おうと関係ない。

 最強かどうかもわからない。都市には私より腕のいい錬金術師がたくさんいるだろう。武器も作れないし、金も精製できない。

 でも——この村で、私を必要としてくれる人がいる。

 比べなくていい。誰かより優れていなくていい。

 ただここで、土の匂いを嗅いで、素材の声を聴いて、誰かの役に立てればいい。

 窓の外に、満天の星が出ていた。王都では見えない星だった。

「ここが、私の場所だ」

 私はランプを消して、目を閉じた。

 土の匂いがした。虫の声がした。ミアの笑い声が、遠くから聞こえた気がした。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

リーナの物語は、ここでひとまず完結です。

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