第97話 不可思議な声
「お呼びでしょうしか。」
私のいる領主室の扉を叩き、扉を開けたのはカイズとファルクであった。イズラート国の国防について強化するべく、2人を呼び出したのだ。
「あぁ、よく来てくれた。早速だが話がある。至急だ。そこに座ってくれ。」
イズラート国は私にとって重要な拠点だ。失ってしまえば今までの積み重ねや、マナの努力全てが水の泡である。王都よりも防衛に力を入れることを私は考えていた。
カイズやファルクは対魔族戦争には参加させない。イズラート国の国防に務めて欲しいからだ。戦力は欲しいが、居てもいなくても恐らく魔王戦には足手まといにしかならないと思う。となれば、わざわざ危険な所へ連れて行くわけにはいかないのだ。
「君たち2人には、このイズラート国国防の長になってもらう。カイズは魔導師部隊総合指揮官として。ファルクは戦士部隊総合指揮官として。この国の国防を担ってくれ。」
イズラート国の国防に関しては今までのは全て撤廃し、一から作り直した設計がある。ごちゃごちゃするのは良くないと考えた私は、国防に関しては魔導師軍と戦士軍の2種類に絞った。その長となるのがカイズとファルクである。
「私で良ければ喜んで引き受けます。」
「俺も喜んでやるさ。」
カイズとファルクは快く了承してくれた。できる部下を持つと気が楽になる。2人にひ負担をかけてしまうが、それでも着いてきてくれることを私は信じている。
「カイズ・ファルク。自分自身も強くなってくれ。そして、軍全体の強さも向上させてくれ。頼んだ。」
私は極々単純で平々凡々な命令を降す。長ったらしく制約の多い命令は好まれず遵守されない。単純明快で分かりやすい命令の方が率先して成し遂げてくれるものだ。
「承知致しました。」「分かった。任せろ!」
国防については一先ずは良しとした。取り急ぎ国防を強化するため、私もイズラート国を走った。防護壁を新たに新調し、今までのものよりも高くしたりと様々な事をした1日であった。
「お疲れ様です。ソータ様。」
「ありがとうマナさん。マナさんにはご不便をおかけしております。」
「いえいえ、お気になさらずに。」
マナさんは王族のはずだが、嫌がる素振りも一つ見せずに私についてきてくれている。メイド時代が長すぎてそれが身に染み付いてしまったのかもしれない。それが落ち着くのであれば、私はそれに応えるまでである。
「すみませんが、私は今一度自分の鍛錬をしてきます。」
「あまり無理しないで下さいね。」
そう言い私はイズラート国をでて、シュタイズとばったり遭遇した指定危険区域に足を運んだ。私はまだまだ弱い。スキルや魔法、魔力量や使える属性などチートではあるかもしれないが、それでもまだまだである。
「やれることはやろう。戦争が始まるのは時間の問題と言っても過言じゃないだろうしな。」
私はとある魔法を作成することを考えていた。それはイズラート国の国防に関してだ。イズラート国の国防はつい先程カイズとファルクに頼んだがそれはあくまで戦闘になった場合。根本的な防御と言えばやはりシュタイズも使っていたような"魔法結界"が欲しいところである。
「魔王の力ですら壊せないような最強な結界を作れれば楽だが、今の俺には多分無理だろうしな。」
そう独り言を呟く。ふと、イズラート国にある禁書庫の魔導書の内容を思い出す。昔ながらの結界の生成方法などがいくつか載っていた。それはどれも大掛かりなもので、魔道士が何人いても足りない程である。
だが、その結界魔法を1度だけ使ったことがあると記されていた。それはまたしても、あの『転生騎士エクスカリバー』が居たとされる年代と合致する。魔王討伐戦時に流れ弾が周りの村や街を襲う危険性があったのだという。
つまり、今ある中では最強の結界ということだ。だが、イズラート国にいるカイズ率いる魔導師軍では発動は不可能だろう。それに変わる強力な結界があると良い。そういう事である。
「何かいい案があればいいが、なかなかそんな上手くいくはずもないんだよな。そもそも結界について無知すぎる。シュタイズに聞いておけばよかった。」
私は少し後悔する。シュタイズは私の目の前でいとも簡単に強力な結界魔法を繰り出していた。大きさは恐らく自由に選べるのだろう。だが、それは魔力量に比例する。魔導書に記載されていた知識は多少はあるが、今ある知識では少し困難と言えよう。
「簡単なものならできる。だが、国全体を覆い尽くすほどの巨大且つ強力な結界など、やはり私だけでは無理なのではないだろうか。」
私は少し頭を抱えた。
━━━━━━━━━━『力が欲しいか?』━━━━━━━━━━
「誰だ!!!!」
過去にも聞き覚えのある声が私の脳内に響き渡る。この声の主は未だに分からない。だが、聞き覚えのある声だ。周囲を見渡すが誰もいないのは当たり前である。
「力。。。。力は。。。欲しいに決まってる。守りたいものがあるんだ。」
私が少し考えた末に、何処からともなく聞こえてきた謎の声の主に対し、返答をする。欲しいと答えたその瞬間に、何かが自分の体に入り込んだかのような感覚に見舞われる。
「これは。。。一体。。。?」
ふと気がつけば、私の目の前に謎の文字が浮かび上がっていた。




