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第83話 失うものと決着

「標的!!ウォーターアロー!!!!」


初の魔族との戦闘に苦戦していた私は、何故か無関係なスキルであるテイマースキルを得たことにより、この為す術がない状況を打開することに成功していた。テイムしたモンスターであるボア・リザードを、2頭いるうちの片方の魔族に攻撃させ、一瞬でも足止めをさせたのだ。


「私が今まで使ってきた魔法の中で一番平々凡々な魔法だったな。いい感じに効いてくれているし、作戦は成功だ。」


土属性魔族に向けて放った水の矢は、極致詠唱を行った標的スキルによって、致命傷になる場所に正確に命中させる事が出来ていた。極致詠唱の偉大さと戦闘に対する闘いやすさの向上には、感謝してもし切れないというものだ。




『テイムしていた〈 ボア・リザード 〉が中級魔族ボルソルンによって討伐されました。テイムモンスター〈 ボア・リザード 〉を失いました。』




テイマースキルに関する表示は私の目の前に表示される。空気中に浮かび上がると言ったら分かりやすいだろうか。私の目の前に突如として現れたその表示は、それを読んだ途端、まるで鉄砲で自分の頭を撃ち抜かれたかのような、心臓を握り潰されたかのような、そんな衝撃に見舞われた。


「嘘だろぉ!??!ボア・リザード!!!!!」


私は表示を見るやいなや、すぐさま足止めをしてくれていたボア・リザードの方向へ体と顔を向ける。そこには魔族の氷属性の攻撃により串刺しとなったボア・リザードの姿があった。地面から鋭く大きな氷の棘が数本出ている。典型的でとても平々凡々な氷属性魔法であった。


「よくもやってくれたな。。。ボア・リザードの無念。俺が晴らす。」


私は自分の出せるスキルを駆使し、素早い体術で一瞬にして魔族ボルソルンの脇腹に入り込み、炎で作った剣で切り裂いた。弱点であろう炎魔法ということもあり、ボルソルンは今まで私を圧倒していたとは思えないほど呆気なく倒れた。


「ふざけるな。。。ふざけるな。。。。ふざけるな!!!あまりにも登場が短すぎるだろぉ!!!!!」


私は自分でも良く分からない言葉を発しながら、ボア・リザードの無念の意を含めて、炎の剣をボルソルンに突き刺した。ボルソルンは既に息絶えていただろう。だが、私は刺し続けた。


この時の私は少々おかしくなっていたと思う。身近に"死"を経験したことがなかった私は、私の知る限りでの「死」は自分自身の「死」が最初なのだ。私はこの時のことを覚えているかと聞かれると、鮮明に覚えているとは恐らく言えないだろう。そういう心身状態である。


「落ち着いてきた。ボア・リザード。悪かった。すまんな。俺がテイムして、命令したばっかりに。」


正直なことを言ってしまうと情はない。何故ならばつい先程テイムしたばかりで、そんなに時が経っていなからだ。人間長時間一緒にいるものに対して "情" というものを感じる。そういうものだ。


だか、悪かったとは思っている。突如現れた私にテイムされ、レベル差に大きな差があるにもかかわらず、無理難題な攻撃を仕掛けて来い、などという無謀な命令を下したのだ。そう考えると十分時間を稼いでくれたものだ。もう少し早く命令を解いていたらと考えてしまうが、もう遅い話。気にしても無駄なのだ。


「あ、そうだ。もう1頭の方はどうなったんだ??」


私はボア・リザードによって足止めされていた氷属性魔族のボルソルンの死は確認したが、もう1頭の土属性魔族の死は確認できていない。現状魔力監視にそれらしき魔力はない。後に息絶えたと思っていいだろう。


「よし。死んでるな。やったぁー!!!倒したーー!!ボア・リザードは失ったけど!!!」


私は少し開き直っている。いつまでも失くしたものをクヨクヨしていたら、男が廃るというもの。男なら凛とした佇まいで、胸を張って生きていくのが格好良いというものなのだ。私は最後にボア・リザードの死体に手を合わせ、一言感謝を述べた後、この場を後にした。


「おー!いたいた!!!急に走り出してどこいったのかと思ったぞ!」


「すみません。お待たせしました。」


私はシュタイズの元に戻り、手を頭に当てながら待たせたことを謝罪した。


「魔力反応何も無くなったが、やれたのか???」


「はい。お陰様で。」


今回のこの魔族戦は、私にとって大きな経験値となった。多少の苦戦は余儀なくされたが、この経験が今後の対魔族戦争において大きな糧となることは、確実であろう。


私の対峙する相手は恐らく魔人。ボルソルンとゲブのような中級魔族・上級魔族のルシフェルとは比べ物にならないほどのレベルがあるはずだ。私はその戦争において向けて、今できる準備はもっと必要だとそう考える。


「ソータよ。今回ここに魔族が来たことをすぐにでも王都他直属国に伝達せねばならん。そこでだな?申し訳ないのだが、一緒に共闘したソータにも情報提供者として一緒に王都に来て欲しいのだ。ほら!さっき言ってた魔人語のこともあるし!な!な!」


私はまだ何も言っていないのにも関わらず、何故最初から行く事が嫌だという前提で話をしているのだろうか。シュタイズの言っている通り、魔人語について気になることもある為、私は同行することに異論は無いのだが。


「全然いいですよ。行きましょう。王都。馬車よりも早くて乗り心地のいい乗り物があるので、一度我が国イズラートまで来て頂いても???」


私はシュタイズの合意を得て、一度イズラートに戻る為に、元来た道を引き返す形で歩き始めた。


「あ、貸していたスキル、返してもらいますね。」


「ん?あぁ!!魔族監視というやつか!これは素晴らしかったぞ!!ソータよ!助かった!」


私はシュタイズから、貸していた魔族監視スキルを返却してもらい、先程まで魔族と闘っていたとは思えない程色々とシュタイズと駄弁りながら、イズラート国への道中を二人で歩いていく。

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