第77話 極致詠唱魔法
「ソータ。『極致詠唱魔法』というものを知っているか???」
シュタイズの口から聞きなれない言葉が発せられた。『極致詠唱魔法』というその言葉に、私の男心が大きく揺さぶられるが、今は至って真面目な話をしている。厨二病気質なネーミングに関しては、そろそろ慣れなければならないのだ。
「知らないですね。通常の詠唱魔法とどう違うのですか?」
「『極致詠唱魔法』というのは、魔法の最高峰だ。高等技術が必要になる。通常の魔法よりも魔法効果が大きいのが特徴だ。」
少し難しく感じたが、簡単に言えば強い魔法が使えるというそういうことだろう。理由はよく分からないが、詠唱魔法にひもう一段階上が存在して、その魔法は通常のものよりも威力が大きいと、そういう話なのだ。
「無詠唱魔法と詠唱魔法は威力は同じですが、その極致詠唱魔法は別格だと、そういうことですか?」
「あぁ。まぁ間違ってはないからそれで構わない。極致魔法を使うにはある条件が必要なんだ。それは、相当量の魔力を持っていること。極致魔法は、魔力を圧縮して放つ。同じ魔法でも使う魔力の使用量を増やす事で、威力を上げる魔法だ。」
説明を聞く限りでは、魔力量さえあれば使用できるように聞こえる。だが、みんながみんな使えるのであれば、とっくに使っているだろう。だがわざわざ『極致詠唱魔法』と名前分けているところを考えると、使用できる人は少ないという事なのだろう。
「因みに前のソータ殿の試験でも、詠唱について聞いてきたな。あの時私が詠唱している理由については誤魔化したが、極致詠唱魔法を使っていたからだ。嘘をついて申し訳ないな。」
やはりそうであったかと、私は思った。無詠唱魔法の方が楽で脳内で連想することで魔法を放つことが出来る。何かと便利なものを、わざわざ詠唱を用いて作業をひとつ増やすのはナンセンスなのだ。なにか別の理由があるかと思えば、こういうことだったらしい。
「何故一度誤魔化したんですか???なにか知られては行けない事でも??」
「知られてはいけないという訳では無い。だが、極致詠唱魔法は危険なんだ。魔力操作を熟知している人間、魔力操作が的確な人間にしか扱えない。何も知らない素人が変に使おうとすれば、死ぬだろうな。」
魔力操作。これは私自身考えたことはある。魔力を任意に操作して、あらゆる魔法を行使する。これはアニメや漫画において重要部分なのだ。魔力操作が上手くなければ、戦闘において冷静に魔法を繰り出すことはまず出来ない。それと同じで、使い方を誤れば死に至る事故に繋がってしまうのだ。
「何故。。。素人がやろうとすると死ぬ可能性があるのですか?」
私は直球の質問をする。魔力操作に上手い下手が存在する場合、通常の魔法に関しても危険なのではないのかと、素直に思ったからである。
「ソータ殿は『魔力飽和』を知っているか???」
魔力飽和は自動車作成をする時にガイズから勉強したものだ。魔法に伴う魔力に関して、場所・空間に対しての魔力の制限が存在する。その制限を超えてしまえば魔力は暴走してしまうというものだったはずだ。
「はい。知っています。魔力の制限を超えると暴走してしまうという認識です。」
「あぁ、それで良い。それが、体内で起きると思ってくれ。どうなる。体内で魔力飽和が起こってしまえば。」
「・・・命は。。。助からないかと。。。」
私がそう答えるとシュタイズは目を閉じて頷く。魔力飽和に対してそこまでの危険意識はなかった。魔力飽和は魔法を行使したり、一点に魔力を注ぎすぎたりと魔力を消費する行為の中で発生するものという認識であった。だが、少々違ったようだ。魔力飽和は行使する前の体内でも発生してしまうと言うのだ。
「通常の魔法や、体内にある潜在的な魔力に関しては何故魔力飽和を引き起こさないのですか??」
「いい質問だな。確かに体内でも魔力飽和が起こるならば、普段元からある魔力で魔力飽和を起こさないのは謎だよな。だが少し違う。体内での魔力飽和を引き起こす際は必ず魔法を使う直前なんだ。体の部分ごとの飽和量は異なるからな、魔力を移動させた時にその移動先の飽和量よりも魔力が上であれば、その場所で魔力飽和を引き起こす。そういうことだ。」
つまりはこういう事だろう。空間に魔力の許容範囲が存在するのと同じように、体内の空間にもそれぞれ魔力の許容範囲が存在する。体内にある潜在的な魔力がある場所の許容範囲は大きいため、魔力飽和は発生しない。
だが、体内の別の場所も全て同じ許容範囲とは限らない。そう考えれば、魔法を使うために魔力を流した際、流した先の許容範囲が流した魔力よりも小さければ、その瞬間に魔力飽和を引き起こす。恐ろしいものだ。
これを考えた時にふと思ったが、魔力量に個人差が存在するのは、魔力を蓄えておける場所の許容範囲に、個人差が存在するからなのでは無いだろうか。そう思えば少し面白いと感じる。
「なるほど。よく分かりました。極致詠唱魔法は危険な状態で放っている訳ですね。。。」
「まぁ、そういうことになるな。正確に魔力操作をすることで、自分の体内の魔力許容範囲さえ超えなければ、圧縮できるだけ圧縮しまくって、それで魔法を放てばそれはもう高威力の魔法になる。だが、それを習得するために試してみる時に、魔力量を誤って魔力飽和で事故死してしまう事、よくある話だ。十分注意するべき魔法だ。」
私はシュタイズから一連の説明を受けて、自らが無意識に極致詠唱魔法を放っていたことを自覚した。最後の最後に、願いを込めて魔法名を大声で叫びながら放った魔法。あれは今まで以上の威力を発していた。驚いたが、恐らく極致詠唱魔法だったのだろう。私らこの経験を身につけるべく、鍛錬を重ねようとそう心に決めた。




