第71話 自己強化
「ソータ。頼む。力を貸してくれ!」
バゼル国王が珍しく誠心誠意お願いしている。今までは散々自分勝手に私を振り回しておきながら、いざと言う時にはしっかりとしたお願いをしてくるところ、どうも人間関係を熟知しているようだ。
「勿論ですよ。言われずとも助太刀します。このまま呆気なくこの世界が終わってしまったら、私の無双人生も終わってしまいますから。」
「無双・・・人生???なんだそれは??」
「気にしないで下さい。ちょっとした戯言です。」
寄りにもよって私が異世界に転生してから初の対魔族戦争が、例年よりも2倍とは。私は尽く運が悪いと言うものなのだろう。はたまた、ただ神に遊ばれているのだろうか?私はため息をついた。
「一つ気になるのですが、魔族を指揮している魔人が必ず1人いると会合で仰ってましたが、2倍近いということは、魔人も2人以上いるということですか?」
「・・・・・・・・・いや、分からない。だがそれは考えられる。魔族と言えど意思疎通は人間と同じだ。大群を指揮するのは人間にできないように、魔人にもできるとは思えない。。。 」
それもそうだろう。皆それぞれ別の考えを持っているような、一人一人別の意志を持っている。1人の人物が何百、何千という人々を扱うことは出来ないだろう。日本人の国民性でも難しいのだ。必ず少数派は生まれる。だがどうだろう。意志を支配してしまえばそれも可能なのではないだろうか。私は最悪な状況を想像してしまった。
「どういう状況であろうと、負けては行けない戦争ですね。指揮・統括している魔人をいち早く認識して、いち早く抹消するしかなさそうですね。」
「魔人の発見については心配ない。魔族と魔人は全くの別物だ。一目見れば分かる。魔力の量も別格だ。お主ならば直ぐに察知できるだろう。」
何、私のことを分かっているかのようなことを言っているのだろう。確かに魔物探知や攻撃察知スキルで初手は何とかなるかもしれない。だが、"探知"では心もとないのだ。出来れば"魔族察知"を取得しておきたいところである。
「例年であれば、何人ぐらいで挑んでるんですか。」
「あぁ。人数だけ言うなら合計"万"は行くだろうな。だが、魔人との戦闘を可能とするものはほんのひと握りだ。そう考えてしまえば、今までは実際に戦っていたのは、
6人程かもしれないな。」
無謀である。よく今まで耐えていたものだ。余程その6人は強かったのだろうと私はそう思った。戦争に参加した経験がある人物に心当たりがある。所長のシュタイズだ。仮にも役所の所長という身分だが、実力は確かな物と言える。
「いつ来るか分からないんですよね。少しでも準備期間があるといいのですが。」
「あぁ、確定した日時は分からない。ただ例年通り動き始めており、倍の多さというのも事実だ。いつ来てもおかしくない状況だ。焦らせるつもりは無いが、力をつけておくなら今の内だぞ。」
バゼル国王は真剣な眼差しでそう言う。それもそうだろう。王都どころの話ではなく、我々人間という種族の存亡に関わるものなのだ。真剣になるのも分かる。
「わかりました。今できる全ての準備をします。バゼル国王も自分の身の安全を最優先に過ごして下さい。」
「あぁ。そうする。私も多少は参戦するがな!」
国王がそんな危険な戦争に足を踏み入れるなど、格好の餌食にしかならないかとお思うが、何だかそれが当たり前に思える私がいる。バゼル国王なら、自分も身を呈して戦闘に加担するだろう。じっとしていられるほど暴君は甘くないのだ。
その後も一通り話しをし、そしてイズラート国の大変貌について根掘り葉掘りこと細かく聞かれた後、バゼル国王は足早に王都へと戻って行った。途中、バゼル国王からまたも依頼を受けてしまった私は、この先どんどん王都やその周辺国の仕事に振り回されることになると勘づいていた。
「結局ブラックだなぁ。仕事がありすぎだ。休みなんて取れやしない。。。」
私は過去の自分を思い返して照らし合わせてしまった。あまり昔と変わっていないように感じるが、一つ昔と大きく異なる部分がある。
「だが、それが楽しいと感じる私は、おかしくなったのかもしれないな。」
そう、楽しく感じるのである。仕事を頼まれると言う、その物に対しての技術力が正規で認められたというわけだ。嬉しくないはずがないだろう。
「まぁ、その仕事も後回しだ。今は私自身の実力向上に力を存分に降り注ぐとしよう。」
私は自分の実力とスキルの解放に力を入れるべく、久しぶりの戦闘をしにイズラート国の外に出る。そして意識を研ぎ澄まし、私が出来る全ての探知系スキルを使用してみる。
「やはり、足りない。今のままでは足りない。。。」
私は、今のままでは負けてしまうとそう感じとるやいなや、スキル作成を試みる。戦闘に必要なのはスキルや魔法などの技やその手段も十分に必要だ。ちょっとした事で勝敗が左右するものである以上、少しでも私に勝ち目があるように基礎力をあげておく必要がある。
「集中すれば、いいスキルが手に入るはずだ。今の私に必要なスキル。。。私の力を向上させるような。。。いいスキル。。」
私は深く深く想像した。ついこの前取得したばかりである想像スキルは大いに役立っている。今までよりも何倍も私の想像力を豊かに変化させてくれた。その兼ね合いもあって、スキル作成には時間を要しなかった。
ピロリン!ピロリン!テレッテレー!テレッテレー!




