第44話 試験開始
「全適性者だと!?!?」
そこまで驚かれてしまうとこちらとしても少々気が引けるものだ。所長クラスともなる者であれば、全適性者は聞いたことは無いのだろうか?
「ま、まぁいい。。。全適性者など久々に聞いたものだ。過去のおとぎ話かと思っていたが、実在するのだな。。。」
どうやら自己完結してもらったようで、私としても説明をするのは面倒というものだ。物事は可能性で成り立っている。いかなる場合においても可能性が存在するのだ。全適性者が存在するのも十分な可能性と言えよう。
「魔法については大丈夫ですか?何か問題があるならばお聞きしたいです。」
「とんでもない。問題は愚か、今すぐにでも頼み事をしたいぐらいだ。」
頼み事?それは申し訳ないが控えたいところだ。私は国の再建が最優先なのだ。
「時間が勿体ないな。領主なのだろう。増してあのイズラート国。さぞ忙しかろう。早速だがAランク試験にしよう。」
そう言うと所長は一度建物の奥に戻って行った。それなりに準備が必要なのだろうか。まぁそれもそうだろう。私自身も個人的な準備を整え、いつでも行けるように所長を待っていた。
「待たせたな。では行こうか。」
所長が戻ってきたと思ったが、何やらガチャガチャと重たい金属の擦れる音がする。所長は相当な重装備である。準備万端と言うよりかは、準備をし過ぎている程である。
「ここが試験会場になる洞窟だ。試験用に改造されている。螺旋階段がここにあるだろう。これでAランク試験専用の深さまで行こうか。」
その螺旋階段は、異世界らしい雰囲気を漂わせている。壁にはライト代わりのロウソクが火を灯されている。風情があると感じながら、所長と共に階段を下る。
「Aランク試験の合格基準はなんなんですか?」
私は唐突にそう所長に聞く。所長は少し険しい顔を見せたが、すぐに返事をしてくれた。
「そうだな。。。魔人を倒せる程の強さを持っているかどうかだな。」
なるほど。Aランクにもなれば、国は愚かこの世界をも脅かす程の魔獣や魔人を相手にすることがある。それに耐えれる程の戦力でなければならないというわけだ。
「なるほど、分かりました。つまりは、強さを見せつければいい訳ですね?」
幸いイズラート国にあったあの書庫で手に入れた様々な魔法やスキルを駆使すれば、難なくこなせるようなそんな気がしていた。今回は魔法について重視しているらしい。恐らくだが、魔人戦には魔法を主に扱うのかも知れない。
「着いたぞ。ここがAランク試験会場だ。この扉を開けたその時から試験は開始だ。私が止めるまでは戦い続けてくれ。」
所長は今までの表情とは変わり、一段と険しい顔を私に向けている。それ相応に危険な試験なのだろうか。だが、妙に私は自信に満ち溢れている。
「分かりました。頑張ります。」
目の前には鉄製の分厚い扉がある。厳重に鍵が掛けられていたが、所長はその鍵を解いてくれた。後は私が扉を開けて先へ進むだけである。
「心の準備が出来たら、扉を開けて先へ進め。少しでも危険だと私が判断すれば、問答無用で試験を中止する。」
安全も踏まえた試験官なのだろう。当たり前ではあるが、試験官もそれ相応の危険と実力が必要なわけだ。
「よし。」
私は所長を、背に目の前にある重く冷たい扉を開いた。その扉はギシギシと錆び付いた音を響かせる。扉を開くと数メートル先すら見えないほどの暗黒が広がっている。音も匂いも何もしない。
「物凄い量の魔獣がいる。。。なんなんだこの量は。。。」
私は扉を開けたのと同時に魔物探知を行った。探知して引っかかった魔力は辺り一面を埋め尽くすほどの魔力である。小さなものから大きなもの。平均してあの時の上級魔獣と同じ強さであることを感じ取った。
「こりゃ凄いな。。。予想以上だ。」
あまりにも大量な魔獣の多さに一瞬怯みかけたが、そんなことは言っていられない。できるだけ早く終わらせたいのだが、いい感じの魔法はないかを私は頭の中の引き出しを手当り次第漁った。
「広域魔法で高威力な魔法。。。確かあの魔導書の360ページに載っていたあれならば。。。」
私は頭の中にある最善の魔法を探したが、どうもこれ以上の良さげな魔法は見つからなかった。私が可能性として上げた魔法は、魔獣攻撃特化の魔力を吸収する魔法である。魔導書には『インビジブル』とそう記載されていた。
「目に見えないという意味だったよな?。。。まぁ確かに目に見えないが。。。」
何はともあれ私は魔獣の魔力反応のある方向へ手を突き出し、魔法を繰り出そうと強く念じた。といっても、魔力を吸収してどうなるというのだろうか。魔力ら魔獣の動力源になっているという認識はあっているだろうが、吸収して終わるなら話は簡単であるがそう簡単にはいかないであろう。
「インビジブル・・・・・・。」
私とした事が、頭で唱えすぎていたせいか思わず口に出してしまった。まるで詠唱魔法を行った様である。色々なことを考えながら、魔法を繰り出そうとしていたのが仇となったのだろう。
だが、幸いにも魔法はしっかりと発動していた。比較的小さめの魔力反応であったものは反応が無くなり、強大で膨大であった物も半分以上減っているのがわかった。相当生命力を削ったと言える。
「よし。これなら十分倒せるな!!!」
私はそう自分を奮い立たせた後、暗闇に向かって走り出した。




