第41話 絆と愛
私は転移魔法を駆使し、マナと一緒に王都へ来ていた。イズラート国領主として、バゼル国王との会談の為に屋敷の中をマナと二人で歩いていた。
「そういえば、マナ・・・失礼。ミナは元気にしているだろうか?」
「ミナはいつだって元気ですよ。ですが、私は心配してました。本来はミナとして生きて行きたかったのでは無いかなと。」
妹にも恐らく思うことはある。姉にも思うことはあるだろうが、姉は妹に対する申し訳なさや心配が、自分自身を苦しめることになる。姉妹に限らず兄弟のようなその関係性は、どんなに傷が入っても切れることはないと私は感じる。
「私が言うのも違う気がしますが、ミナはマナのことを嫌っていたり、怒っていたりそういう感情はないと思いますよ。心配や感謝が大半を占めているとそう思います。」
マナは眉を八の字にしていたが、優しくそう言うと、まだ思う部分はあるのか、眉は八の字のままではあったが、いつものマナに戻ったような気がした。
「ミナが私を心配してくれているのは分かっていました。メイドとしている私の事を横目で良く見ていましたし、私の部屋まで会いに来てくれていたりもしました。」
私はここでふと気がついた。普段はメイドとして全くおめかしなどしなかったマナであったが、妹との久しぶりの再開、それも姉としての再開であるのだから、妹に元気そうな自分を見せてあげたかったのではないだろうか。姉ならではの心配をかけたことに対する謝罪の表し方なのだろう。
「マナさんはとても優しい方ですね。」
私がそういうと、妹に会う事に緊張をしていたかのように硬かった表情は、柔らかくにこやかな顔に変わった。
そうこうしていると、国王が普段いる部屋の前に着いた。
「失礼します。バゼル国王いますか??」
私はそういいながら、無駄に大きな扉を押し開く。
「あら、お久しぶりです。ソータ侯爵様。」
扉を開け放ったその先に居たのは、あのバゼル国王の妻であるアリスさんであった。毎度思うが、バゼル国王には勿体ないお方だ。
「お久しぶりです。その呼び名は少々恥ずかしいので、ソータでいいですよ。」
「でしたら、ソータ様とお呼び致します。」
毎度毎度呼び方についての訂正をしなければならないのは面倒だが、それを怠って堅苦しい呼び方をされるよりは何倍も良いものだ。
「すみませんが、バゼル国王は今どちらへ?」
「恐らく訓練場に居るかと思われます。剣を振ってくると、そう仰っていました。」
バゼル国王らしいといえばそうだろう。相当な筋力を持っているのは、私も十分に知っている。
「ありがとうございます。助かります。」
私はアリスさんに感謝を述べ、マナと共に部屋を出た。妙な事にアリスさんとマナは一言も交わさなかった。
「アリスさんとお話したかったのではないですか?大丈夫ですか?」
「母上様は、私がどんなに変わっても恐らく普段の全く変わらない接し方をしてくると思います。私よりも、妹のミナの方が大切ですから。」
過去に何かあったのだろうか?それとも単純に母親と仲が悪いだけだろうか?日本の家庭にもよくある話であるが、何故か心配になってしまうものだ。
「私にできることなら何でも手を貸しますからね。お母様との関係がが不釣り合いなら、改善したいでしょう?」
私はそうマナに言う。マナは無言で少し下を向く。あまり触れられたくないことなのかもしれない。私はそう思い、それ以上は何も聞かなかった。
「バゼル国王、お久しぶりです。」
「おぉ!!!ソータか!良くぞ戻ったな!」
訓練場で大きく剣を振っている国王に向けてそう声をかける。それに気がついた国王は、首にかけていたタオルで汗を拭いながら、私とマナの居る所まで歩み寄ってきた。
「マナ・・・。マナ・・・なのか。。。?」
歩み寄って来ている途中、国王の足は止まった。そして、国王は私の右斜め後ろに居る美しく彩ったマナを見て、驚いた顔をしている。
「そうか。。。よく帰ったな。マナ。そして、辛い思いをさせて悪かった。父親として、面目ない。ミナを守ってくれてありがとう。」
バゼル国王はこういう所はしっかりしている。謝るところはしっかりと謝る。これは大切なことである。自分の娘でありながら、感謝の意を姿勢で表す。素晴らしい親だと私は感じる。
「父上様。私はマナに戻ります。イズラート国の脅威はもう無くなりました。ミナにも会いたいです。」
「あぁ。勿論だ。アリスにはあったか?アリスもマナのその姿を見たいと思うだろう。」
「母上様には先程お会いしました。特に何も言われることはありませんでしたが、私には分かります。お帰りとそう言っていました。」
マナは母親のことを嫌っているわけでは無いようだ。母親も、娘のことは嫌っていない。では何故何も話さないのか。恐らく、何も話せないのだろう。
「そうか。それは良かった。アリスも私に良く相談をしてきたものだ。まぁ、何よりだ!元気で良かった。その姿を見せてくれてありがとう。」
一家の父親と娘。その絆は切り離せないものかもしれない。喧嘩をして突発的なことを言ってしまう事もあるかもしれないが、それでも家族としての絆は決して切れない。そして切ってはならないものである。




