第40話 転移魔法
昨晩、私とその秘書であるマナは書庫の中にある雰囲気漂う椅子と机に腰かけ、お互いの自己紹介をした。この自己紹介で得たマナの情報とこの世界のスキルの偉大さについては、想像を絶するものであった。
「マナさん。私はそろそろ一度王都に戻ります。書庫にあった魔導書に使ってみたいスキルがあったんです。」
そもそも書庫を探したきっかけは、魔法をもっと取得したいという願いである。色々なことがあったが、結果的に書庫は実在し、その書庫は私の能力を格段にあげるものであった。
「流石に私のスキルでも、任意の相手の使用出来る魔法やスキルまでは把握できません。一体なんの魔法ですか?」
マナはそう首を傾げてくる。異世界といえば魔法を駆使して、戦うような戦闘を行うが、それと同等以上によく出る魔法である。
「転移魔法ですよ!転移魔法!!瞬間移動!やってみたいじゃないですか!!」
瞬間移動。それは自分の思うように任意の所へ自分を飛ばし、瞬時にその場所に行くことができるという、日本の交通機関よりも何倍も役に立つ代物だ。男のロマン所ではないだろう。誰しもが使いたいものだ。
「転移魔法・・・。過去に本で読んだことがありますが、私は見たことがありません。勿論、私も使えませんから。」
マナは何処かパッとしないようなそんな顔をしている。理解はできているが、それができるか否かに関しての疑問があるのかもしれない。
「収納魔法や転移魔法とか、攻撃をすると言うよりかは、自分の私的利用で、魔法を補助のように扱うのがベストかもしれませんね。」
私がそう言うと、不満そうにマナは見つめてくる。恐らくであるが、"防御魔法"も捨てたものじゃない"とそう言いたいのではないのだろうか。
「私もそう思います。」
全くの予想外な返答だ。私の予想はよく外れる。自分を信用しては行けないことを私は自覚した。
「私は身支度を済ませたら、今日のうちに王都に戻る。色々とバゼル国王と話を付けてから帰ってくる予定だが、来るか?」
私がそうマナに問いかける。瞬間移動がどの程度まで使えるのか、自分に効力を発揮させることはできるであろうが、それが別の対象物にも影響させることが出来るのか。私は少々不安気味に聞いた。
「はい。お供します。私にも転移魔法は効くかを気にしているみたいですが、大丈夫ですよ。」
マナはエスパーである。正確に言えば、スキルが強すぎるのである。そもそも『天声の呟き』などという何とも胡散臭い厨二病溢れる名前は誰が決めたのだ。私はとてもかっこいいと思うが。
「マナさんが言うなら間違いないですね。では、行く準備を整えて、いつでも行けるようにそうしておいて下さい。」
「女の子には準備に時間が掛かるものですよ。ソータ様。」
マナは私をからかっているのであろうが、女性一人の身支度の時間を待てないほど、私はそんなに辛辣な人間ではない。からかわないで頂きたいものである。
あれから体感で2時間は経過しただろうか。美しく綺麗に彩った女性らしいマナが、準備できたとそう申告してきた。
「では、行きましょうか。。。」
時間は少しかかったが、それでも転移魔法を使えるということは、移動時間がない。それはとても素晴らしい事である。日本にいた頃は何かにつけては、電車・車で移動しなければならない。面倒な世界である。
「魔導書によると、行きたいところを強く念じることで、その場所に転移することができるらしいんだが、念じると言っても。。。」
王都を念じることは出来る。だが、王都を上空から眺めるような画角を念じてしまえば、転移した先は上空だ。であれば落下してしまう。マナもいるのだ。それは避けたい。
では、王都の門番の手前に転移するのはどうだろう。門番の検査を受けなければならない事や、バゼル国王のいる所まで行くことに時間がかかってしまう。であるならば。
「私がはっきりと安全且つバゼル国王の屋敷に近い。。。そうだ!!!」
私は思い立つと同時にその場所を強く念じた。念の為、不可効力で、仕方がなく、どうしようもなく、一応、マナと手を繋ぎ、転移する。これは仕方ない事だ。本当だ。
「できた。転移できた!!!」
転移はどうやら大成功と言ったところである。マナの手を強く握り締めて、その感触を味わう事ができる。つまりマナも一緒にしっかりと転移できている訳だ。
「良かったですねソータ様。ですがここを念じたんですか?」
私が念じた場所。それは、私がイズラート国に行く前まで、自分が寝泊まりしていた部屋そのものである。この部屋のことは隅々まで念じることが出来る。安全なのだ。それに、ここは国王の家の中。すぐに国王に会えるという好立地なのだ。
「転移した瞬間楽しかったですね。面白いです。」
私はマナにそう言う。転移した瞬間、それは私が念じた時である。念じてある程度転移する場所を定めると、魔法を発動させる事を連想した。その時、目の前は外側から内側に向けて白くなり、やがて目に映る画面は真っ白になった。そして、また目が見えるようになった時には既にこの部屋の中である。面白くない訳が無い。
「目を瞑っていたので分かりせんでした。」
マナは怖かったのだろうか?目を瞑っていたとそう言う。
何はともあれ、王都への転移はできた。これから始まるのはイズラート国領主としての大仕事。王都との交渉であるのだ。




