職業Ⅳ・② 呼び寄せて
ここは海に浮く船の上。
そして、敵モンスターの八本の足と二本の手が次々と襲い掛かってくる。
慣れた船員の腕をもってしても、船への攻撃を避けるのは困難だった。
ドーファンさんが持ってきた依頼は、船の航路に現れたカラマロの狩猟だった。
カラマロ。白い体を持ち、八本の足、二本の腕を持つモンスターだ。現実の生物に喩えるなら、巨大イカだな、烏賊。
水棲生物のくせに、水属性攻撃は使わない。雷属性の攻撃と、腕や足での攻撃をメインに使ってくる。水中で水属性攻撃を使っても無意味だからなのか。
狩猟用の船を借りて、カラマロのいるポイントまでやってきた。船の操縦は船員に任せてるけどな。
ドーファンさんはメアテクスに置いてきた。いくら威勢がいいからといって、武器を持たない人に手伝ってもらうことはない。
俺は身をかわして攻撃を避ける。
狼少女も攻撃を避けつつ、獣型に変化している。獣型に変化すると彼女の服は消えたように見える。実際には小さく畳まれて奴隷の首輪に吸い付いている。
そして、襲い掛かってくるカラマロの足に噛み付いていた。太いカラマロの足は噛み切ることができず、牙を突き立てるだけに終わる。
それでも諦めず、彼女は手当たり次第に噛み付きを繰り出していた。
俺は虫/獣/鳥/魚の奏者、の使い方がまだわからなかった。
仕方なく初期装備の短剣を久しぶりに取り出し、カラマロの足を斬りつけていた。だがカラマロの足はかなり太く、短剣一本、しかも初期装備の、で立ち向かったところでぜんぜん効いていないだろう。
奏者の使い方――。いつだったか、高校のときの友人に推されて読んだ本に、獣と通じる話が書いてあったような気がする。何だったか――。奏者。つまり奏でる者。
楽器を使わずに奏でるならば――。
俺は右手の人差し指と中指を口に当て、吹いた。
「ヒュッ」
狼少女が、その時噛み付いていた足を、噛み切った。
海の上を飛んでいた鳥が俺の周りに集まり、カラマロに襲い掛かる。
そして、カラマロが怯んだ。
海を覗けば、魚たちが集まりカラマロに噛み付いたり、突進を繰り出している。
俺の口笛に、鳥を、魚を呼び寄せ、狼少女を強化する能力があったのか。
これが、奏者の武器。
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これからもよろしくお願いします。
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