職業Ⅳ・① 指名依頼
今日はどのクエストを受けようか。
その前に転職をしよう。いつ取得したのかわからないが、朝起きたらギャンブラーの称号を取得していることに気付いたのだ。所持金が多くなっていたからなのか?
メアテクスでは転職は教会で行う。ユキナラリと同じだ。
転職ルーレットにチケットを挿し込み、スタートボタンを押し込む。
今回は中距離にしかなれないということがわかっている。残念ではあるが、こうなってしまえば何が出てもあきらめるしかない。
ダカダカダカダカダカ……
「νΛδΣ」
狼少女が呟く。が、狼人間語は俺にはわからない。
「何か言ったか?」
「ウルサイ、デス……」
狼の聴力を持つ彼女には俺が感じているよりもうるさく聞こえるようだ。超音波でも出ているのか?
ダーーーン。
今度の職業は。
「虫/鳥/獣/魚の奏者」
獣の奏者というと、あれだよな……。
狼少女を奴隷として買ったからこういう職業が出るのか? 関係ないとは思うけど。
武器が変化していく――と思ったら消えた。攻撃するのは虫/鳥/獣/魚だが、どうやって操るんだ? まぁやってみればわかるか。
さて、クエストを受けますか。
「あんたがアナティフ奪回戦で活躍したって噂のギャンブラーか? 転職したみたいだが」
後ろから声がかかる。反応して振り返った。ひげの濃い男性が俺に声をかけているみたいだ。
「噂かどうかは知らないけど、アナティフ奪回戦に参加した元ギャンブラーだ」
「やっぱりか。そんな空気がしたんだ」
あの時は俺は麻痺カードを投げ続けただけで、大して役に立っていない。それに公表されていないが、ボス討伐に最終的には関わっていない。
だが評価されて嬉しくないことはない。適当に謙遜しておく。
彼はドーファンという名前だ。自称、世界の海を股に掛ける船隊の副船長らしい。現在の拠点はここから少し海を渡ったところにあるらしい。
「それで、俺に何のようだ?」
「あぁ、本題がまだだったな。海を渡る途中、危険なモンスターに遭遇しちまった。俺たちの船隊が拠点に帰れなくなったんだ」
ふーん。そうか。モンスターに会ったんだな。大変だな。さようなら。
というわけにもいかず、もう少し話を聞いてやる。
「それで、噂の冒険者にモンスター討伐依頼を出したいってわけなんだ。受けてくれないか?」
「そういわれても、クエスト内容の詳細がわからないと断言できないな」
行ってみたら手に負えないほどのモンスターだった、なんてことになっては困る。
「あぁ、ギルドの受付で詳しい話をしようか」
そう言ってドーファンがギルドに歩いていく。置いていかれないように荷物をすばやくまとめて追いかけていった。
バレンタイン? 何それおいしいの?
……負け犬の遠吠えです。




