38話 あの戦いの後
目を開けると太陽の光が窓から差し込んでいた。
瞼を擦りながら時計を確認する。針は六時ちょうどを指していた。
吉良との戦いからしばらく立ち今は七月の二一日。太陽が昇るのも早くなった今日この頃。明日から夏休みだ。だが今日は学校がある。行きたくね~よ~。
腕に力を入れ立ち上がろうとするが体が動かない。このままではもう一度夢の世界へ行ってしまう。
「やめろ! もう戻れなくなるぞ!」
脳内にいるもう一人の僕が叫びを上げる。
「フッ……。これでいいんだ。お前は生きろよ……」
もう一人の僕に別れを告げ瞼を再び閉じる。
――ピリリリリリッ!
沈みかけた意識が一瞬で覚醒する。慌てて携帯を手に取りアラームを止める。
携帯に映し出された時刻は六時半を示しており意識が三〇分程、飛んでいたと分かる。
今度は先程より簡単に体を起こすことが出来た。
ふぇ~ん、学校行きたくないよ~。
今度は脳内の僕がさっきとは打って変わって騒ぎ立てる。
ハァ、学校なくならないかな……。嫌すぎて吐き気と頭痛と腹痛とだるさと息苦しさを催しているが我慢して足を一歩前へ送る。
これでもましになった方だ。高校が始まった頃――と言うより学校というものに入ってからつい最近まで――は本気で体調を崩し病院に行って薬を貰っていたのだから。ちなみに原因はストレスです。
そういう意味では成長したといってもいいだろう。
そんなことを考えながら支度を素早く済ませ家を出る。
外はまさに夏という感じで暑い。歩いているだけなのに汗が出てくる。
「あ、和真君! おはよ~!」
「おはよう、和真!」
ヨタヨタと歩いていると後ろから声をかけられた。まあ、誰かは予想がつく。挨拶を僕にするなんて二人しかいない。
「おはよう、二人共」
雪と士希が僕を挟む形で並んでくる。
「今日で一旦学校も終わりだな~」
士希が感慨深げに言う。
「二人共、夏はどこかデートに行くのか?」
ピタッと僕と雪の歩みが止まる。体が動かない。体が熱くなり、どう反応するか迷っていると雪の震えた声が聞こえてきた。
「ま、まだ決まってにゃい――ないよ」
噛んでしまったのはバレバレだが何事もなかったように言い直す。
ふと吉良との戦いからユグドラシルに帰った時のことが頭に浮かんだ。
雪と僕、二人してボロボロになって回復機でしばらく眠った後、機械から出ると顔を若干赤く染めた雪と満面の笑みを浮かべた士希が立っていた。
「和真、おめでとう!」
「……もしかしなくてもバレてる?」
頬が引き攣るのを感じながら聞くと頷かれた。
「戦闘中は多少モニターが途切れたりするけど告白タイムは戦闘後だったからしっかり見れたよ」
その後、しばらく会話をした後、ふと思い出したように士希が口を開いた。
「あ~でもこれで僕がいたら邪魔になっちゃうかな?」
士希は笑っていたがなんとなくぎこちなかったから今思うと少なからず心配していたのだろう。まあ、あの時はそんなことを考える前に雪と二人して怒ってしまった。
「「そんな訳無いじゃん!」」
それに多少驚いていたがすぐいつもの顔で笑いだした。
まあ、それからしばらくたった今、時々からかわれるようになった。
あれから喋り倒し少しテンションが上がっていたが学校が見えた途端、テンションがどん底まで落ちた。例えるならジェットコースターみたいな感じだ。上がる時はゆっくりなのに下がるときはバカじゃないの? と思うぐらいに速く突き落とされる。なんだろうね、あの乗り物。遊園地とか幽霊もジェットコースターも乗れないんで全く楽しめないよ。
ところでジェットコースターの中には二周目に突入ものもあるよね、でまた落とされるっていう。今がそんな感じ。
終業式も終わり、清々しい気分でいたら先生が何やら二つ折りにされた厚紙らしきものを持ってきた。で、それが何かを考えないよう頭が拒絶していたのに先生の一言が現実を叩きつけた。
「今から名前を呼ぶから順番に来い」
シーンと静まりかえったなか成績表が渡されていく。当然名前順で返しているのだから僕はすぐに呼ばれる。
「天野……」
おや? 先生の様子がおかしいぞ?
嫌な予感がする中、先生の前に立つといきなり怒鳴り声を上げた。
「なんだこの成績は! 高校生にもなってなんで遊んでいるんだ! いい加減勉強をしろ!!」
「いや、勉強もしてますよ……。怒鳴らないでください」
少しイラついて言い返してしまい、それが引き金となったのか更に声を大きくする。
「なんで教師である俺がお前にそんなことを言われなくちゃならんのだ!? そもそもお前は――」
その後、五分程怒鳴り声が教室に響き、僕はただ「すいません」と言い続けてなんとか終わった。
「すいませんね、天野君に怒鳴るな、などと命令されたのでちょっと時間を消費してしまいました。皆さんはこういうことがないように」
先生がそう言うと周りからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
イラつきは残っているが我慢して椅子に座りペラリと成績表を開いてみる。そこは二と三のオンパレードだった。あれ? そんなひどくなくね?
まあ、なんとなく不満に思ったが他の人はもっといいのだろうと気持ちを切り替える。




