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この世界で願いのために戦う僕の物語  作者: KOKOA
第五章 雪解け《クレスクント》
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34話 冥府の神

『我が名はハーデス。汝らの首を持って私に詫びろ』

 おいおい、死神の次は冥府の神かよ。

「詫びる? 詫びるのはそっちだろう?」

 正直、もう戦える力は残っていない。だが何もしないで死ぬぐらいなら最後に歯向かってみよう。

『繰り返す、首を持って私に詫びろ』

 ハーデスは虚ろな目でこちらを見ながら繰り返し言ってくる。

「首というより魂だろ? 今までも吉良に魂を取らせていたんだろうし」

 神話では、タナトスがハーデスに魂を捧げている、と書かれていた。

『汝らが詫びないのならば力ずくで魂を貰おう』

 ハーデスはそう言うと鎌を一振りした。その一振りで起きた風が勢い良くこちらに向かってくる。

 まずい。直感的にそう感じた僕は雪の前に立ちバリアを張る。しかし僕の力はほとんど残っておらずバリアは簡単に破け、風が僕に直撃する。直撃した所はバッサリと切れており、血が溢れかえる。

「ッ――――」

 声にならない声を上げながら、僕は倒れる。そこに雪が駆けつけてきて僕の傷口の上に手をかざし回復を開始した。

「おい、やめろ。敵の前だぞ……」

「だって血が! 私のせいで――」

 雪は涙を流しながら叫ぶ。

「雪のせいじゃない。ただ僕の力が足りなかっただけだ……」

 無理やり雪の手をどけ立ち上がる。――が、数秒も持たず崩れてしまう。思ったよりダメージを受けているみたいだ。

『これでお仕舞いだ!』

 ハーデスは大きく鎌を振り上げると叫んだ。

「ツ~~!」

 今度は飛んできた風を剣で受け止める。しかし予想以上に威力が強く、剣にヒビが入ってしまう。

 リーヴは僕の魂そのものだ。だからリーヴが折れたら僕も死んでしまう。つまり耐えられるのも後一回が限界ということだ。

「雪、逃げろ。僕が少しだけ時間を稼ぐ」

「いや! そんなの絶対に嫌だ!」

「このまんまだと二人共死ぬんだぞ!」

 今の状態で勝てる相手ではない。僕がもしインペリウムを吉良に使わずハーデスに使っていたら勝機はあったかもしれない。僕のミスだ。

 一人自分のミスを悔やんでいると雪が突然、不安そうに声を発する。

「ねえ、和真君は私のことを信じてくれる?」

 唐突な質問に驚く。

 僕は人間なんて信用しない。でも何事にも例外はある。

 だったら当然、答えなんて決まっている。

「もちろん」

 僕は自信を持って答えた。すると雪はニコリと笑い、毅然と言い放つ。

「だったら私も和真君の信じてくれた私を信じてみる」

 それは奇しくも僕がインペリウムを初めて使った時、自分を信じられない僕が自分を信じたとき思ったものに酷似していた。

「私の願い……。今まではなかった。でもやっと出来た。私の願いは私の友達を守ること!」

 雪はそう言い放ち、その後に一言だけ言葉を紡いだ。

「インペリウム!!」

 雪の髪は純白に染まり、瞳は赤くなっていた。そして剣は白いオーラを纏う。

 自分で気づかないのは仕方ないのかもしれないが結構見た目も変わっていたらしい。

『なっ――――!』

 ハーデスが息を詰まらせる。

『和真君、ちょっとだけ待っててね』

 雪はそう言うと剣を僕に軽く当てた。すると魂ごと回復されているのが分かった。能力は回復なのか?

 雪は剣を腰に構え一瞬でハーデスとの距離を詰めると、抜刀でもするかのように剣を振り抜いた。ハーデスはギリギリのところで反応したが――遅い。剣は一回しか振られたように見えなかったが、切り傷は何箇所にも及んでいた。

 移動速度は僕の方が速いのかもしれない。しかし、剣の速度は雪の方が速い。

 ハーデスは急いで傷を回復しようとする。――が、回復できない。

『無駄だよ、この剣で付けられた傷はこの剣でないと回復できない』

 能力は回復。間違ってはいない。しかし、逆に回復が出来ない傷も付けられるということだ。

『ならば全ての魂を吸い尽くしてくれるわ!」

 ハーデスは大きな魔法陣を足元に展開させた。次の瞬間にはハーデスが吉良の体から出ていた。

『もう魂は十分に補給できた。後はお前らの魂を貰うだけだ!』

 三メートルはある巨大な体躯、太い手足、肌は黒と紫の液体が混ざり合って動いているような色だ。形こそ人間だが見た目は全く違う何か。

 その何かの声が辺りに響き渡る。

『行くぞ!』

 ハーデスは手から黒い光球を出し、雪に投げつける。しかし、雪は軽く剣を振っただけで光球を消してしまう。

『なっ――。この星を破壊出来る程のエネルギーを持ったものだぞ!』

 ハーデスが嘘を言っているのではない。ただ雪が強くなりすぎてしまっただけだ。

 神と同等以上の力を使える能力、インペリウム。あまりにも強大すぎる力の前に全ては無力なものと化す。

『無駄……。もうあなたでは私に勝てない」

 雪はそう言うとハーデスに向かって一歩踏み出す。そして次の瞬間にはハーデスの後ろに立っており、ハーデスは無数の切り傷を刻まれていた。そこから黒い液体が溢れ出てくる。

『おのれ……。おのれ~~!!』

 ハーデスは雪に向き直り飛びかかる。しかし攻撃は雪に届くことなくハーデスは空中でバラバラになり煙となって消えてしまった。

 

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