15話 テスト前
眠っていた脳が少しずつ覚醒し始める。理由は窓に何かが当たるコツンコツンという音のせいだ。……幽霊とかじゃないよね?
カーテンを開けると髪の長い――雪がいた。
「何かようか?」
「まあね、上がってもいい?」
「……いいけど」
「いいってよ士希君」
雪の手を掴んでぶら下がっている士希に言う。それを僕は見ながら少し不安になっていた。何を言いに来たのかと。決して落ちないのかなとか心配しているわけではない。
「で、なんの用なんだ?」
雪と士希が靴を脱いで入ってくると同時に聞く。
「いや大したことじゃないんだけど、何も言わずに和真が行っちゃうから。
「いや、あのまんまでいてもしょうがないかと思って。てか俺のこと嫌いになってないのか?」
「ううん、約束したじゃん嫌いにならないって」
「そうだろ和真」
「俺のせいであいつは虐められたんだぞ!」
「気にするな……とは言えないよ。それでも約束したから。それにもう二度とそんなことをしないって分かってるから」
「それで、和真君はどうしたいの?」
「どうって何が?」
「謝りたいの? 謝りたくないの?」
「…………」
すぐには答えられなかった。
「和真、僕達はお前の意見を尊重するよ」
「僕は……謝りたい」
「じゃあ、決まりだ明日誤りに行こう」
「中学の時と昨日はごめん!」
寺崎に昨日のファミレスに来てもらい謝る。
「…………」
「許してもらえないのは分かってる。それでもごめん!」
「……ハァ。俺もなんだ……その……悪かったよ」
「え?」
「いや、だってお前も俺のせいで虐められただろ、だからごめん」
「寺崎……」
「でも友達には戻れない」
「それは……分かってる」
「ならもうこのことは忘れようぜお互いにな……。それだけだ、じゃあな」
「ああ、じゃあな」
ふぅ、緊張した~。
「お疲れ和真」
「おう」
「これからユグドラシル行かない?」
「ああ、いいよ」
そう言うと席を立ち歩き始める二人それに僕もついていく。
ユグドラシルにつくとなんだか安心できる。
「じゃあ、図書館にでも行って勉強する?」
「ああ、いいよ僕も読みたい本あるし」
「和真テスト明日だぞ」
士希が苦笑しながら言ってくる
「いや、今日勉強道具持ってきてないんだよ」
「じゃあ、私の使う?」
「いいの?」
「もちろん!」
じゃあ勉強でもするか。
持ち貸してもらった教科書とルーズリーフを広げる。更に貸してもらったシャーペンでひたすら英単語を書きまくる。とにかく英語がやばい。スキエンティアさえ使えれば古代文字も読めるのに。
カリカリとしばらく書いていると首が痛んでくる。ハァ疲れてきたな。
チラリと目を上に向けると二人は黙々と勉強をしていた。
入ったばかりの時にやらされた模擬試験では士希が学年一位、雪が学年三位だったらしい。ちなみに僕は六十位。でも一四五名中六〇位は普通だと思う。うん普通。
ボーっと二人を見ていると雪と目があった。
「どうかした?」
クリッと首をかしげて聞いてくる。
「いや、すごい集中してるなと思ってね」
「そうかな?」
どうやら雪だけでなく士希の集中力まで切らしてしまったらしい。なんだか申し訳ないことをした。
「そういえば今日はありがとな」
「どうしたんだよ急に」
「いや、まだお礼を言ってなかったなと思って」
「ううん、お礼なんかいいよ、それよりまたなんかあったら言ってね」
「ああ、ありがとう。二人もなんかあったら僕に言ってくれよ」
「「ありがとう」」
なんだかこっちが逆に感謝されてしまった。
そしてそれからしばらく勉強した後解散となった。
「ただいまー」
帰ってくる反応はない。どうやらまだ帰ってきてないらしい。
自分の部屋に行くとベッドが目に入る。今すぐにダイブしたい。が、しかし今は勉強だ。今回は今までと違って点を取らなければならない。理由はあの二人に勉強を教えてもらったからだ。これで低い点なんかとったら合わせる顔がない。だから勉強する。
カリカリとしばらくの間ペンの音だけが聞こえる。だがその静かな空気をドアの音が破った。
「ただいま~」
声からするに咲だ。ダダダダッと階段を駆け上がる音がして壁の向こう側から扉の閉まる音がする。
うるせ~。本当にうるさい。気を取り直して勉強を始めると今度は大音量でテレビをつけ始めた。
うちの親はこういう変なところで太っ腹なのだ。まあ、僕にテレビをくれたのはリビングに来るなということらしいが。
流石に集中できなくなってきたのでイヤホンをして音楽をかけながら勉強をすることにした。くそーテストは明日なのに。
それからもテレビの音は絶え間なく響きけっきょく止んだのは僕の寝る時間になってからだった。
朝日がまた登ってしまった。
今日はテストだ。重い足を引きずって学校に向かう。
学校に着くともうすでに全員揃っていて勉強を始めていた。
「おはよう和真くん」
「おはよう」
雪が寄ってくる。
「いけそうか和真」
「振り向くと後ろには士希がいた。
「まあ、なんとか」
なんとかなればいいなと言おうとしてやめた。
「おい、席に付け」
話していると先生の怒鳴り声が響いた。
それに大人しく従い席に着くとショートホームルームが始まった。そして五分程たちショートホームルームは終わった。いよいよだ。
「よし、ではテストを開始する」




