13話 ドリンクバー
あれから世界が戻るのを確認し解散となったが眠れずにいた。なぜならあの夢が忘れられないからだ。どうも僕はあの夢がただの夢じゃない気がする。
そしてもう一つ眠れない理由があった。子供の時言われた一言だ。
子供の頃「あんたの親は本当は私たちじゃないのよ」と母に言われたことがある。その時の衝撃ときたら子供の頃「サンタさんはいないのよ」と言われたときより大きかった。ていうか子供にそういうこと言っちゃダメでしょ。
まあ、それはさておき夢の方が今は重大だ。しかしなにかしなければと思っているうちに眠気が襲って来るのだった。だが寝るわけにはいかないどうしてもこの夢が引っかかるのだ。
「しょうがないインペリウムの訓練でもするか」
この訓練が役に立つとは正直思えないが何もしないよりマシだろう。
「インペリウム」
呪文を唱え魔力を注ぐ。大体の魔法はこれで発動できるのだがこればかりはそう簡単にはいかない。そうこうしているうちに朝になってしまった。
睡眠不足でフラフラするがユグドラシルに行かなければなるまい。なぜなら今日も勉強会の約束をしているからだ。
「おはよう和真君すごいクマだけど大丈夫?」
「おはよう、雪、士希」
なぜ士希も呼び捨てなのかというとあの夜わざわざ通信してきて僕も呼び捨てでと言ってきたからだ。
「今日は短めにして午後は休もう」
おお、士希ありがとう!
まあ、とりあえず午後までは頑張りますか!
「はい、お疲れ様でした」
士希が終を告げる。はぁ~終わった~。
なんとか乗りっきたがもう眠気が限界まで来ていた。
「和真、回復機使うか?」
「回復期ってあの長方形の箱か? あれって眠気回復できるの?」
「できるよ。それにスキエンティアで回復したら多少魂にダメージ入るし」
「え!? スキエンティアって使うだけでダメージになるの!?」
「まあ、ほんの少しだけね」
おいおい、初耳ですよそれ。
「まあ、いいか。とりあえず使わせてもらうね」
そう言い残して休憩室から箱のある部屋へと向かう。その道の途中何回かユグドラシルで働いている人に話しかけられたが名前が分からなくて困った。
にしてもやたらと広いよなここ……。部屋についたのは休憩室を出てから五分ぐらい経った頃だった。
とりあえず回復機に入る。すると「Soul recovery」という文字が箱全体に浮かび上がり青い光が箱を満たす。しばらくたつと文字が「Soul recovery」から「Body recovery」に変わり今度は赤い光が箱を満たした。
「おはよう和真君」
いつの間にか間にか眠っていたらしい。雪に声をかけられて目が覚める。
「おはよう」
挨拶を返しつつ起き上がり携帯を取り出し時刻を確認する。時刻は十二時だった。
「これから皆でどっか食いに行かない?」
「いいね、どこ食べに行く?」
「そうだな……」
「お、和真目が覚めたか、今度からはマメに回復機使えよ」
どうやら疲れていたのは寝不足の性だけではないらしい。じゃなくて――
「なあ、これからどっか食いに行かない?」
「どこ食いに行く?」
「ん~、このへんだとサイザかな」
そんなわけでサイザに行くことになった。
「えーと、ドリンクバー三つにポテト一つ、マグロ丼三つ、シーザーサラダ一つ、以上で」
「かしこまりました、ご注文を繰り返させていただきます。ドリンクバーお一つにマグロ丼が三つ、シザーサラダがお一つでお間違いないでしょうか?」
「はい」
士希が注文を終えるとお店の人が下がっていったのでドリンクバーを取りに行く。
「皆飲み物何がいい?」
「ありがとう、私は紅茶で」
「サンキュー僕はコーラで」
「はいよー」
二人の注文を聞きドリンクバーの方へ向かう。
「あ、天野じゃーん」
突然声をかけられる。振り返るとそこには会いたくない人物がいた。
「よう、寺崎」
振り返った先にいたのは中学の頃同じクラスだった寺崎涼太だった。
「おーい田野、天野だぜ」
嘲り混じりの声で一緒に来ていた仲間を呼ぶ。呼ばれて出てきたのはまたも同じクラスだった田野友大だった。
「お、天野久しぶりーまさか一人~」
ゲラゲラと笑いながら声をかけてくる。
「いや、友達と来てるよ」
素っ気無く返す。こいつらと関わるとろくな目に遭わないし飲み物とって早く退散しよう。
「じゃ、もう行くから」
「おい、待てよ~」
田野が止めてくる。
「お前ほんと変わってないのな」
寺崎は呆れたように僕のすぐ近くまで寄ってくる。どうしたもんかね……。中学の時こいつらにいじめられてたから若干トラウマスイッチ入っちゃてるし……。
「何か用?」
だが強がって言葉を強めに発する。だけどこれは間違いだったらしい。
「何お前? うざいんだけど」
寺崎がこめかみをピクピクさせながら言って来る。殴る一歩手前みたいな感じだ。ちょっとしくじったかなと思っていると寺崎達の後ろから声がかかる。
「和真どうかした?」
目をそちらに向けると士希と雪が心配そうな顔をしてこっちに歩いてきていた。




