表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
94/198

第七話 ヴァルタイユの異能

 オーラスが展望台で調べた結果、アクトの言う『塔』は遥か西にあったらしい。

 馬車を使って約2週間、3人はただひたすらに西へ進み続けた。


「…あった」


 そしてついに辿り着いた。

 頂上が雲に隠れていて、高さがわからないほど高い塔だ。


「ようやくアクトに会えるんだ」


「それじゃあ入ろうか」


 緊張に拳を握るアレクを尻目に、オーラスは塔の扉を開けた。


「おや」


 塔の内部は何もない…いや、正確には螺旋階段しかなかった。

 塔の壁に沿うようにして、階段は遥か上まで続いている。


「アレク、『フライ』は使えるようになりましたよね」


「一応」


「なら飛行魔法で一気に上まで登りましょう」


 そう言って、エマは飛んでいった。


「僕たちも行こう」


 オーラスの言葉に頷き、アレクも飛んだ。

 目指すは頂点、アクトの場所だ。



 ※



「それで、頂点はどこなんですか?」


「階段を探そう、まさか途中で螺旋階段が終わってるなんてね」


 螺旋階段を登りきり、3人は今謎の部屋で迷子になっている。


 もしかしたら本棚の後ろに隠し通路があるのではないかと、アレクは本棚をどかした。

 しかし何もない。あるのは石の壁だけだ。


「二人とも、これを見てくれ」


 オーラスの声に振り向き、アレクとエマは彼が手に持っているものを見た。


 日記だ。表紙には『塔』とだけ書いてある。


「読んでみる?アレク」


「…ああ」


 もしかしたら、これはアクトが書いたのかもしれない。

 ならば、アクトが伝えたい真実というのがここに書いてある可能性がある。


 そう思い、アレクは日記を開いた。


「…『塔』を得た者よ、私はエドワード・アハラル・クライス、デリア様の配下だ。『塔』の概要は分かるまい。何故なら君より以前の異能者が、『塔』の能力を明かさなかったからだ。そして君も、能力を明かさないことを誓ってほしい」


「それ日記なの?僕の記憶では、日記って日々の記録を記したものだったような気がするんだけど」


 確かにそうだ。この本は日記ではない。

 では何か、それはもちろん『塔』に対するメッセージのためだろう。


「『塔』の能力は、相手の希望を絶望に落としただけ強くなれるというものだ。私たち『塔』の目的は、世界を救うこと。そして最強を身につけ、覇王イグリダの後を継ぎ世界を統一する。そのために君はヴァルタイユを殺し、絶望を喰らって最強になり、覇王の後を継がねばならない…。…えと、ヴァルタイユって誰?」


「クアランドで最近危険人物として登録された紳士服の男です。各地に姿を現し、虐殺の限りを尽くしています」


「俺たちの知らない人同士の争いみたいだな…。コホン、力が満ちていない時、ヴァルタイユとは絶対に戦ってはならない。彼の異能を対策するには、彼の想定をはるかに上回る力を身につけなければならないのだ。奴の異能を忘れるな。ヴァルタイユの異能『運命』の能力は……。……破れてる」


 全く意味不明だ。

 何故アクトはこの塔にアレクを呼んだのだろう。


 とにかくアクトを探さなければ。


「あの、一つ可能性がありますが…」


 言いづらそうにエマは呟いた。


「アクトが、『塔』である可能性は…」


 直後、視界が暗転した。



 ※



 体が重い。思い通りに動かない。

 起き上がれないのではない、すでにアレクの体は起きている。


 魔法の鎖に縛られているのだ。

 その魔法の効果だろうか、アレクの魔力は失われてしまった。


「邪悪な魔法使いを捕らえるために作った魔法らしいが、今じゃ悪人の方がこの魔法を有効活用している。皮肉な話だな」


 そういうと、桃色の髪の青年は口元を歪めて笑った。


「教えてやるよ、真実ってやつを。お前に近づいたのも、育ててやったのも、ここに連れてきたのも、全部お前の絶望をもらうためにやったことだ、ってな」


 アレクは慌てて周囲を見た。


 塔の屋上だ。

 アレクは中央で鎖に縛られ、アクトは端にいる。


 そしてアクトの足元では、同じく鎖に縛られたエマとオーラスがいる。


「『女教皇』は戦闘じゃ役立たねえ、『教皇』も魔力奪っちまえばどうってことねえ、アレク、お前が連れてきた助っ人は随分弱いんだな」


「…アクト…その二人をどうするつもりだ」


「ははは、殺す。お前の目の前でここから突き落とす」


 平気な顔でそう言ってのけるアクトに、3人は顔を青ざめさせた。

 そして同時に、この男のしたかったことを理解した。


 おそらくアクトは、いつでも絶望を取り込める状態を各地で作っていたのだろう。

 だからアレクの元にあまり帰らなかったのだ。

 そしてアレクを自分の元に置いておくことに限界を感じていた。

 そこでエマとオーラスの姿を確認し、二人と接触させ、ここまで連れてきた。


「さて、どうすればお前の絶望が増えるかな」


「…やめろ」


「まあいいか、どうせお前……殺せば絶望するだろ」


 そう言って、アクトは二人の魔導兵に向き直った。


「別に僕だけ見逃してくれてもいいんだけど…」


「いやだね。お前は早めに殺しとかないとまずい」


 困ったように笑うオーラスに、アクトは顔を顰めた。

 おそらく二人が思っていたよりも絶望しなかったからだろう。


「最近多いんだよ、死に際で絶望しないやつが」


 ぽりぽりと頭をかきながらアクトは言った。


「何でだ?悔いはねえのか?」


「いえ、私たちはまだ死にたくありません。残した研究も数多くあります」


「じゃあ絶望しろよ。今から死ぬんだぞ」


 苛立ちを感じたのか、アクトは少し声のトーンを落とした。


 だがエマとオーラスは、疑う余地もない信頼をアレクに向けてきた。


「信じていますから」

「ま、たった何週間かの付き合いだけどね」


「ああ」


 そうだ、アレクは絶望してやらない。

 練習してきた技があるのだ。


 学生時代にエマがずっと近くで見てきた技、それを今解放する。


(力を貸してくれ、母さん———ッ)


「『魔力解放』———ッッッ!!!」


 直後、紫色の魔力が渦巻いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ