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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
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第五話 信徒と帝

 魔物には、いくつかの種類がある。


 まずは、通常の自然環境で誕生する普通の魔物。

 これらは単体の力が弱いため、集団で生活していることが多い。

 ただし魔獣と呼ばれる個体は強力なため、まともに戦える人が3人以上必要だ。


 次に上位魔物、特定の場所を拠点として周囲に大きな影響を及ぼす魔物だ。

 洞窟に生息する宝石蟻や、竜国ドラグニカに生息するドラゴンなどがその例である。

 これには騎士や魔導兵を数人派遣する必要がある。


 そして最後に、災害魔物。

 これらは海、空、陸にそれぞれ一体ずつ存在し、何かをきっかけに目覚める。

 そしてそこら一帯を浄土と化すまで破壊し尽くすのだ。

 騎士団長や魔導兵団長、場合によっては剣聖が動かなければならない。


 クラーケンはその中で、海の災害魔物に分類される。

 現在魔導兵最高戦力であるエマとオーラスは適任だろう。


「災害魔物は全て、本体と分体があります。本体は強力ですから、先に分体を処理してから本体を弱らせ、トドメを刺すというのが基本の戦い方です」


 全速力で水の上を走る機械の船の上でそう言って、エマは前方に見える青色の結界を指さした。

 北の海の中心にあり、禍々しい魔力を漂わせている結界は、ドーム状に展開されている。


「結界の中心に本体があり、クラーケンの場合は結界の壁に張り付くようにして8体の分体がいます。まずはそれらを倒しましょう」


「…何か注意すべき点は?」


「分体それぞれが規格外の強さを持っています。上級魔法が使えるようになったからとはいえ、アレクは絶対に私たちから離れないようにしてください。まあ、多分本体もすぐに終わると思いますが」


 北の海にたどり着くのに二日、アレクはその間に上級魔法を習得した。

 流石に成長が早すぎだとエマは言っていたが、アレクの上級魔法は最初からかなりの精度だった。


 それでも、アレク一人で分体一体すら倒せないというのか。


「大丈夫だよ、君もすぐに強くなるはずさ。だって君、異能の力を感じるから」


「……!」


 オーラスが笑いかけた直後、3人を乗せた船は結界の中に突入した。


 外から見た時よりもよほど暗く、それはまるで深海を想像させる。

 そしてその中央に、敵はいた。


 どす黒い紫の体から8本の触手を結界の壁に伸ばして貼り付けたこの怪物こそが、災害魔物クラーケンだろう。


「さて、始めましょう」


 白衣を脱ぎ、スーツだけになったエマは、キャリーケースを開けた。

 そしてケースの中にある装置を起動すると、その装置はやがてエマの背に合わせて回転し、巨大な銃口が彼女の周りに展開された。


「『白界儀』———ッッッ!!!」


 エマがそう叫んだ瞬間、エマの背後の銃口から純白の極太レーザーが放たれた。

 超高濃度の魔力からなるそのレーザーは、近くにあった触手を跡形もなく消し去った。


 魔法科学の結晶、『神機光背アウレオラ』。

 4つの巨大な銃口から光属性と氷属性の上位魔法を混合させたレーザーを放つことが可能。

 機械の回路はすでに完成されたものなので、魔力運搬の精度は完璧だ。これこそが魔法科学の強みである。


「私の異能は『女教皇』、人が行う()()()という行為を飛ばすことができます。そのためどこにどう部品を配置すれば完璧な魔法が放てるか、全て分かるんです」


 考えることを飛ばす、それはつまり、長考すべき問題を一瞬で解決できるということだ。


 エマの魔法の教え方が完璧だったのも、どうすればアレクが魔法を理解できるのかという長考を一瞬でとばしたからなのだろう。


 魔法使いは長考の末に魔法を完成させる。

 どんな天才であっても、試行錯誤は必ず通る道だ。


 その過程をこの魔女は飛ばすことが出来る。

 一体どれほどの魔法使いが、彼女の異能を妬んだことか。


「ほら、僕のも見てよ」


 オーラスが二人の前に立ち、両手を広げて天を見上げた。


「神よ」


 うっとりした表情でオーラスがつぶやいた途端、天から光の刃が無数に飛んできた。


 その全ての刃が分体に直撃し、跡形もなく消滅した。


「『教皇』、神に祈れば神が超高威力の光の刃を敵に放ってくれる。威力の計算式は、僕の信仰心から相手の神に対する負の感情を引いたものだ。まあ相手の負の感情がよほど強くない限り、防げはしないけどね」


 エマの『女教皇』とは違い、戦闘専門の超火力型能力だ。

 相手が神を嫌ってさえいなければ、無条件で対象を始末できる。おそらくトップクラスの力を持つ異能だろう。


 あとは本体のみ、エマとオーラスは武器を構えてクラーケンに向き直った。


 だがそこに、クラーケンはいなかった。


「アレク!」


 エマはアレクの後ろを見ていた。


 闇の根源の活性化により、魔物が強化されていたのだ。

 だから今、アレクの後ろにクラーケンが回り込めた。


 エマの砲撃も、オーラスの斬撃も間に合わない。

 アレクは間違いなく、クラーケンに喰われるだろう。


「くっ、『イヴィルストーム』!」


 この場を切り抜けるには、アレク自身の力でクラーケンの攻撃を防がなければならない。

 アレクは渾身の力を込めて、闇の中級魔法を放った。


 だが魔法は、放たれなかった。


「は?」


 代わりに、目の前の魔物はただの肉塊となっていた。

《キャラクター紹介》


○エマ・アルバ

魔法科学部門の部長。神機光背を操り戦う。

『女教皇』の異能を持つ。


○オーラス・プラーマー

魔導兵遊撃兵長で、魔導兵最強クラスの魔法使い。

『教皇』の異能を持つ。

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