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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第三章 禁忌の魔法
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幕間 武力

「待て、それは誤解だリーフ。武器は何かを傷つけるための道具で、その効果が一番効率がいいんだ。何も君に人を傷つけるような人間になって欲しいわけじゃない」


「でも、剣を成長させる過程ではそうならなければならないんでしょう?どうやら僕とあなたでは、ものの考え方が根本的に違っているようですね」


 慌てて弁明するエイルスに、リーフは歯軋りしながら言った。


 自分は最初、路地でただ魔法の芸を見せるだけの運命だと思っていた。

 しかし、途中で魔法使いとなる運命だということを知った。


 だが、結局リーフの居場所は路地だったらしい。

 ディオンがいなくなり、教師の考え方は戦争前提。


「もうここにいる予定はない」


 そういうと、リーフは早足で結界の外に出ようとした。


「…リーフ!」


 珍しく、ルイネが大きな声を出した。


 リーフの想像ではあるが、ルイネはリーフを心の拠り所にしている。

 リーフがここを去れば、彼女はどうなってしまうだろうか。


 一瞬足が止まったが、やはり意思が弱まることはなかった。


 直後、リーフの目の前に人が飛来した。


 その衝撃波でリーフは吹っ飛び、壁に叩きつけられた。


「ハデスがさ、お前らに飽きたから殺していいよって」


 桃色の髪の少年アクトは、目を輝かせていった。


「まず最初に教師を殺せば、お前たちの絶望はどれだけのものになるかな?」


 そう言った瞬間、アクトは一瞬でエイルスの背後に回り込み、短剣で背部を貫いた。



 ※



 血反吐を吐いて倒れるエイルスを尻目に、アクトは正面の生徒たちを見た。

 一人、黒髪の少年を除いて、絶望している者はいなかった。


 アクトは歯軋りした。

 ここ数ヶ月、全く餌にありつけていない。

 今度森にでも行って、冒険者を遭難させようか。


「そんなしょうもないことを俺にさせようってのか?揃いも揃って…」


「『イヴィルストーム!』」


 アクトが話している途中に、マレンは闇属性の中級魔法を放った。

 それを不機嫌そうに交わし、アクトはマレンの前に移動した。


「はっ!自分勇敢ですって感じか?真っ先に死にたいようだな」


「あぅ…」


 アクトは短剣を天に掲げ、それを振り下ろそうとした。


 だがそれは、背後から放たれた巨大な闇の球体によって阻止された。


「『死灰儀ゲヘナ』!?まさか、誰が!」


 慌てて後ろを振り向くと、先ほどまで倒れていたはずのエイルスが黄金に輝く杖をこちらに向けていた。

 そのエイルスの姿も別人のようだった。


 目の色は変わらず大海のような澄んだ青、しかし長く伸ばしていた黒髪は、目と同じ色に変色していた。

 目元には青い紋様が浮かび上がり、胸に空いた穴からは眩い青の光が溢れ出している。


「ならリーフ、こうしよう」


 エイルスはリーフを見て言った。

 この女の眼中には、もはや自分はいないというのか。

 アクトはエイルスに向けて『エンジェルフォース』と『イヴィルストーム』を同時に放った。


「天風剣が全く成長しなかった場合、それは君が平和を守れているということになる。しかしもしもハデスが平和を脅かそうとするのならば、その剣に闇の者の血を吸収させ、世界を守ればいい」


 その直後、アクトの攻撃を一瞬で無効化した。



 ※



 前に、ディオンが言っていたような気がする。

 エイルスが強い理由は、変身にあると。


『魔力解放』、それが彼女のオリジナル魔法。

 どういう魔法陣でそうなっているのかは知らないが、変身後には驚きの性能があるのだという。


 なんでも、自身の傷口から体内と体外の魔力を共鳴させ、空気中に存在する魔力をまるで自身の魔力のように使えるのだとか。

 そして上級魔法の準備段階を飛ばせる、とも。


「『シールドオーラ』、『海荒儀アルディーヴァ』」


 まず生徒たちの前に無数の『シールドオーラ』を張り、水の上級魔法を放った。

 その魔法はまさに洪水、周囲に存在するあらゆるものを流し出す。


 アクトは『シールドオーラ』を張って抵抗しているが、彼の魔法の精度はあまり良いものではなかった。

 しかし彼は何を見つけたのか。口元に笑みを浮かべて言った。


「へっ、なるほど」


 アクトは学校の屋根に飛び乗り、エイルスに指を刺した。


「お前、心に闇がいるな。俺たちの仲間になれよ」


 そんなことを言った。


 リーフは驚いてエイルスを見たが、彼女は動じずにいった。


「リーフ、覚えておけ。闇の者に耳を貸してはならない」


 そういい、『死灰儀ゲヘナ』を放った。

 アクトは顔を引き攣らせたが、そのまま『フライ』でどこかへ飛んでいってしまった。


 生徒たちが歓声をあげてエイルスに近づくと、彼女のの姿が傾き、そのまま倒れてしまった。


「先生!」



 ※



 エイルスが起きたのを確認すると、リーフは急いでお粥を持ってきた。

 それを机の上に置くと、頭を下げた。


「ごめんなさい、僕が間違っていました」


「いや、いい。普通はああなる」


 魔法に限らず、リーフは武力というものが嫌いだった。

 武力があれば争いが起き、その武力の行使によって人が死ぬ。

 だからエイルスの言った言葉に反感を覚えた。


 しかし違った。


 武力とは、守る力。

 凶悪な魔物や犯罪者から大切なものを守る力だ。

 だからウエラルドでは、守る力がより大きいものが上に立てるのだろう。


「また、僕に魔法を教えてもらえるでしょうか」


「私にできることなら」


 その言葉にリーフは顔を輝かせ、もう一度頭を下げた。


「ご指導よろしくお願いします!」

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