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1学期終了の物語

 7月24日(木)


 このゲームを始めて早3カ月が経過し、今日は1学期終了の終業式である。いやはや長かったような短かったようなそんな感じの1学期だった。


 正直、ゲームとしてはまだまだ続くわけだし、夏の予選もまだまだ終わらない。だけどこういう節目にはいろいろと考えさせられる。


「おはよう零君」

「ああ。おはよう」


 登校中に美咲と出会った。いつもこんなことはないため非常に珍しい。基本的にいつも1人で登下校してるからな。だからと言って友達がいないとかそんなんじゃない。単純に家が遠いとか時間が合わないとかそんな理由だ。


「ああ、いよいよだね」

「何が?」

「夏休みもそうだけど成績が帰ってくるの」


 ああ、そういうことか。おそらくほとんどの人は憂鬱だろうな。俺も現実世界では憂鬱だった。だけど今回ばかりは帰ってくるのが楽しみで仕方がない。


 なぜなら問題のレベルが低いため、俺達プレイヤーは満点続出だからな。それに授業中などは真面目にしてるため、成績面での心配事は皆無だからな。


 それに毎回赤点逃れるのでぎりぎりだった体育もまあまあな成績を残している。それにこのゲーム内では野球部の期待の新星だからな。必然的に好感度は上がる。


「まあ、俺達は心配しなくても大丈夫だろう」

「だね。それで零君は夏のお祭りに行くの?」

「お祭り?だんじりとか?」

「いやいやだんじりは10月でしょ」

「そっか……。じゃあ祭りって何?」


 本気で分からない。美咲はいったい何を言っているのだろうか?


「本当に分からない?」


 美咲は不機嫌そうに聞いてくる。俺が答えられないことにここまで腹を立てるとはオタク関係か。それで夏のお祭りと言うと1つしか思いつかない。


「もしかして東京で行われるアレか?」

「そう。アレ。やっとわかったみたいだね」


 よくできましたと言わんばかりの笑顔を向けてくる。ああ、可愛いな。けどそう言うの考えてなかったな。


「というかそもそも甲子園に出場しちゃったら、行けないんだよな」

「じゃあ、負けて!次の試合で負けて!」


 ものすごい勢いで詰め寄ってくる。そんなにアレに行きたいのか。


「とは言われてもな……。そもそも俺1人のせいで負けられるわけないだろう。3年生は最後の大会だしな」


 それに次の試合がどうなるかは分からないけど、出場できなきゃ意味ないんだよな。俺はまだレギュラー確約じゃないし。ベンチメンバーだし。


「う~そっかぁ。だったら負けるように祈っておくしかないね」


 嫌なことを祈るもんだな。俺としては今のメンバーなら甲子園優勝も夢ではないと思っているので、負けたくはない。来年とか再来年に有望な新人が入ってくるとも限らないしな。


 一応、うちも強豪と言うことで入部希望者は多いがやっぱり他の強豪校からのスカウトとかあるもんな。


「ねえ、そう言えばどこかに出かける用事とかないの?」

「と、いうと?」

「例えば海とか山とか旅行に行かないの?」

「そうだな。海くらいにはいきたいと思ってるけどやっぱ甲子園がなぁ」


 正直海なんて来年でも再来年でもいいんだ。俺は今は甲子園に行きたいんだ。


「う~やっぱそうなるんだね……」


 美咲はわざとらしく肩を落としとぼとぼ歩いている。


「別に遊びに行けないわけじゃないだろう?予選が終わって仮に勝ち抜けたとしても、甲子園が始まるまで少し時間があるわけだし、俺が宿題を頑張れば甲子園終わってからでも遊びに行けるだろ?」

「宿題の存在忘れてた………」

「大丈夫だって。宿題なんて今日からっておけば普通に終わるから」

「だよね!休みは明日からなんだもんね。今までに大量の宿題配られててそれ一切やってないけど大丈夫だよね」

「大丈夫さ。そのかわり真面目にやらなきゃ駄目だけど」

「大丈夫だよ。どうせ零君が試合の日は暇だから」


 美咲を宿題をする決心がついたようだ。これで夏休み最終日に慌てて宿題をやるというある意味お約束なイベントを回避できそうだ。


「おはようですわ」


 正門から中に入り、教室へ向かう途中で森に出会った。


「おはよう。それじゃ」

「ちょっと待ってくださいまし!なんでそうやって無視しようとするんですの!?」

「俺、終業式のことで生徒会室に用があるから」


 今まで生徒会役員なんてくそくらえとか思ってたけど、今日ばかりは感謝だな。


「では私も行きますわ」

「なんでだよ……」

「私も行く。恵ちゃんに用あるし」

「美咲まで……」


 俺は小さくため息をつきながら2人の同行を許した。まあ、会長も校長もこういうのにうるさく言う人じゃないから大丈夫だろう。


 生徒会室に入ると恵、会長、校長、天野、小林の5人が待っていた。特に何をするでもなく普通に雑談をしていたようだ。もしかして俺を待っていたのだろうか?


「あ、逢坂君。おはようございます」

「会長。おはよう」

「零。相変わらずね」

「何がだよ。一応指定された時間よりかは早く来たぞ」


 現在は8時10分。指定されたのは15分なので安定の5分前行動だ。


「ふん。そんなのは当たり前だろう」

「なんでテメェがいるんだよ?」

「副会長だからに決まってるだろうが」


 まったくなんでこんな奴が生徒会役員なんだろうか?全く持って意味不明である。今すぐリコール宣言したい。まあ、文句を言っていても仕方がないのでさっさと終わらせよう。


「君たちは相変わらずだね」

「校長も相変わらずちっちゃいですね」

「逢坂君。それは私に向けた開戦の合図ととってもいいんだね?」

「いやいや、そんなつもりはないですよ。俺と天野を一括りにしたことに対する報復ですよ」


 天野を除く他のみんなは苦笑い状態だ。それで馬鹿にされた天野本人はものすごい形相でこっちを睨んでいた。まあ、全然怖くないんだけども、単純にあいつの株が落ちそうなだけな顔だけども。


「校長先生も零もその辺にしておいてよ。それでさっさと打ち合わせに入るわよ」


 恵が仲介に入ってようやく俺と天野と校長のにらみ合いが終わる。こういうのに物応じずずけずけと意見を言える恵は本当にすごいと思う。


 多分、美咲や森にとっては英雄のように映ってるのではないかと思われる。


「いつもこんな感じなんですの?」

「そうだね。あの2人が顔を合わせるといつもそうだね」


 恵がもう慣れたといった様子で森に説明を行っている。随分と余裕があるんだな。


「それでは気を取り直しまして、終業式の最終確認を行いたいと思います」


 会長がホワイトボードを引っ張り出し、いろいろなことを書きこんでいく。


「私達生徒会役員は壇上の横で待機することになります。スピーチなどは全て私の役目ですのでその辺は省略しましょう」


 つまりは俺としては壇上の横で立ち続けとけばいいわけだ。他の生徒は座ってるだけに地味にしんどい仕事だな。


「で、問題は式ではなく式が終わった後の片づけですね。生徒会役員は全員参加が基本となっていますから」


 とは言っても片付けなんてマイクとかを片付けて掃除する程度だろ?全員いるのか?そもそも俺はいらないんじゃないだろうか。


「片付けって何をするんですか?」

「恵さん。良い質問です。2,3年は既に知っていることですが1年生は初めてですからね。片付けと言っても主に掃除だけです。ただ夏休みの間、ほとんど使われませんので少し大掛かりな大掃除になります」

「え、バスケ部とか使わないんですか?」


 他にもバレー部とか卓球部とか体育館を使いそうなものだけど。少なくとも三上から卓球部は夏休みも活動すると聞いてたんだけどな。


「この時期、部活動は主に対外試合になりますからね。バスケ部やバレー部はほとんど使わないですね。卓球部も体育館全てを使うようなことはないそうですから、小体育館の方で練習するようですよ」


 そう言えばあったな。多分今まで1度も触れられたことのない施設だけど。


 ともかく説明が終わり、俺達も教室へ戻った。生徒会役員が体育館に行くのは他の生徒と同じで良いそうなので、時間までゆっくりしておくことにしよう。


 ◇


「以上で終業式を終了する」


 はい、安定のスキップで一瞬で式が終わった。正直、真面目に式に参加してられない。校長のクソ長い話とか聞きたくないもん。まあ、校長ではなく幼女と思い込めばまだ耐えられないこともないが。


 その後、片付けと言う名の掃除を終わらせて、終礼へ臨んだ。この辺はいつもと変わらず熱中症には気を付けろよぐらいのものだった。


 そして俺達プレイヤーは終礼後に校舎裏に集まっていた。


「さて、とりあえず今日で1学期が終了した。各々の感想を聞かせてくれ」


 まずは愛さんが切り出した。


「そうだな。正直、甲子園も終わってないですし決断を出すには早いんじゃないかと思う」

「俺もそう思う。こっちもインターハイまだ終わってないし」

「僕もたった3カ月だけで決めつけるのはぁ。ただ乾燥なら普通に面白かったけど」

「妥当なところだな」


 俺、翔、三上、社長の男性陣はほぼ同意見だ。たった3カ月で判断は出来ない。まあ、いろいろなイベントがまだまだあるからな。


「3カ月だけだけど楽しかったよね」

「なんでそんな言い方なんですか?まだまだ楽しめるでしょう」

「そうだね。私もそう思うよ」


 恵、奏ちゃん、愛さんの3人は普通に面白いって考えだ。もっとこのゲームを続けるという考えは俺達男性陣と同じ考えのようだが。


「では下手に設定は代えずこのままやるということで良いかな?」


 愛さんがあたりを見渡しながら聞く。俺達は一斉に頷いた。ファンタジー的なのもいいけどゲーム内で普通の学園生活と言うのも案外悪くない。


「それじゃ、家に帰るか」

「あれ?部活は?」

「今日は午後からだ」


 翔が真っ先に帰ると言い出し、みんなもそれに倣って帰路へ着く。俺も明日からの夏休みのために少しでも宿題を消化しておこうと思い帰路についた。


 ◇


 寮へたどり着き部屋の中に入ると百が、勝手にゲームをしていた。


「あ、お兄ちゃん。お帰りー」

「なぜここにいる?学校はどうした?」

「中学はとっくに夏休みだよ。だから遊びに来たのにお兄ちゃんいないんだもん」


 頬を膨らませて怒ってますよアピールをしてくる。とにかく俺はやることあるしこのままそっとしとくか。


 俺は机の上にやりかけの宿題と筆記用具を出す。少しずつ宿題を先に進めていて良かった。他の誰にも言ってないが予選の結果次第では休み終了直線に追われることが予想されていたからな。


「お兄ちゃん。何やってんの?」

「え、夏休みの宿題」

「何真面目なことやってんの!?夏休みの宿題なんて最後の1日にパパッとやっとけばいいじゃん」

「1日で終わるわけないだろう。それに真に賢い奴は余裕をもってやるんだよ」

「今更真面目ぶっても手遅れだと思うけどな」


 俺は百を完全無視し宿題をやり始める。それを見た百は何を思ったのかどこかに電話し始めた。どこに電話しているのか知らないけど全部無視だ無視。


 ピンポーン


 インターホンが鳴った。誰だよ、せっかく宿題やってんのに。


「零君が既に宿題をやってるって聞いて邪魔しに来たよ!」

「なんでだ!」


 来訪者は美咲だった。そして来訪理由がひどすぎる。宿題邪魔しに来たってなんだよ。つーか来るの早かったな。


「おい零!宿題を始めてるって本当か!?」


 今度は翔、三上、社長の男性陣がやってきた。なんでこいつらまで。


「まさか!」

「お兄ちゃんお知り合い全員に声かけといたから」


 百め!なんてことをしてくれたんだ!?だが良識のある会長が来るとは思えない。それに校長とかも来ないだろう。だけど恵とかは来そうだな。


「零。宿題の抜け駆けは許さないよ!」


 俺の対応が1歩遅かった。既に恵、奏ちゃん、愛さんまでやってきてしまっていた。


「逢坂君。えっと、こんにちは」


 しかも横から会長、校長、天野、小林、森までもが顔を出していた。つまり来ないと予想していた人達が来ていたということだ。なんでこの人たちまでいんの?


「安心して。私達はこの人達を引き取りに来ただけだから」

「無論。俺は邪魔をしに来たがな」

「私だけ仲間外れは嫌ですわ」


 校長、天野、森と三者三様の答えを返してくる。いや、もう完全勉強する気力がなくなった。なんでこんな終業式終わった直後の昼にこんなに人が集まってくるんだ。


「さあ、お兄ちゃん。今日はたっぷり遊ぶよ」


 俺はため息をつきながらも百の提案を肯定していた。


「仕方ないな。明日からは宿題に集中させろよ」


 今日は7月25日。夏休み終了まであと1ヵ月。夏はまだまだ続きそうだし今日くらいは遊んでいいか。


 俺はそう思い直してみんなと遊ぶことにしたのだった。

作者は来月より受験シーズンに突入いたします。それに伴い突然で申し訳ありませんが本編を1学期終了と合わせまして完結とさせていただきます。

ただ既に投稿してしまった甲子園編につきましては最後まで書ききるつもりですのでこれからもよろしくお願いします。

あと、受験勉強の息抜きに短編を投稿することもあるかと思いますがそちらの方もよろしくお願いします。

最後に今まで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。次回作または短編及び甲子園編でまたお会いしましょう。

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