表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/72

エピローグ : bAd companionz

 


 …………寒い。


 あと、鼻がむずがゆい。


「ぶえっきしゃんっ!!」


 思いっきりクシャミをしてから、自分が眠っていたコトに気付いた。

 仰向けになって寝ていたらしい。

 クシャミで起きるなんてあんまりない体験だ。


 目を開ける。


 ディーがいた。


「………………」

「………………」


 ディーというより正確には、ディーの顔があった。

 正直度肝を抜かれた。


 かなり距離が近くて、顔しか見えない。

 ついでに、影が差していて表情も見えない。

 長い髪がたれさがって、顔をくすぐってくる。


 そして、ぽつりと一言。


「……ヒカリさん、起きたんですか?

 くしゃみ、顔に当たりましたよ」

「うわ、悪い! ……ってか近っ!?」


 上から降ってくる声に謝って退こうとするものの、距離を開けられなかった。

 おれの頭の後ろには暖かい地面がある。

 ディーと地面に挟まれて動けない。


「いや、それより…………。ココはどこだ?」


 全身がびしょ濡れで地面に横たわっていた事に気付く。

 くしゃみが出たのは体温が水にどんどこ奪われていたせいだった。

 けっこう寒い。あと服が濡れてて気持ち悪い。


 さらに言えば、地面はさっきまで居たゴツゴツした洞窟の石畳ではなく、柔らかい草地に変わっている。

 理由は判らない。


 さらにさらに言えば、おれの両肩は思いっきり上から組み伏せられていた。重石おもしはディーの手である。

 完全に押し倒されている姿勢である。

 もっと理由が判らない。


 掴まれてるのは百歩譲って良く……、はないけど。いや、全く看過できないけど!

 ……その掴む腕に『ヒレ』が生えているのはどうしてだ?


 妙に無機物的な、淡く発光する青いヒレ。

 ディーの生まれである魔人ワーロックのウィン族は、魔力を込めると彼ら水人族すいじんぞくの証であるそれが生じる、とは聞かされてるけど……。


 ディーが黙っているので、仕方なく真正面から向かいあっていた顔だけずらして横に動かす。

 ぶっちゃけ動ける部分が顔しかない。

 驚きの可動範囲の狭さだ。

 持ってないけど、きっとフィギュアだってもっとよく動けると思う。


 だが、ディーの横から上を覗き見た瞬間、そんな思考はふっ飛んだ。


「そ、空が…………青い!?」


 見えた周りの景色。

 空が、紫から青へと色を変えていた。


 魔素の紫色から、本来の色へ。

 雲一つない澄みきった青空がそこにあった。


 世界が、元に戻ったのだ。


「は、はは、やった……!!」


 眩しい陽差しに目を閉じてしまいそうになる。

 それでも、上を見上げるのをやめる気にはならなかった。


 辺りにはまだ紫色のもやも残っている。でも、それもすぐに晴れていくだろう。

 もう、魔素を辺りに撒き散らす存在は居ないんだから。

 そうだ、おれ達は『目』を撃破したんだ。


 色々な思いはあるが、やはり安堵の気持ちが一番大きい。

 ……相変わらず肩はガッチリ掴まれてるけど。


 気になった矢先にディーが片手を離して、無言で横を指し示した。

 斜め方向から見ても、青い髪で顔が隠れている。

 ん? 何を指しているんだ、って。


「あれは……小屋?」


 木建てのプレハブのような小屋があった。

 前に置かれた立て札には、『水守ミズモリ』と書かれている。


 水守ってのは、確かディーの職業だったな。ディーの父親と二人で湖の近くに住んで、その場所の守護をしているとかなんとか。


 と、言うことは。


「もしかして、ディーの家か?」


 どうしてか返事は無いが、恐らくそうなのだろう。

 今度は反対側に首を傾けてみる。


 大きな、大きな湖があった。

 対岸が見えないほどに湖面は陽の光を受けてキラキラと輝いている。

 その平和な景色に見とれそうになってしまう、が。


 ……判ったぞ、そういう事か!!


「そうか、あの迷宮ダンジョンはここの、北の湖にまで繋がってたのか!

 だから洞窟も『湖下こか水祠すいじ』なんて名前が付いてたんだな」


 つまりしくもおれは、途中で森へ、その先の洞窟へと脇道にそれて進んできたはずなのに、結局は当初の目的だった北の湖にたどり着いてしまったことになる。


 さらに考えるに、洞窟の大ホールの天井から流れ込んできた水がこの湖のものならば。

 あの地下のホールが湖の真下に位置するものであったなら。

 それを裏付けるように、湖面のフチには、ボロボロの剣や槍が幾つか流れ着いている。


「あの『柱の中の目』は、湖の真下にあったホールの柱に陣取って、魔素を垂れ流してたのか……!」


 見れば湖から離れた草地にも武器が散らばっているが、恐らくアレは湖の周りにもスケルトンがいたが、『目』がやられたために消滅した、とかそんな感じだろう。


 最初ギルドで見た緊急任務(クエスト)の内容は、『北の高原の湖に起きた異変の調査』だった。

 だがこれじゃ普通に湖に来た所で、地下の迷宮ダンジョンの存在を知らなければ、異変の元凶である『目』の所まで辿りつけ無かっただろう。

 結果的に迷宮ダンジョンを進んできたのもムダではなかったのだ。


 そこまで考えてから、正面に向き直る。


「ディー、やったぞ! これで事件も解決だ!!」


 逆光でディーの表情は見えないけど、いい加減手を離してほしい。

 ずっと気を付け状態の姿勢だから落ち着かないし。意味なくプレッシャーも感じるし。ヒレも気になるし。


 あとさっきから何もリアクションが無い。

 そこに妙に違和感がある。


 小屋のコトは申し訳ないけれど、と前置きしてから。


「とりあえず『目』は倒せたし、二人とも無事にあの洞窟から帰ってこれたから万々歳だ。

 でもディー、なんでそんなヒレなんか出したまま、でっ!?」


 ギリギリギリっ!!


 言い終える前に、肩を掴む手に力を込められる。

 肩越しに首まで締めてきそうな勢いだ。

 なにこれすげぇ痛い!!


 そんな目の前の影が、怒鳴った。


「無事に帰ってこれた、じゃないですよーーーー!!」

「うわっ!?」


 耳がキーンとする!


「ヒカリさん、溺れて死んじゃうところだったんですよ!? 息も止まってたんですよ!?

 しかも傷だらけで、首元からは血も出てて! 体もどんどん冷たくなって! 呼吸もしてなくて唇もまるで死んだ人みたいになって!!」


 怒涛のごとく喋り始める。


 ポタリ、と水が落ちてきた。

 おれの口の端に滴ったそれは、涙だった。


 ………………え? あれ?


「えーっと……、な、泣いてらっしゃる?」

「必死に治癒ヒーリングをかけても反応が無くて、そしたらいきなりくしゃみして、何事も無かったみたいに起きて!」

 

 涙は止まらず、かげりのある顔から、雨だれのように断続的に落ちてくる。

 そしてしゃくり上げながら、もにょもにょと非難とも心配ともつかない言葉の断片を、声をにじませてぶつけてくる。


 ……というかおれ、そんなにヤバい状況だったのか!?


 ――――恐らく洞窟の崩落に巻き込まれて、水流に呑まれてしまったのだろう。

 この湖の水量は途方もなく多い、あの大部屋を水没させるくらい造作もない。

 ディーは気絶から目覚めてから、ぶっ倒れているおれを牽引して冠水したホールの天井から外に出たのだ。彼女は『水』属性の魔人ワーロックであるから種族の特性として、泳ぐのは造作も無いことらしい。

 結果的には浸水したお陰で、天井を脱出路に使えたという面もあるみたいだけど。


 若干支離滅裂気味になっているものの、ディーが涙声で言葉にしているのもそんな感じの内容だった。


「心配したこちらがバカみたいじゃないですか!!

 私がここまで引き揚げなきゃ、どーなってたと思うん、ですか…………」

「ご、ごめん……。

 ついでにクシャミもごめん……」


 自分でもなんだかなあ、と思う謝罪も効果は薄く。

 しまいに鼻声になり、おれのパーカーに顔をすり付けられる。

 さらにそのままグリグリと服で顔を拭う。


 ……たぶん、涙とかハナミズとか付けられた。

 が、それは今気にするトコじゃない。と思う。


 コレ、もしかしてくしゃみ吹きかけた分の仕返しかな? と一瞬思ったけど、それを言うような空気でもない。


「…………」


 言いたい事は全て吐き出してしまったのか、ディーが黙ってしまう。

 顔はパーカーにくっついたまま、しかし腕はおれの肩を抑えたまま。

 そうして、地面に横たわってずぶ濡れのディーに思いきりのし掛かられるという状況。


 ――よく考えるとマズいんじゃない、コレ?


 …………いや、よく考えなくてもマズいだろ!!


 どうすんのさこれ!!


 おれ、どうすりゃ良いんだ!?


 ピンチだよ、ぶっちゃけさっきの『目』よりもどうしようもなくピンチだよ!!


 ディーは湖の中を泳いで洞窟から脱出したんだし、こっちも水揚げされたお陰でびしょ濡れなのには変わらないから!

 ふ、服越しに何か柔らかい感触が!

 吐く息の、熱が!


 ヘ、ヘタに身じろぎすればもっとマズい事になる気がする!!

 フランさんのお祖父さんのシャツを失くしてしまったのがここでアダになるなんて!?


 アカリは泣くような子じゃないからこんなケースにはなった事もないし!

 ディーは気分の浮き沈みが激しいから、一度凹んだら復帰させづらいし!!

 心配させちゃった点でこちらに非があるから、離れてくれとも言えない!!


 上にいる少女が退いてくれないと何も動けないのに、その肝心の彼女は離れる気配がない。

 こちらの荒ぶる心境も、もちろん察してなどくれない。


 なんだか色々と所在無い感じになってしまい、上の方を見る。

 遂にサジを投げた、とも言える。


 昨日見た異常な景色がウソだったかのように、空は元の色を取り戻していた。

 カッと日が差し、おれの顔に再び当たる。太陽ゲージなら余裕で満タンになりそうな程の明るさ。

 少し前まではディーで日陰になっていたからな。


 眩しいな。

 今はもう、正午過ぎだろうか。

 お昼を余裕で食べ損ねてしまったけど、空腹感は無かった。

 それよりも今は、緊張感の方で満ちている。


 あと、身体が重い。

 『目』と戦った時のダメージと、ディーがのし掛かっているためだ。

 きっと本人に言ったら「また重いって言いましたね!? 許しませんよ!?」とか噛み付かれてしまうんだろうけど、今は消沈しているためにそんな展開にはならなさそうだ。


 ……どうにも調子が狂うなあ。

 おれの所為せいなのは判るけど、なんとか元気付けてやりたいとも思った。


 このこっ恥ずかしい状況から早く逃げ出したい、という気持ちもある。

 むしろそっちがメインという説もある。


 でも、何も良い言葉が思いつかないな…………。


 首を下に向けるとディーの頭が視界に入った。

 長い髪が陽射しを浴びて、近くにある湖面のように光を揺らしている。


「ディー。……おまえの髪って青かったんだな」


 それを見て、ふと、呟いてしまった。


 そして言った後に思った。

 おれ、何言ってるんだと。


 しかも向こうもそう思ったらしい。

 この距離だ。運良く聞こえないとか、そんな事は起こらなかったようだ。

 つくづく幸運とは無縁の体質だと実感してしまった今日この頃。


 こっちに頭のつむじを見せたまま、もぞもぞと喋る。

 パーカーに熱が伝わって、なんとも、こう…………。


「何を…………今さら?」

「い、いやー…………」


 言ってしまったものは仕方なく、必死に言葉を探して話を続ける。

 これで黙ったら気まずい空気がさらにガッチガチに固まってしまう。

 オーバーリアクションに「HAHAHA!! なんでもないよ!」と外人笑いをする事も考えたけど、無論却下。当たり前だ。

 というか何故そんな案を思いつくんだ、おれの頭は。


「……ほら、あれだ。初めて会った時から洞窟の中だったじゃん。

 迷宮の中じゃ薄暗いし見通しも悪い、お互いに良く顔も見れて無かったろ?」


 光源も少なかったからな。

 むしろ照明があっただけマシというもの。


「だから、うーん…………。あー……、ようやく外に出れた、って感じの感想が出たのかもしれない。やっと平和が戻った、良かった! とか、そんな具合だな」

「…………私の顔が見れて、良かった、と?」


 探り探り話すと、僅かにリアクションが返ってきた。

 ディーが少しだけ顔を上げて、こちらを見てきたのだ。

 じっと、こちらの返答を待つように、青い髪の奥から、より濃い色のブルーの目がおれを見つめる。

 

 ……しかし、どういう意図の質問なんだろう?

 これは難しい問いかけだ。禅問答みたいにしか思えない。


 いや、違うか。

 深読みせずに、思ったままを言おう。それがきっとおれの、ありのままの気持ちなんだから。


「それもあるけど……」

「……?」

「でも、二人して無事に帰ってこれたのが一番大きいかな。心配してくれてるのは嬉しいけど、それを言うならおれだって、『目』と戦っててディーが倒れた時は心配したんだからな?

 ここでやられたらディーまで死なせちまうと思って頑張れた、ってのもあるんだし」


 気を付けの姿勢でこんな事を言う自分。

 そこら辺は深く考えてはいけない。


「私の事も、心配…………」

「そうそう」


 そう言うと、最後にもう一度おれの服で顔を拭ってから、身体を離した。

 すん、と鼻を鳴らしてから、表情を崩す。


「そう…………、ですよね!

 PT(パーティー)なんですから、お互い気づかうのも当たり前ですよね!」


 うんうんと頷いて何やら納得した様子。

 それから、一つ頭を下げる。おれの上に乗ったままではあるけど。


「なんだか取り乱して困らせてしまって、スミマセンでした」

「いや、別に大丈夫だって」


 だってディーの行動も、こちらへの心配からくるものだったんだから。


 それなら、おれが許す許さない、というのはちょっと違う気がする。

 あと、この子が取り乱すのなんてしょっちゅうだし。はっはっは。


「でもまあ、それじゃ上から退いてくれるか?」

「あっ、そうだ」


 ようやくハッキリと窺えたその顔は、泣き顔でも怒った顔でもなく、どことなく晴れやかな表情だった。

 少し湿った青い髪が、陽光に照らされていて眩しい。


「…………私は最初から見えてましたよ? ヒカリさんの顔」

「え、いや、そういう話じゃないぞ?」

「そういう話ですよ」


 う、うん…………?

 何が何やら、妙に誇らしげな顔付きで言い切られてしまった。


 どういう意味だ……?


 ………………。


 …………。


 ……。



「あー、うん! そだね!!」



 ――――ごすっ。



「痛てぁぁ!? ご、ご無体な……!?」


 おれの腹にディーの頭が打ち付けられる。


 どう考えても趣旨を理解してないことバレバレの相づちは、やっぱりバレてしまっていた。

 そこまで力は込められていないけど、地面とディーの石頭でプレスされて結構クるものがあった。


「はぁ……。ヒカリさんはこういう人でした」

「なんで呆れられてるんでしょうか」


 何故か一人で納得されてしまう。


魔物モンスターに襲われたらすぐ簡単に死んじゃいそうなのに、なぜかしぶとく生きのびてるような方でしたね」

「言い方が完全にゴキ○リのそれじゃねえか!!」


 人をまるで害虫みたいに扱いおってからに!

 いやおおよそディーの言葉も間違ってはいないんだけど、でもその表現はイヤだ!!


「それでも目を覚まさないからこちらもカクゴを決めて『ジンコウコキュウ』なるものを試してみようとすれば、いきなりくしゃみして起きるわ、腕も折れてるわで……」


 若干顔を赤らめつつ、気になる言葉を告げる。


「……ジンコウコキュウ?

 いや、それは呼吸の止まってる人にするものだし、それよりは心臓マッサージの方が助かる確率は高いから………………って、人工呼吸!? ホワイ!?」

「わーい? 必要ですか?」

「いや、喜んでるワケじゃないぞ!?

 あっいいから、別に間に合ってるからそもそもこうやって普通に喋ってる人間には不必要なモノだからそれは!!」


 意味なく目を閉じて近付いてきたディー(アホの子)が、怪訝そうな顔で離れる。


 危ない! 何がとは言わないが、色々と危ない!

 ギリギリだった!!

 特に、こっちが寝ている間にも同じような凶行が為されかけていたという事実が!!


 ……まあ、取り敢えずディーの言動がいつも通りになってきた事から、調子も多少は戻ってきたのは判った。おかしな言動がいつも通りってのもヘンだけど。

 それならこうしてクシャミをしてしまったのも、腕が折れているのも報われ、


 ………………うで?


「……ディー、ちょっと体どけてもらえる? 肩を抑えられたままじゃどうにも動けないからさ」

「体を起こすだけなら、なんとか?」

「なんで疑問形?」


 でも一先ひとまず、上の人に起きてもらう。


 で、顔を動かして下の方を見る。



 腕がヘンな方に曲がっていた。



「ッアーーーーーーーー!?」

「どうしたんですか、大声で!?」

「いや腕! おれの右腕!!」


 うわああああ折れてる!!

 腕の骨が折れてる!!


 確認したワケじゃ無いけどヒジが曲がっちゃいけない方向に曲がってるし、なんかもうその場所だけ真っ青な色になっちゃってるし!

 おまけにパーカーの肩から先の布が、まるまる袖一つぶん失くなってるし!!


 その事に気付いた途端、痛みが!


 激痛が!!


 体はダメージを認識しないと頭が痛みの信号を発しないとは聞いた事があるけど、マジだった!

 ちょっと真顔じゃいられないくらい痛い!!


「いってえぇええええ!!」

「あ、ダメですよ動いたら! ケガしてるんですから!」

「知ってるよ、今丁度知った所だよ!!

 ディー、治癒ヒーリングをかけてくれ頼むから!」


 冗談みたいな状態になってる自分の腕を見て叫ぶ。

 手の先には、ポールのような何か…………じゃない、シャベルの柄部分ががっちり握られている。


 ま、まさか『目』に『例のアレ』を撃った時か!?


 撃ったら腕が折れちゃったのか!?

 なんだそりゃ!!


「さっきまでずっとヒカリさんに唱えてましたから、MPがもう残ってません!」

「ち、ちくしょおぉぉおお!!」

「あとはもう、人工呼吸ぐらいしか……!」


 決意をした表情でこちらを真正面から見据えてから、顔を近付けてくる。

 ……よく見れば、目がぐるぐるとマンガのようになっている。

 ヤバい、不測の事態に弱いディーがまたテンパった!!


「おいやめろバカっ、そんなんで骨折が治るワケな」

「何を………………、しているんだ?」


 不運な事故というものは重なるもので。


 このタイミングで、近づいてくる人影があった。

 迫るディーを動く方の腕で押しのけようとしつつ、痛みに脂汗を浮かべてそちらを見る。



明宮アケミヤ…………君?」



 語歌堂さんだった。



 一瞬で引っ込む脂汗。



「たった今、こちらに周って来たのだが……。

 ………………これは?」


 代わりに、今度は首元に冷たい汗がひと筋。

 冷や汗だ。


 呆気にとられた顔の語歌堂さんが、言う。

 手には大きな弓と、なぜかシャベルの前半分の部分が握られている。

 あれ、おれの持ってたシャベルだ。

 それよりも、なんで彼女がこんな所に?


 カキーンと固まった時間。

 痛みを忘れてにわかに冷静になり、辺りの状況を考えてみた。

 第三者の視点で考えてみた。


 湖の畔で横たわる人が二人。

 一人の上にもう一人が馬乗りになっている。

 なぜかびしょ濡れ。


「傍目から見れば、抱き合ってるようにしか見えないッ……!?」


 ――――――すごく、マズい。


 ヤバいヤバいヤバい!

 無茶苦茶ヤバいやつや、これ!


 ぶっちゃけ『目』が『巨礫投射メガリスシュート』をかましてきた時がむしろ平和に思えるほどの状況だ!!

 なんかもうこうして黙ってる間にも、語歌堂さんの目が鷹のように細くなって来てるし!

 鋭い! 眼光が鋭い!! 怖い!!


 早くどうにか言い訳を!

 いや違うか! 言い訳じゃない、本当の事を言えば良いだけなんだから!


 ……それがきっとおれの、ありのままの気持ちなんだから――――!


 おれはついさっきも至った結論を再び導き出し、バッと勢いを付けて起き上がった!


 状況を打開するために!!

 これから生じるであろう疑いを先んじて晴らすために!


 そして――――――!!





 ――――――ディーの頭と衝突した。





「ぐふぅんっ」


 僅かに離れただけの距離にあった青い髪の頭に、おれのデコが正面から激突。

 当然のようにディーの頭に当たり負けし、後ろに弾き飛ばされた。


 再度、今度は地面と後頭部が激突。

 まさかのニ連続攻撃だった。


 視界に火花やら星やら、その他ステキな何かが飛び散る。

 続けて端の方から速やかに、画面が暗くなっていく。


「ディーおまえ、やっぱり、石頭…………」


 ひっひどい! じゃなくてヒカリさん、大丈夫ですか!? という声と、近くに走り寄ってくる語歌堂さんの気配をよそに。



 おれの意識は、再び地面に吸い込まれてしまうのだった。

 

 

何とは言いませんが、爆発すればいいなと思いました。


エピローグとはありますが、三章の人物紹介を最後に挟みます!


ではまた次回!

ご意見ご感想お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ