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第八話 : 洞窟物語 中編

アケミヤ怒りのスコップ。


すみません、字数が予想を超えたため、まさかの前中後編に分割になってしまいました!

 


 前回のあらすじ。

 『……畜生ォ……(衣服を)持って行かれた……!』


 ※本編では言っていません。





「キシャァァーーーーーー!!」


 眼前の敵に手にした武器シャベルを思いっきり打ち付ける。

 ついでに、端から聞くとかなりヤバい感じの叫び声もあげている。


 ホネで出来た相手の身体は、重量のある金属の衝撃に耐え切れなかった。

 吹っ飛ぶようにして洞窟の通路の壁にぶつかり、砕ける。


 そして視界の端で、ワイズマンが敵のHPが0になった事を告げる。


 だが、まだ終わりじゃない。


 打撃で傾いた重心を無理やり戻すようにして右足に力を込め、いったんシャベルを手から離す。

 腰から別の武器を引き抜き、最初の一体の後ろに見えた次の一体に突進。


 ガランガラン、と放り出されたシャベルが岩壁に当たってけたたましい音を立てるのをよそに、ガイコツに向かって肉薄する。


「ガァァアア!!」


 さらに人としてあげちゃいけない声をあげている気もするが、気にしない。

 手に持った武器――ツルハシで、相手が動くのよりも先に横殴りの攻撃。


 錆びた剣がこちらに振りかぶられるヒマもなく、逆に相手のホネの頭をふっ飛ばした。

 頭蓋骨はツルハシが突き刺さったまま、これもまた壁にガシャッと衝突して壊れる。


 加えて次に、敵の身体が動きを止めたのを見計らい、腰の辺りを左足で蹴り飛ばす。

 相手は地面に転がり、こっちは水泳のターンをする時のように後ろ側を向くことができた。

 前から来た敵は今の二体だけだったため、問題ない。


 後ろを向くと、おれと背中合わせになった青い髪の少女が同じように二体のガイコツと向き合っている。

 そしてちょうど今、そのうちの一体を手にした槍で突き刺すところだった。


 刺された方は瞬間、凍りづけになってその場で氷のオブジェと化す。

 少女の持っているのは『水魔の氷槍(フロストロッド)』という杖から氷の刃先が伸びる、特殊な槍。

 刺した相手に『凍結』の状態異常を付加する能力があるようだ。


 そいつのHPは0になったが、しかし隣にもう一体。

 槍を抜く動作が必要な彼女には、二体目に対応する余裕は無い。


「くッ、攻撃が間に合わな――」

「ディー! 後ろの転んだヤツを!」


 言いながら少女の脇を低い姿勢ですり抜け、さらにもう一本のツルハシを片手に取る。


 そのまま――――。


「『スライディング』!!」


 技能スキルを発動した途端、自分の体が岩肌の地面スレスレまで沈み、敵の真横にまで滑りこむ。

 そして、相手の足元にツルハシの尖部を引っ掛ける。

 スライディングの勢いが付いていたそれは、狙い通りに敵を転倒させた。


 自分でわざと地面に付いたおれと、転ばされて地面に付いた相手。

 こちらの方が起き上がるのは早いに決まってる。


「シギャーーーー!!」


 叫びつつスライディングから立ち直り振り返り、さらにジャンプ。

 うつ伏せになったホネの身体に、最後の一本であるツルハシを振り下ろす。


 ゴガッッ!


 と鈍い音がしてこちらもカルシウムな頭を、金属の先端が破壊。

 余った勢いがツルハシを地面に突き刺した。

 さらにツルハシを引き抜くついでに相手を踏みつけると、HPが0になる。


 これで、挟み撃ちのようにして通路の両側から来ていたスケルトン・ソルジャーは、あらかた倒すことができた。


「当たってください! 『氷の刃(アイスエッジ)』!

 …………よし、やりましたよヒカリさん! って、何て顔してるんですか!?

 怖いですよ!?」

「フーッ! フーッ!」


 向こうも転んでいた相手を無事倒せたようで、こちらを見た。

 しかし見た途端に驚いている。


「大丈夫……ダイジョウブ……、ディーナ、マイフレンド…………」

「自分に何か言い聞かせてる!?

 抑えて、自分を抑えて! 目が血走ってますよ!!」

「……フシャー…………」


 ………………。


 …………。


 ……はっ。


 ちょ、ちょっと心が荒ぶっていたみたいだ。

 危うく荒御魂あらみたまのごとく修羅に囚われてしまうところだった。


「ごめんディー。少し、我を忘れた感じになっちゃってた」

「い、いえ。今のスケルトンで鬱憤うっぷんが晴らせたのでしたら、それで…………」


 若干引き気味に、一緒に戦っていた少女が返す。


 PTを組んだメンバーでもある、ディーナさんだ。

 ディーと呼ぶように言われている。


「それでスライムの方は……立ち直れそうですか? 服、とか」

「言うな……言わないで…………」


 そして戦闘も終わってしまったため、また現実を直視しなければならない。


 そう。


 残酷な現実に。


 自分の服が無い、という現実に。


 ……正確には、無いワケではない。


 おおよそ腹から胸のあたりにかけて、衣服が無くなってしまったのだ。


 食堂一家から厚意で貸してもらったシャツが、もう上半分くらいしか残ってない。

 ギリギリでチェスト部分から上と袖が残っている程度。

 あとは全部、スライムの触手に溶かされてしまったのだ。

 パーカーは一応無事なので、きっと植物の繊維を溶かすとかそんな作用があったんだと思う。


 もう前開きでワイルドさを演出! とかそう言ったレベルの服ではない。

 というか服ですらなくなった。


 ジャネットさんの噛み付きが甘噛みに思える程の凶悪な被害だ。

 無事なパーカーもびちゃっと濡れているのが悲しい。


 ついでに、腹に巻かれていたロープも一緒に溶かされている。

 それはまあ構わないけど。


「どうしてこうなった……」

「げ、元気を出してリーダー!

 ほら、なんとなく武道家みたいでカッコいいですよ!」


 上半身に服を着てないなんて! と、ディー。

 フォローかどうか判定が微妙なフォローだ。


 青い燐光を放って消えていくスケルトン・ソルジャーからツルハシを外し、おれに渡してくる。

 そしてまた、気遣うように言った。


「私以外見てる人もいませんし!」


 それもどうなんだろう。


 ……でも、気落ちしている場合じゃないんだよな。

 こうしてディーも励ましてくれている。


 ……励ましてくれてるんだよな……?


 フランさんのお祖父さんから借りたシャツを溶かしたあんちくしょうは許せないが、そのスライムも既に、ディーの魔法で倒されているんだし。


 また、すんでのところでジーパンは溶かされなかった。

 おれの貞操は守り切ったのだ。

 守りたい、このジーンズ。


 いつまでもグロッキーになっているワケにもいかない。

 やって来たスケルトンに恨みをぶつけても、おれの服は戻ってこないんだ。


「スライムはアレだったけど、PT(パーティー)が二人とも無事だっただけ良しとするべきなんだよな」

「そうですそうです!」

「それなら服なんておれの服の一つや二つ、ダメになった所で気にしちゃダメなんだ!」

「そうです! 街に戻る時には私の家から、父のマントでもお貸しします!」

「なら大丈夫だよな!!」


 何が大丈夫なのかは全くもって判らないものの、とりあえず気合いを入れてみた。


 あとよく考えると、上が裸でマントを羽織る格好ってどこかで……。

 いや、なんでもない。


 …………なんだかとても鮮明なデジャビュを感じるような……。

 いや、なんでもない。


 気にしたら負けだ。


「よし、じゃあ恥ずかしいから、ディーはあまりこちらの方を見ないように! いいな?」

「はい! 見ません!」

「なんで手で顔覆ったくせに、結局指の間から凝視してるんだよ!!

 そんなリアクションいらないから!!」

「はい!」


 ベタか。

 ベタなのか。


 そして止めさせたら止めさせたで、もはや隠しもせずおれの方を見てくるのもやめろ。

 スキル『挑発』を使った時の魔物ばりに、こちらに目線をがっつりターゲットしてきている。

 超怖い。

 必死にパーカーで前を隠した。

 湿ってはいるが、気にしている場合でもない。


「よし、移動するぞ!」


 ずっとこの場所に留まっている訳にもいかない。

 スライムに襲われた場所から一刻も早く移動したい、という気持ちも半分以上ある。


 残り半分以下はディーの視線がなんだかヤバイという理由。


「あ、ちょっと待って下さい、その前に」


 ディーが自分のポーチから、数枚の丁寧に折り畳まれた紙切れを取り出す。

 だいぶ黄ばんではいるが、まだ形を留めている紙だった。


「さっきもお見せしたんですけど、これ、地図じゃないですか?」

「そう言えば……」


 ちょっとスライムのショックから復活してきた頃合いに、丁度スケルトンに襲われてしまったのだけれど。

 そう言えばそれ以前は、開けた箱から出てきたブツの話をしていたな。


 今通路の少し離れた向こうに見える壁際の箱。

 箱から出てきたのは、スライムだけではなかったらしいのだ。


 それがこれ。


「確かに、どこかの建物? みたいな図面が書いてあるな……」


 ディーは地図と言ったが、見たところ大きな建物を紙に描いた、といった感じ。

 三枚あって、どれも同じ一つの建物の、別の箇所を描いているようだ。

 三枚組で一セットなのだろう。


「うーん……?」


 しかし、何でこんな場所に?

 ついでに、何でスライムも入っていたんだ?

 何でおれの服が持ってかれたのかはこの際気にしないことにしても、不可解な点は多い。


 判らないな…………と、あれ?


「ディー、この二枚目の紙」

「はい?」


 ディーが手にした三枚の紙のうち真ん中にあった一枚、それをもらう。

 そして一つ気になる箇所を指さした。


 おおよそ、古びた紙の一番インクが鮮明に見える、中央の付近。


 もしかすると。


「これ、どこかに見えないか?」

「…………ヒカリさんのご自宅?」

「なんでここにおれの家の間取りがあるんだよ!!

 ほら、このフォークみたいに分岐した部分! さっき通ってきた三叉路みたく見えないか?

 ロープの話をしたトコだ」

「ふぇ? ……………………おお!?」


 ようやく気付いてくれた。

 それと、また相手のあおい目がチラチラとこっちの腹の辺りを見ているのにも気付いてしまった。

 頼むからやめて。


「つまり……、これはこの場所の地図?」

「うん。でもやっぱり、地図というよりは建物の図面っぽい印象だな」


 目の前の少女が変な顔をする。

 そんな様子のディーに、思いついたコトを話してみた。


「もしかしてさ」

「はい」

「おれ達が今いる場所って……、元は、何かの建造物だったんじゃないのか?」


 最初は洞窟だと思っていたし、『湖下こか水祠すいじ』の辺りまでは確実に、岩場を掘って作ったトンネルといった様子だった。


 だが水祠の奥に辿り着き、当の祠の裏から見つかった先の、ディーも存在を知らなかったようなこの場所は雰囲気が違っている。


 定期的にあらわれる部屋状の空間。

 それを繋ぐ通路。

 そして、通路の脇に置いてあったチェスト。


 どう考えても、自然に出来るモノではない。

 周りの壁や床は、デコボコした岩肌になってはいるものの、しかし。


 恐らく、ここは元は建物で、しかも誰かが住んでいたのだ。

 この場所の図面がこうして見つかったのも、それが理由なら納得できる。

 ただし、何らかの罠でなければ、という注釈は付くけど。


「で、でも、ここは地下ですよ?

 あと誰も住んでないどころか、ガイコツが出てきますし!」

「住んでた人達は、かなり昔にここを放棄したのかも。自分たちの住処の間取りを書いた図面は、必要ないからここに放置していったとか。

 ディー、おれはよく知らないんだけど……、地下に家とか都市とかを建てるような技術って、この世界にはあるのかな?」

「え!? ……えーっと…………」


 見せた地図の反対側をつまんで持つ相手に、問いかける。

 ちょっと突拍子もない話だっただろうか。


 だがディーは、少し思案してから。


「詳しくは知りませんが……。

 『土』属性にけた魔人ワーロック種の一族が、地下に街を作ってひっそりと暮らしている、と聞いたような……」

「なるほど、地下に住むケースも無くはないのか」


 なんと、そんな場所も実在するらしい。

 おれの居た元の世界では機械を使ってトンネルや地下鉄を掘ったりしていたが、こちらでは魔法を利用すれば、地下に空間を作れるのかもしれない。


 すると、さっきの仮説はちょっとばかり現実味を帯びてくる。


「ならやっぱり、ここは誰かが住んでいた建物なんだよ」

「ふーむ……。じゃあ、ヒカリさん。

 スケルトンみたいな魔物が出てくるのは? 魔素がこの場所から湧いてきてるのも、なぜなんでしょうか?」

「それは、どうなんだろうな……」


 そこが疑問の残る所だ。


 どうしてモンスターがこんな地下の空間から湧き出ていて。

 どうしてこんな辺鄙へんぴな所が、魔素の霧に満たされているのか。


 ……まあ、とりあえず言えるコトは。


「先に進めば、何か判るかもしれないな」

「その地図自体は信用していいんですよね?」

「ああ、それは大丈夫、だと思う」


 通路が崩れたりして地形が変わっていなければ、という条件が付くけど。

 そうしたらツルハシで掘るしかないな。


「そうすると……」


 手にした地図を見せるように指さしていく。

 顔を寄せるディー。


「このチェストがあった先のほうは、一つ部屋があるっきりで行き止まり。さっきのスケルトンの一グループは、この部屋から来たんだろう。

 で、戻った所の三叉路からは、おれらの今居る右の通路と、左の通路も部屋で突き当たりになっていて、真ん中の通路だけがその先に繋がってるっぽいな。

 なんだ、意外と単純な間取りだったんじゃないか」


 ロープなんて全く使う必要なかったんじゃん!

 ……でも、それが判っただけマシだと思わなければ。


「そこまで把握できるなんて……。なんだか地図って便利ですねえ」

「本当にな……」


 古いゲームみたく手さぐりで歩きまわって、マップを自力で書いていくよりは数百倍ラクで良いね。

 あれは罠のテレポーターでワープして自分の位置が判らなくなると、完全に詰みだからなあ……。


「これでこそあの箱を開けたかいが、いや、ヒカリさんが半裸になったかいがあったというもの!」

「なぜ言い直した、というか半裸とか言うな」

「それじゃあリーダー、どのように進みましょうか?」


 聞いてないなこの子。

 まあ、意識しないでいてくれた方が気楽ではあるけど。


 ……その割にはちらっちらっとこっちを見てるのは、なぜ。


「コホン! まずはこの先の部屋にも、一応行ってみよう。

 それから、次に反対側の通路を行き止まりの部屋まで見てみる」

「え、何の意味が?」

「またこの地図みたいな、何かアイテムとかが置いてあるかもしれないだろ」


 ダンジョンでは、何はともあれ全ての場所を探索するのは基本なのだ。たぶん。

 どんな情報であれ、見逃さないようにしておきたいからな。


「なるほど、スライムですね」

「なんて事言うんだ!!」


 そういうの、フラグって言うんだよ!


 またおれが服溶かされちゃうのか。

 次はシャツの上半分か、それともついにジーパンか。

 なんでそんな野球拳みたいなノリなんだ!!


「オーケーです! 行きましょう!

 ヒカリさんの服は惜しいですが、先に進まねば!」

「判らないぞ、もしかしたら次はディーが犠牲になるかもしれないだろ!」

「リーダーが身をていして守ってくれると信じてます、私!」

「やめろォ!!」


 結局犠牲になるのはおれじゃないか。

 あと嬉しそうに言うな。


 一番奥に行く頃にはリーダー、服はパーカーのみで腰に革のポーチ、背中にシャベルを背負っている人になっちまうよ。

 どう見ても言い訳の余地がない素敵スタイルだ。


 しかしずんずん歩いて行こうとするディー。


 前衛が後ろから付いていくワケにもいかず、急いで追い付くしかないのだった。









管理者アドミナー。》


 てくてくとダンジョンの暗い道を歩いていると、頭の中で呼び出しがかかった。

 この視界のデジタルに表示される文字、もちろんワイズマンである。


《二件、報告が。》


 え、何か変わったことでもあったっけ?


 今は三叉路の正面左の通路を戻る最中だけど、周りを見ても特に変な所は無い。

 突き当たりの部屋もハズレ、何もなかった。

 スケルトンすら居なかったからな……。


《では最初の一件から。

 先程のスライム、そしてスケルトンソルジャーとの戦闘によって管理者、レベルアップしています。》


 おお!!


 あんだけ戦っていれば、そりゃレベルも上がっておかしくない、のか?

 服は失ったが、確かに得たものもあったのだ。


 そして、脳内でレベルアップの効果音が鳴った。

 メトロなイドの、新しい装備を手に入れた時のような電子的な音だ。


 …………あれ?

 こういうのって、戦いが終わった直後に鳴るモンじゃないの?


《後ろの、ディー、でしたか。彼女と管理者との会話を邪魔するつもりはありません。

 その為、今の互いに無言で歩いているタイミングで通知しました。》


 え。


 ってことは今の効果音、戦闘の直後は鳴らさずに、ワイズマンが今になって時間差で鳴らしたの?

 レベルアップ、そんな適当でいいの?


 謎は深まるばかりだった。


《――管理者とあのメスネ、少女の会話を邪魔するつもりはありません。》


 何!?

 なんなの!?


 さっきと同じ言葉をなんで繰り返したの!?

 そして何をちょっとだけ言いかけたの!?


《…………。》


 黙ってるんじゃない、文字で証拠が残ってるんだから!

 って、スクロールして消しやがった!


《レベルは9→10へと上昇。ステータスの変動は以下の通りです。》


 まるっと無視されてしまった。


 画面に映ったさっきの毒舌チックな謎のセリフも、既にどんどん新しい文字で上書きされて消えている。

 一体何が言いたかったんだろうか。


 いろいろと考える前に、画面におれのステータスがばばばっと表示されていく。


 ……まあいい、一先ひとまずこっちを見てみるか。



 ----------------


 名前:アケミヤ ヒカリ


 LV: 9 → 10


 HP: 45 → 50

 SP: 18 → 22

 MP:  5 →  7


 能力値

 STR(攻撃力): 9 → 11

 VIT(守備力):10 → 11

 INT(魔法攻撃力): 7 → 7

 RES(魔法防御力): 7 → 7

 SEN(命中・感覚):11 → 12

 AGI(速度):14 → 15

 LUC(運勢): 0(固定)


 技能:『ダッシュ』

    『スライディング』

    『挑発』

    『バックステップ』


 受動技能:『土木作業員』


 ----------------



《以上になります。》


 ふむむ。

 なるほど……。


 このダンジョンに入ってからあまりステータスを見る機会は無かったけど、徐々にではあるものの成長しているみたいだな。


 ……というより、洞窟に入る前からここまででレベルが5は上昇していることになる。驚きだ。

 だが、これだけ戦い続けてれば多少の成長は当たり前なのかもしれない。


 もしかすると、STRやVITの値だけを見れば、数値がレベルとともにディーに追いついたのかな?

 すると、物理攻撃(※得物はシャベル)に関してはディーと遜色ないくらいという事。

 これで前衛としてより役目を果たせるようになるのは、単純に嬉しい。


 INTとかRESはお察しだ。

 おれ、魔法使えないしな。

 決して本人のインテリジェンスさが足りないワケではないと信じたい。


 で、技能スキルの方も特に変わりな…………、ん?


 ワイズマン、スキルの所にある『バックステップ』って?


《先程の戦いで新しく取得した、技能スキルです。》


 ……おお!


 これで使える技が四つになったってコトか!

 でも、ダッシュとかスライディングとかと同じく、妙にまた『移動に使えるだけの技』の香りがするのは気のせいかな!


「ディー」

「はっはい! まくろうとなんてしてませんよ!!」


 同行している仲間の方を向いてみると、すげえ挙動不審だった。

 距離もやたら近く、なぜか前傾姿勢で手をこちらに伸ばしていた。


 タックルでもかまそうとしていたのだろうか。何故だ。

 おれ、PTのメンバーなんだけど。


「まくる……?」

「こっちの話ですから気になさらず! それで、どうしました?」


 おれが振り向いたとたんにシュバッと後ろにすさり、身体の前で手をぶんぶん振っている。

 ついでに手にした槍も振られている。

 氷の槍先は今は消えているから、ただのロッドみたくなってるけど。

 ディーが魔力を込めると、すぐさま刃が現れる仕組みだ。


「ああ、いや……。

 ディーの魔法じゃなくて、スキルってどんなのがあったかなって」


 確かおれの持ってるステータス・カードで見せてもらった時は、何か技能の欄にも書いてあったよな?

 と、前に向き直りながら伝えてみる。


 ディーも後ろで歩きながら、こちらに話してくれた。


「なぁんだ、そんなコトでしたか……。

 ありますよ。『三段突き』と『クイックストライク』と『鎧通よろいどおし』、あと『瞑想めいそう』ですね」

「なにそれカッコいい」


 聞くと、最初の三つはスピアに関したスキルとの事。


 『三段突き』は発動すると、通常一度の刺突の時間で、三連続で攻撃できるスキル。

 ただし一発の威力は低いのが欠点。

 『クイックストライク』は発動すれば、普段では考えられない早さの攻撃を一撃分、行うことができる。

 こちらは若干威力は下がるものの、その早さから相手に命中しやすい。

 『鎧通し』はディーもあまり使った事がないらしいが、命中しさえすれば、相手の防御力を多少無視してダメージを与えられるそうだ。

 名前の通り、鎧を着込んだ相手にも攻撃を通せるスキルなのだろう。


 ただ『瞑想』だけは魔法に関してのスキルで、『SPを徐々に消費していく代わりに、等量かそれ以上のMPを回復していく』という変わったモノだった。SPとMPのトレードオフとでも言えば伝わるだろうか。


 SPが減るものの、MPが切れた緊急時には使うべきなのかもしれない。

 ただしデメリットは、『瞑想』発動中は使用者は無防備になり、また攻撃を受けると、その瞬間にスキルの効果が中断されてしまうこと。らしい。

 これまた使い所を選びそうだな。


 適当に利用法を今考えるなら、戦闘中ではなく休憩中に『瞑想』して、MPを早く回復するとかかな?

 戦闘中にMPが切れたら『瞑想』してMPを、という考えもなくはないが、それだとおれ一人で敵と戦いながら無防備なディーを守らなければならない。

 ちょっとそれは非現実的なので、万が一MP切れを起こしたら、ディーには得物の水魔の氷槍(フロストロッド)で戦闘に回ってもらうべきだろう。


「へぇー、なるほどな…………。

 槍ってなんだか、手数で押す感じのスキルが多いんだな」

「確かにそうですねえ」


 ついでに必要な消費SPまで教えてもらった。


《管理者のデータベースに今聞いたスキル情報を登録しておきます。

 タイミングを問わず参照可能です。》


 利く所で気が利くワイズマン、ディーの技を記録してくれたようだ。

 こういう場面ではとても頼りになる。


 奇しくもこのタイミングで、ディーの技能を全て教えてもらったことになる。

 PTのリーダーとしては、この情報を活かすべきだろう。

 これで作戦も立てやすくなる。


 だ、だがしかし。

 そうなってくると、今度はおれのスキルが問題だ。


(ディーに比べて、おれのスキル……)


 なんだかアレじゃない?


 …………。


 ワイズマン、『バックステップ』のデータを出してくれ!


《了解しました。》

《『バックステップ』:消費SP 5 使用者の背後方向へ、低空での跳躍を行う》


 画面が切り替わり、スキルの詳細な解説が表れる。


 はあ、なるほど。

 要はただ単に、びよんっと後ろへ下がるだけだ。

 やっぱりそのまんまの意味だった。


 うーん。


 これ、わざわざ『技能スキル』として覚える意味、あるんだろうか……。

 せめてディーの槍のスキルのように、武器で攻撃するようなスキルが欲しいような……。


 いや、もはや何も言うまい。

 なんだかんだ言って、ダッシュやスライディングだって戦闘で使ってるしな。

 バックステップにも戦闘で輝く余地があるかもしれない。

 ……ないかもしれない。


《ここは一つ、実際に試してみましょう。》


 ワイズマンが提案してくる。


 え、でもそれ……、技使うと後ろに跳ぶんだろ?

 ディーに衝突するんじゃないか?


《…………チッ。》


 何!?

 なんでわざわざ文字で舌打ちする!?


 ワイズマンはおれをどうしたいんだよ!!


 さすがにPTメンバーに危害を加えるなんて、そんな……。

 と、後ろを向くと、それに気付いたディーがおれのすぐ後ろからささっと下がる。


「どどどうしましたヒカリさん?」

「………………」


 黙って前に向き直った。


 こっちはこっちで何してるんだ。


 ダンジョンと関係ない所で、謎は深まるばかりだった。


 

お茶目ワイズマン。


ではまた次回!

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