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第五話 : 後衛:巫女 前衛:無職


もしくはロール的には『観光客』でもよし!!


そんな主人公達の初戦闘です。

 

 

「ギャーーーー!!」

「いいからっ、離せっ!」

「とか言って離したら私を置いて逃げるんでしょう!?

 う、恨みます恨みますよ!?」


 ガシリ。


「んなワケあるか! まず腕を解け!」

「私一人寂しくここで朽ち果てて終(しま)いにはスケルトンになれって言うんですね!?

 長年連れ添ったこの私を捨てるなんて!!」

「言ってないし連れ添ってないし捨ててない!」


 洞窟の地底湖から、崩れた壁を挟んだ反対側。

 要は、今おれ達がいる場所。


 そこは偶然、先に向かって暗く狭い通路が伸びている袋小路になっていた。

 その小部屋にいたおれ達の元に。


 スケルトンの集団ががっちゃがっちゃぎっしぎっしと、猛烈な勢いで通路の先から走ってくる。


 軽くホラーな絵面だ。

 ヨシヒコなら失禁しかねない。


 そして、恐慌状態になってしまった人がここにも一人。


「こ、こうなったらヒカリさんも一緒に、それなら……」

「バカーーーーーー!!」


 後ろから羽交い締めにしてくる少女の名前はディーナ。

 ディーと呼ぶように本人からは言われている。


 魔人(ワーロック)という種族であり、この洞窟にあった祠と、ここからそう遠くない所にある湖を管理する『水守(ミズモリ)の巫女(ミコ)』という特殊な職業、肩書きを持っているそうだ。


 その大層な肩書きに違わずおれよりはよっぽど強い(この基準もどうかと思うけど)、……ハズだったのだが。


「ここが地獄の一丁目ですよヒカリさぁん…………」

「なんかとんでもないコト言い出した!!」


 それが今は、おれを後ろから氷山にぶつかって沈む某旅客船の某ポーズのようにがっしりとホールドし、何を血迷ったのか無理心中ライクなことを言い出した。


 テンパってるのにも程がある。


 なんでパニックを通り越して開き直っちゃってるんだこの子。


 前からは大量のガイコツの魔物《スケルトン・ソルジャー》が暗い道を元気に走ってきていて、後ろにはなんだかえへへうふふと昏(くら)い笑みを浮かべて拘束してくる少女(ディーナ)。


 相当ホラーな絵面だ。


 ヨシヒコなら案外喜んでいそうな気もする。

 ディーが自分に引っ付いているって部分に。


 ……や、そんな事考えてる場合じゃない!!


 というかこのままじゃどちらにしろスケルトンにやられるって!

 骨抜きにされる!!

 いや上手いコト言ってる場合か!

 そもそもそんなに上手くない!


 ――――じゃなくて、落ち着け!


 思い切り腕に力を込める。

 すると、手にシャベルのずしりとした重みを感じた。

 持つのがしんどいだのと言ってはいたが、こういう時にはこの重量感は頼もしい。


 よし……、まだ大丈夫だ、やれる。


 気を取り直したところで、身体がうまく動かせない事に気付いた。

 羽交い締めされてるんだから当たり前ですよね。


 おれは、

 落ち着いて。

 

 ――――後ろにヘッドバットをかました。


「ぐぎゃん!!」


 拘束が緩み、体の自由が戻る。

 そのまま通路を駆けてくる大量のガイコツから目を離さないようにして半身になり、横を向く。

 頭を抑えているディーに話しかけた。


「ディー」

「うう、ひどい…………」

「ごめん、ただ、落ち着かなくても良いからそのまま聞いてくれ」


 こういう時に、パニクる相手に『落ち着け』っていうのは逆効果だって聞いた覚えがある。


「よく考えてみろ、ディーはここに来るまで一人であのガイコツを倒してきたんだろ?

 今更驚くことも、怖がることもないじゃないか」


 敢えてゆっくりと言う。

 焦るな、焦るな。


 でも実際にはおれも怖い。

 いや、逃げ道も無い場所であの数に迫られるとさすがに怖い!!


 通路いっぱいにガイコツがひしめいてるし、ムチャクチャ足音の数も多いし、全員こっち見てるし!!


 けどこっちまで冷静じゃなくなったらそれこそ、めでたくスケルトンの仲間入りを果たしてしまう!

 チクショウ全然めでたくねえ!!


「そ、その時は来ると判ってましたから、魔法で……」

「なら今回も使えばいい。

 アイツらをまとめて攻撃できる魔法は? 狭い所でも使えるヤツ」

「『氷刃(アイスエッジ)』なら……でも、時間が掛かりますよ?」


 さっきも使っていた魔法か。

 壁に打撃を与えるぐらいだったから、充分に威力はあるのだろう。


 落ち着きが伝わったようで、ディーナも徐々に元の調子が戻る。

 やっぱりやれば出来る子のようだ。


 そして時間が必要なら、こっちが稼ぐしかない。

 最初からそのつもりだったけど。


「よし決まりだ。おれが前に出るからディーは魔法を!

 可能なら発動の時に合図をくれ!」


 ブリーフィングとも言えない作戦を伝えるのもそこそこに。

 すぐディーから離れて前に飛び出す。


 もうスケルトン・ソルジャーの一体はこの小部屋の入り口にまで差し掛かっていた。

 シャベルを体の横に構える。


 この部屋にまで入られたら、後続のホネどもがさらに雪崩れ込んでくる。

 それだけは絶対避けないと!


 そのためには、一体ずつしか来れない通路の所でせき止める!

 一対一で戦えば、複数を相手取るよりはまだマシだ!!


 だが、おれ一人でスケルトンの攻撃を凌ぎきれるか……?


 最前列の剣を掲げた敵に向かって、シャベルを斜めに振り上げる。


 ガキィッと鈍い音がしてシャベルと錆びきったロングソードがぶつかり、重い衝撃がこちらに伝わった。


 ヤバい、走って来た勢いもあってこちらに押し返される!

 さらに後ろのガイコツまで加われば……!


「そうだヒカリさん、これをっ!

 『属性付与:凍結(アイスエンチャント)』!!」


 後ろを振り返る余裕はない。

 ただ、ディーの声と共に変化が起きたのは判った。


 おれの持っていたシャベルが白く染まったのだ。

 シャベルのポール部分から刃先にかけて、色が変わっている。

 青色の混じったような白。


 間髪入れず、拮抗する相手のスケルトンにも異常が起きる。


 瞬く間に白い骨がさらに白くなったかと思うと、動かなくなってしまった。

 握っていたはずのロングソードが、がらんと下に落ちる。



 ――――スケルトンが、凍っていた。



 ……判ったぞ!


 ディーの今しがた叫んだ言葉、『アイスエンチャント』。

 おれの武器がそのまま氷属性(アイス)を付加されたのだ。


 おそらく、彼女の持つ『水』系統の魔法の一つなのだろう。


 ちらっと見れば、シャベルが白いのもただ色が変わったワケではなかった。

 取っ手こそ普通のままだが、先端に向かうにつれ薄く氷が表面に張り付いている。

 さらにシャベルの刃の周りにはシュルシュルと蛇のように冷気が渦巻いていた。


 そうか、これで攻撃を当てると敵が氷漬けになるのか!

 さしずめ、通常攻撃に『氷結』の状態異常を付与する、といった所か。


「助かった!!」


 よし、これならやれる!


 ディーからの返事はない。

 だが、背中の方でヴゥン……と、空間が歪むような気配がした。


 さっき穴を塞いだ時にも聞こえたから判る。

 ディーが魔法の詠唱、『氷刃(アイスエッジ)』の詠唱を始めたのだ。


 すぐ一体目の後ろに居た二体目のスケルトンが、先頭の異変を意に介さずにこちらに攻撃を仕掛けてくる。


 こちらが一歩だけ下がると、リーチが足りなかったのか、振り下ろされた剣は先頭の一体に叩き付けられた。

 なんと味方ごとおれを斬るつもりだったらしい。

 先頭の凍ったガイコツは敢えなく剣に砕かれ、肩からバキバキと割られてしまう。


 その一撃は、ガイコツ同士であっても骨を切り裂くもの。


 ……ただし、その相手が通常のスケルトンだったなら、だ。


 実際には凍りづけになっていた先頭の一体。

 地面にまで氷で磔(はりつけ)にされたスケルトン。

 錆びた剣はそいつを裂けずに、胴体の中央辺りで剣が止まる。


「もらった!!」


 手放せば良いのに、抜けない剣を引き抜こうとする二体目。


 蹌踉(よろめ)めいて崩れ落ちる先頭の一体越しにシャベルを当てるには、充分な隙ができていた。


 今度は、こちらのシャベルが二体目の肩に当たる。

 勢いもつけずに打ち付けたために威力はほとんどない、が。


 すると、やはりその打撃部から相手を氷が侵食し始めた。

 すぐさま『氷結』は肩から腰へ、肩から頭へと向かい、完全に二体目のスケルトンを氷の彫像へと変えてしまう。

 かなり凶悪な威力だ。


 と、一体目の氷結状態が解け、パキパキと薄氷を踏んだ時のような音と共にガイコツが元の状態へと戻った。


 だがそれも元とは言え味方の容赦無い同士討ちを受けた身。

 ダメージがありすぎたのか、崩れ落ちた態勢はさらに崩れる。


 遂には崩壊して、あっけなくおれの足元で骨の山へと戻ってしまった。

 HPの表示は今は見れないが、間違いなく0(ゼロ)になってしまっているだろう。


(あんまり凍ってる時間は長くない、のかな?)


 保(も)って十秒ほど。

 短ければ数秒程度だろう。


 それでも動きを止められる、というのは十分過ぎる利点だ。

 少なくとも、この場での目的を達成するためには。

 『時間稼ぎ』をするだけなら。


 次にまた、今度は凍った二体目の横から、三体目が割り込んでくる。

 狭い通路なのに割り込めたのは、相手がホネなためか、味方を気にしていないためか。


 どちらにせよおれはここで踏ん張って、相手を部屋に入れなければ良い。

 やることはそれだけ。


「せいやッ!」


 こちらの喉元めがけて横薙ぎにする剣を、反対側から縦にしたシャベルを振って受ける。


 ガリガリガリとポール部分が削られるものの、シャベルの刃になった部分でスケルトンの剣を防ぐことが出来た。

 さらに、それに合わせて冷気が急速にロングソードを伝っていき、ガイコツの手から氷結が起こる。


 合計二体のスケルトン・ソルジャーが狭い通路で置き物状態になり、後続のヤツらが多々羅(たたら)を踏んだ。


 これで、群れの前の方はせき止められたか!?


 しかしあとどれぐらい保(も)たせられるかな……?


 と、その時。


「ヒカリさん、いけます! しゃがんで!!」

「判った!!」


 声に応じて咄嗟に地面に伏せるほどにしゃがみ込む。

 目の前に骨くずの山と、二体目・三体目が氷結状態から戻るのが見えた。


 しかし、もう遅い!


「――『氷刃《アイスエッジ》』ッッ!!」


 ディーが槍を持つ両手を体の前で突き出し、叫んだ途端。


 さっき壁に撃った時とは比較にならない大きさのく(・)の字型の鋭い氷塊が、おれの頭上を氷片を撒き散らしながら直進する。


 その魔法で出来た氷の刃は両側の壁すれすれの幅を保ったまま通路を突き進み。


 そして、ついでのようにガイコツの胸部から上を叩き壊していく。


 二体や三体ではきかない数のバキバキという破砕音と、それに続くキシン、という水分が凝結する妙に静かな音。

 巨大な半透明の刃はそれだけを残して、通路の奥の闇へと消えていった。



 ……一瞬にして、通路に居たスケルトンは全滅してしまったのだ。







「は、はあぁ…………」


 青い髪を岩肌の地面に付けるのも気にせず、ディーが座り込む。


 なんて言って声を良いのか判らないけど……。


「取り敢えず、お疲れ様」

「まさか……、あんな数が来るなんて思いもしませんでしたよ……」

「それでもなんとかなるんだから、さっきの魔法はスゴかったな」


 いや本当に。


 まずおれ一人だったら戦う戦わない以前に、あの群れの下を技能(スキル)の『スライディング』ですり抜けられるかどうかを検討していただろう。


 ゲームのコマンド的には『たたかう・にげる・ダッシュでにげる・スライディングでにげる』の4つが並んでいる感じだ。

 ほぼ逃げるしかない驚愕のコマンドだった。


「大きいのを放つには、詠唱に時間がかかるのが難点ですけどね」

「だから壁に撃った一回目よりも、二回目の方が威力が高かったのか……」

「はい。あんな沢山のをまとめてやっつけるには、アレくらいじゃないといけないかなー、と」

「良い判断だったと思うぞ」


 そうですか、えへへへ……と、照れたように笑われてしまう。

 アイスエッジに巻き込まれたホネも全部まとめて青い燐光になってかき消えてしまったし、もうここら辺には敵も居なさそうだ。

 一旦息をつく余裕はある。


 恐らくさっきので全部だったんだろうな。

 ……逆に言えば、ディーが上げた大声で、一度に全員やって来てしまっただけなんだけどな。


「それで、さっきまたしちゃったミスは……」


 許してもらえますか? と聞かれてしまう。


 ミスというと、敵を呼び寄せてしまった事だろう、たぶん。

 あと他には、敵を前にしてテンパっちゃったとかか?

 それでも、まあ……。


「その後で充分過ぎるくらい活躍してたし、気に病むこともないだろ。

 遅かれ早かれ先に進むなら、戦ってたと思うしなあ」

「そ、そうなんですか?」

「うん、もちろん。

 あと一々ミスした所で、そんなに謝るコトもないと思うんだけど」


 どうせこっちだって大したコトは出来ないんだし。


 むしろ失敗すること多いし。すごく多いし。

 テンパった末に井戸に飛び込んだりもするし。


 あれ、よっぽどおれの方がヤバい?

 ははは、そんなまさか。


「あはは、父以外と一緒に魔物と戦うのなんて初めてなもので、足を引っぱっちゃうんじゃないかと……」

「いや、こっちの方が足引っ張ってるんじゃ……?

 とにかくあんなに頑張ってるんだから、自分を卑下しなくて大丈夫!」

「はっ……はい!」

「あとさっきの『エンチャント』だっけ、アレ本当に助かったよ」


 ずっとこの話を続けるのもお説教みたいでイヤなので、話題を切り替えてしまう。


 『属性付与:凍結(アイスエンチャント)』。


 持っている武器に、相手を氷漬けにする効果を付与(エンチャント)する魔法。


 強力なサポートだった。

 あの援護がなければ、マジで最初の一体か二体目で詰んでいたかもしれない。


「とっさに唱えましたけど、なんだかすぐに使いこなしてましたねえ」

「あー、なんとなく知ってたからね」

「…………?」


 元の世界のゲームで、なんて言ったら説明に時間が掛かってしまう。

 ので、今ははぐらかしておいた。


「だけどやっぱり便利なんだな、魔法って……」


 どうみてもあの魔法のお陰で、自分の能力値(ステータス)以上に戦えていたように思う。

 ……おれも魔法を覚えれば多少マシになるんだろうか。


「一応さっきのやつ(付与魔法)は、デメリットもありますよ?」

「え、そうなの?」

「はい、結構。唱えた人、術者自身の武器に属性を付与するなら問題ないんですが、別の仲間の人に使うなら、互いの距離が開くと効果が切れちゃうんですよ」

「へえ……」

「あとこれは他の魔法にも言えますけど、今回の場合『水』属性に耐性のある敵だったら効かなかったり、そもそも魔法防御力(RES)が高いと効かなかったり」


 ああ、そこでRESのパラメータが効果を及ぼすのか。


「それにエンチャント魔法では最初唱えるた時は他の魔法と同じように術者のMP(マジックポイント)を使うんですけど、その後武器の属性付与を維持するのには魔法を受けた人のMPを消費していく、って聞いたことがありあります」


 ふむ。

 ってことは、こっちのMPも減ってたのかな。


 そう考えた途端、身体が僅かにグラッとふらついた。


「うわっ?」

「大丈夫ですか!?」


 シャベルを支えにしてなんとか立つ。


「ああ、ちょっと眩暈(めまい)がしただけ」

「それもしかして、MPが一気に減ってしまったからじゃ?」


 MPが0近くになると、体内の魔力が切れたということ。

 急激にMPが減った場合は体が魔素と魔力の平衡、バランスを失ってこうなるらしい。


「うーん、魔法にもいろいろ制限とかあるのか……」


 というかおれ、あの短い時間かけられた魔法を維持するくらいのMPも無いんじゃね? と気がついた。

 ファンタジーの結晶こと、異世界の魔法を使う日は遠い。悔しい。


「他の私の使える魔法についても、全部話しておきましょうか?」

「全部?」

「はい。だって協力するんですから、自分の使えるものは互いに知っておいた方が良いと思うんですよ」


 座った方がいいですよとディーが言ってくれる。

 眩暈が~、とか言ってしまったから、恐らく気遣われているのだろう。


 だが、この場所にずっと留まっているのも危うい気がするな。

 後ろは天井が崩落したばかりだし、スケルトンがこんなに沢山来たってことは、敵の巡回路になっている可能性もある。


 ディーにもそう思ったことを伝えた。


「だから、ここはキリの良い所まで、少なくとも多少安全な場所まで移動した方が良いと思う。

 ディーもこの場所は知らないんだろ?」

「知ってるのは祠があった所までですね」


 何度かは『水守』の仕事として来ていたが、こんな所がある事も知らなかったらしい。

 つまり、この先がどうなっているのかは全くの未知という事。


「ただ、進む道はこの一本しかないんだよな……」


 おれの後ろにある、スケルトンがどんどこ迫って来た通路を指差す。

 先は明かりも少ないために暗くてよく見えないが、大分遠くまでは続いているようだった。


 崩れた壁の方はもう完全に塞がれていてどうしようもない。


「でもさっきの黒いもやだって、原因は判らないんですよね?

 もしかしたら先に進めば何かあるかもしれませんし、行ってみませんか?」

「ふむむ……」


 スケルトンは地底湖の周辺では毎回、湖の中から湧くようにして出現した。

 それだけなら湖自体がアヤシイんじゃないかと考えられるだろう。


 だが、実際には少し違った。

 その先に進んだところの通路からも、スケルトン・ソルジャーは出現したのだ。

 すると、スケルトンの出現と湖にはあまり関係がないことも考えられる。


 ……まあ、何にせよこの先に行ってみないと判断がつかないか。

 ディーの言う通りだ。


「判った、取り敢えずこの道を進んでみよう。それでひらけた所で敵が居なさそうなポイントがあれば、そこで休憩。

 ディー、立てるか?」

「はい、少しMPも回復してきたみたいです」


 ああそっか、MPもHP(ヒットポイント)やSP《スキルポイント》と同じように、時間が経つと回復していくのか。

 それなら、また戦闘になった時におれのMPさえ回復していれば、さっきのエンチャントを掛けてもらうことも出来るだろう。


「よし、なら行こう」

「はい!」


 返事はしたものの立ち上がらない。

 代わりに声とともに手をこちらに伸ばしてきた。

 とてもイイ笑顔をしている。


「……?」


 杖代わりの支えでも欲しいんだろうか?

 まあ、洞窟だから暗いし足場も悪いからなあ……。


 シャベルを手渡した。


「……………………これは?」

「仕方ないな、戦闘になったら返してくれよ?

 意外と重いから気を付けてな」

「…………」


 無言で立ち上がるディー。

 自分で持っていた槍の柄を地面について立ち上がり、シャベルも反対側の手で持つ。


 そのまま何も言わず、ざり……ざり……と二つの長物で地面を前後にこする。


 なんかスキーしてる人みたいな謎の動きになっていた。


「な、何!? 怖いんだけど!!」


 そういや槍も持ってたんじゃん!!

 シャベルを渡したイミって!?

 ……と言うことも出来ない妙な迫力があった。


「えっと、どうした? 何か体調でも悪くなった?」


 魔素にやられたとか?

 でも、普通のヒトのおれよりは魔人(ワーロック)である彼女のほうが、よほど魔素侵蝕(マソシンショク)に対して耐性があるハズだ。


「……体調は悪くなってません。

 ……ちょっと気を悪くはしましたけど」

「どういう事!?」


 おれにどうしろと。


 幸いにもすぐに不気味な動作はやめて、シャベルもこちらに返してくれた。

 ため息もついでに一つつかれてしまったが。

 理由を聞くとまた怖いことになりそうな気がする。



「ヒカリさんって、もしかして」

「もしかして?」



 …………。



「……………………」

「言いかけて途中で黙らないで!! 頼むから!!」



 どうしろと。

 

 


荒ぶるディーナさんのポーズ。


お読み頂き有難うございました、ではまた次回!


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