08何も許していない花嫁は幸せそうに笑った
微かに苦笑いして、説明していくと彼は笑ってそうだなと納得してくれた。
「おれが選んだ嫁なだけあるな」
「それは、うーん。関係ないよ?」
ルフェインは手を掴んでこっちにと海のある方へ向かう。海が見える方に行くと、大きい船がどでんとあった。ちょっと海から浮いている。
「これ……えっ?」
「空舟だ。お前と異世界の新婚旅行用に作っておいた。使用が百年ばかり早くなったけどな」
彼はイタズラな顔をしている。用意を色々してくれたらしい。なんというか、次に会うときまでといっていたがずっと待ち侘びられていたらしい。
異世界で楽しく過ごそうとしたけど、予想外の悲惨な人生になっていたので楽しむどころではなかったのに。
となれば、もうこの世界ではどうがんばっても嫌な思い出がありすぎて一人でいたくない。治安悪いんだよね。特に自分の人生周りが。
空舟に案内されて、内装を自慢げに紹介される。
「す、すごい!」
「だろ?」
「現代の豪邸!」
有名人の別荘みたい。目をあちこちキラキラさせちゃうのは、当たり前の豪華さに嬉しくなる。
「お前が過ごしやすいように内装をたくさん参考にして作り上げたんだ」
「これってもしかして外から見た大きさと中から見た大きさって同じ?」
「ああ。流石にそういうのは説明要らずだな」
「うん。私と同じ趣味の人はわかる」
異世界のあるある。今やそういう設定は世に出て、人々を虜にするファンタジーな道具の一つ。
「こっちにはシアターもある」
「凄すぎる」
「だろ?」
さっきからルフェインは「だろ?」しか言ってない。余程、パルミティアに見せたかったのだな。でも、言いたいことはすごくすごくわかる。
「凄すぎるよルフェイン。ここで暮らせば私もう外出ないでいいかな?」
「ん?……おれはお前といろんなところに行きてぇなぁ」
と、甘い声で囁かれてグヌっとなる。太陽みたいにカラッとしているかと思えば、夜のしっとりとした雰囲気もある。
「その顔はずるい。顔が良過ぎるのも大問題」
「ははっ。そりゃ、嬉しいぜ」
笑ってその美貌を余すことなく見せつけてくる。
「だめか?おれはたくさんお前とこの世界を楽しみたい。詫びもあるが、この世界でお前を見るだけだと思ってたのに転がり込んできた幸運に、浮かれてるんだ」
「ルフェイン……正直そこまでいってもらえる覚えがなくて」
突然求婚された。
「ま、まあ、それもそうか」
男神の彼は照れくさそうにこちらを好きになった理由を話し出す。
「お前のお爺さんなんだが、飲み友達でな。お前のことを毎回言うから一緒に地上の映像を見ているうちに好きになってしまった」
「待って待って、まっって?いや、動物助けたとか、なにかいいことをしたとか。そうでもなくておじいちゃんと見てて好きになったの?私のドキュメンタリー密着映像見て?」
衝撃の一言。まさにそれだ。もっと、ロマンティックな理由だと思ってたんだけども。あと、自身の祖父が関係していたとは。確かに幼い頃に可愛がられていたとは聞いていた。
物心ついた頃には既に他界していたので、記憶は全くないけど。その祖父と仲が良かった人に惚れられて、今異世界にいるなんて人生とは思わないよね。
「まさかの出会い方で、びっくり過ぎて」
「すまんな。ロマンチックじゃなくて」
「運命なさ過ぎてどうでもよくなるよ」
ふふ、と笑みを浮かべたら彼はハハハ、と声に出して笑う。笑っていくとこちらも笑みを浮かべてふふ、とさらに声を上げる。
「ねえ、少しいい?」
「なんだ?なにかしてほしいか?」
「あのね、生まれたところを撃ってほしいなって」
故郷の襲撃について相談。
「撃つ?なにを?」
「ビーム」
「ビーム?」
「映画で見たことない?」
とにかく、破壊をしてほしいのだと望む。
「ビームかぁ、ちょい待ってくれ。今検索するから」
彼は時間を求めて、検索の仕草をする。横から覗き込むとそこにはインターネットの検索画面が。
ロゴは違うけどまんま、検索履歴画面が表示されていた。驚く。彼でもそういうのを検索するのだなぁと。
ビームについて一通り予習し終わった彼が、目を輝かせてなんだこれはっ、と期待に胸を咲かせていた。
彼はビームを打ち込むな!と楽しそうに四角いホログラムのような画面を映し出して、自分の血のつながりだけしかない人達がそこに写っている。
「どんなふうにするの?私がやりたいかな。できたら」
「えっ。おれが撃ち込みたいたい!」
因果応報にしたいというより、新しい玩具をやりたがっている声音。故郷の王族や元家族達が映っている。
そこに落ちるエネルギーの塊。黒焦げにするのかと思えば、わざと避けた。こうやって毎日ランダムに命の危機に晒されていけば精神的に追い込めるなと楽しげに言われる。
肩でも打ち抜きたい。肩を撃ち抜いたら動かなくなるぞ、とつまらなくなることを示唆される。
「それは面白くないかな。じゃあ、毎日コツコツやろっと」
これが、日々の日課になるのならこちらもスカッとなる。緩やかに、激しく滅んでいく場所。やったことは他国に知られていく。
それとルフェインの花嫁ということは全世界に知られたらしい。もう、勘違いさせてはいけないとやったと、彼は笑う。
「愛するお前をもう嫌な目に遭わせたくない」
「あうかもしれないけど、私はね。やり返したいからできれば見逃しておいて」
やらせねばやり返せないではないか。もう、やられっぱなしにはならないもんね。ルフェインはにこりと笑って、手を繋ぎたいと言い出す。それに、パルミティアは手をこちらから繋ぐ。
この世界は大嫌いだけど彼のことは変わらず好ましさがある。うっかりでこの環境に落とされたとしても。
「ん。どうぞ」
「おう!」
遠慮なくギュッと手を掴む。顔がいい。思わず目を背けるくらいのかっこよさに、顔もじわりと赤くなる。こんなかっこいい相手から結婚を請われて嬉しくない人なんて、いないと思う。ルフェインは凄く嬉しそうに手を振って、クイッと誘導するように歩き出す。
「どこに行くの?」
「隣の隣の国からパーティに誘われて、そこで舞踏会があるから踊れるかなと誘いを承諾したんだ」
「えっ?私は踊りとか無理だけど」
「貴族の婚約者だったのにか?」
「聖女の力を取り入れるためだから、教える必要がないって捨て置かれてたんだよねぇ。習わせればいいのに」
コルセットなんて死んでもごめんだが。あれは嫌だ。パーティに呼びたいのは全ての国だろう。どうしてそこにしたのかとたずねてみたら恥ずかしそうに見てくる。
「あの国のドレスのデザイナーにとてもお前に似合いそうなものがあってな。着て欲しくてそこにした」
その国の人達の人柄、とかでなくてよかった。彼と仲が良い人間がいたらそこでなにか不利益が襲いかかってきた時に彼が悲しむ。そうはなってほしくないけれど、彼が権力者の欲しがる存在である限り付き纏うものになる。
どれだけ無欲な人と関わり合っても、仲を割くようにこちらを邪魔したりする人は必ず出てくるだろう。
「ドレス、今着ていい?ダンスの練習したいから」
「いいぞ!」
既製品ではなく、オーダーメイドなのだろう。しかし、神たる男にかかれば出来上がった状態の美しいドレスを着させられる。
初めてと言ってもいい、高級そうなものに身を包んだ。生まれた家にいた時は安物のドレスか、型落ちドレスばかり着せられていた。
うちは平民なので多分、お金は家族達は奪っていた。着服されたので、あんなに色々自分の周りは見苦しかったのだ。つくづく、家を出てよかったと心底思う。
「ルフェイン。どうかな?」
聞いておいてなんだけど、答えは大体予測できる。彼はキラキラとした顔を服とこちらに、溢れんばかりに見せてきた。
「似合うな!おれの目に狂いはなかった!」
スッと手を横に動かして踊るための動作をされ、こちらも頬を嬉しさに緩ませる。小さな妖精達が気を利かせて、ふわりと浮かび光り出す。
ステップを教えてもらいながら、いつの間にか森のほとりへ移動していることに気づいた。森の中で妖精の光を纏って踊るなんてロマンティックだ。
「これもおじいちゃんの受け売り?」
「ははっ、当たりだ!」
彼は得意げに胸を張って、偽ることなく、気持ちの良い言葉と共に笑う。潔さにパルミティアもつられて、ふふと声を出して笑った。
最後まで読んでくださりありがとうございました。ポチッと⭐︎の評価をしていただければ幸いです。聞いていた話と違うとなれば環境にキレますよね




