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かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
奪われた瞳と放たれた銃弾
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店長と刑事⑤

 ドールショップつきくさ

 その店は主に熊をモチーフにしたぬいぐるみや小物を扱う店だった。十代の女の子に人気の店で、一日に多くの女子高生が立ち寄っては、かわいらしいぬいぐるみや小物を買って帰っていた。店員は女性が三人。シフト制で休みがない。

 その中の一人が秋月芽衣だった。

 芽衣も元々この店が大好きで客として何度も訪れていた。

 そんなある日、店長が突然ここで働いてみないかと誘ってきたのだ。最初は迷っていたのだが、大学の通う間だけでも大好きなくまに囲まれて仕事をするのもいいかもしれないと思い、ドールショップに務めるようになった。

 ―芽衣ちゃん、私もここで働きたい

 バイトを始めたころ、まだ中学生に上がったばかりの幼なじみがそんなことを話したのを覚えている。

 ―中学生はだめよ。とめて、高校にあがってからだよ

 そういうと彼女は、一瞬残念そうな顔をしたがすぐに笑顔を浮かべた。

 ―じゃあ。バイトできる高校にいって、ここでバイトするわ。それまでいてね。芽衣ちゃん

 そういったのも、もう三年も前の話だ。

 本来ならば、彼女は高校に通っている。しかし、彼女はここにはいなかった。

 彼女はすでにこの世にいないからだ。

「ああ。もう二年になるのね」

 芽衣はそんなことをつぶやきながら、店の掃除をしていた。

 そのとき、ふいに視線を感じた。

 芽衣は店の外を見る。

 すると、そこには中年の男がこちら

 をじっと見ていたのだ。

 見覚えのある顔だった。

 だれだろう。

 どこでみたのだろうか。

 男はじっと店内を見ている。

 どうして、私を見るの。

 私がなにをしたというの。

 なにかした覚えはなかった。

 芽衣の中で恐怖が過る。

 芽衣は思わず、掃除用モップをもったまま飛び出した。

 男はそこにいた。飛び出してきた彼女のほうを見る。

 芽衣は思わず、モップの先を男に突き刺す。

「あなた、なんですか?店をじっと覗いて……。ストーカーですか?」

 男は驚くこともなく、じっと芽衣を見る。

「すまない。そういうわけではないよ」

 男の口調は優しかった。

「でも、覗いていたじゃないですか?」

「悪かったよ。これも捜査なのでな」

「捜査?刑事さん?」

 刑事?

 刑事ならさっきも来ていたではないか。

「まだなにか?」

 男は黙り込んだ。

「君になにを話した?」

「はい?」

「昼間に尋ねてきただろう。あの刑事になにを話した?」

「えっと……。気を付けろって……」

「それだけ?」

 芽衣は昼間に尋ねてきた刑事のことを思い出す。

 三十ぐらいの刑事とそれよりもいくつか若い刑事の二人組が突然現れて、三か月前の事件のことを聞いてきた。

 なぜ、いまさら三か月前の事件の話をするのだろうと思った。それにその事件はニュースでみただけで芽衣にはまったく関係のないものではないか。

 たまたま、被害にあう前にこの店を訪れただけにすぎないのに、彼らはなにを聞こうというのかと疑問に思った。

 それを尋ねるよりも早く刑事さんが告げたことに衝撃を受けた。

「それ以外になにか話したのか?彼は……」

 彼?

 どちらのことなのだろうか。

「三か月前の亜衣さんの事件から連続的に同じような事件が起こっていることについて……」

「この店の常連の少女ばかりが狙われていると……」

 芽衣ははっとする。

「はい。そんなことをいってました」

「まったく余計なことを……」

 中年の男が愚痴る。

 最後にだれかの名前を呼んだようだが、聞こえなかった。

「まあいい。それよりも店長はいないのか?ずっと見張っていたが姿がみえなかったようだが……」

「ずっと?いつからですか?」

「昼間からだ。君にそれを告げた刑事たちと入れ替わりにさ」

「え?どういうことですか?」

「とにかく店長は?」

「今日は来ていませんが……。もしかして、刑事さんは店長を疑っているのですか?」

「……」

 刑事は黙り込んだ。

「そんなはずないです。店長はそういう人ではありません。すごくいいひとなんです」

 刑事はため息を漏らす。

「あのなあ。お嬢ちゃん。いい人だからって犯罪を起こさないとはかぎらないだろう」

「そうですけど……。でも、絶対にないです。確かに三か月前も疑われましたが、アリバイもあって、容疑は晴れたはずです」

「そうだな。そうかもしれねえ。でも、あいつが動いている。なにもないとはかぎらねえ」

 あいつ?

 あいつとはだれなのだろうか。

「まあいい。またお邪魔するよ。店長に伝えておいてくれ。おれが話を聞く。決して、あいつ……芦屋刑事にはいうなってな」

「はい?」

「じゃぁな」

 刑事はそのまま去っていった。



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