店長と刑事④
「あら?もう戻ってきたのですか?」
店長らしき男の連れられるまま、ほんの数時間前に訪れたばかりの店に入った。
そこには、さきほど自分と面会してくれた女性が一人商品の手入れをしていた。最初に入ったときにいた青年たちの姿はない。
「そんな態度はいけないよ。彼女は客だ」
「この子に言ってませんよ。あなたですよ。店長。こんなに早く戻るなんて珍しい。確か、遠くに行くとか言ってませんでした?」
「うーん。そのつもりだったけど、予定変更」
「遠く?どこへ行くつもりだったんだ?」
彼らの後ろから入ってきた男が尋ねた。
「ちょっと墓参りみたいなものかな」
「墓参り?お前にしては珍しいな。京都に帰ったのか?」
「違うよ。昔、父と訪れた町。いまは廃校になっている小学校へいってみようかなって思ってね」
「そういえば、お前の親父も放浪癖があったな」
「父さんも?」
「お前と同じってことだ。親子似ているよ。本当」
「そうかなあ」
店長は首を傾げる。
「そんなことはどうでもいいです。それよりもお客さん連れてきたみたいですね。というか、さっき来た子じゃないですか」
そこでようやく店員は洋子に気づいたようだった。
「そうだよ。店の前でボーっとしていたから連れてきた」
「連れてきた?……って濡れているじゃないの。ほらほら、奥に入って……」
店員はそういいながら、洋子の腕を掴むなり強引に店の奥へと連れていく。
それに対して、店長の男がニコニコと笑いながら手をふり、となりにいる刑事が顔を歪めている。
洋子はされるがのまま奥へと入っていった。
「桃史郎……」
「ん?」
「お前、なに考えているんだ?あの子の依頼を受けるのか?」
「それはあの子次第だよ。ていうか、あの子の依頼を知っているのか?尚孝」
「おそらく死んだ姉さんに逢いたいってところだろう」
「ふーん、そうなんだ~」
「おまっ……知らなかったのかよ」
「知るわけがない。なにせ、僕はさっき帰ってきたばかりだし、彼女が来ることはわかっていたけど内容までは知らないもん」
「いやいやいや。そんなはずないだろう。俺でも想像ついたんだ。お前が把握していないはずがないだろう。第一、ナツキがいる」
「どうかなあ。たぶん、あの子がきた時間はまだナツキは学校にいただろうから、話は聞いていないと思うよ」
「学校?あいつ、学校行っているのか?」
「うん。学校に通いたいっていうから通わせているの」
「知らなかった」
「言っていないからねえ。さて……」
突然、店長が店の入り口のほうへと歩き出した。
「どこへ行く?」
「散歩だよ。散歩。新宿にでも行こうかなあ」
「お前、何しに戻ってきたんだ」
「あの子を店に案内しただけだよ。こう見えても僕は忙しいんでね。じゃあね。刑事さん」
「おいおいおい。どこが忙しいんだよ。ただフラフラしているだけだろう」
「そうかもね」
店長はにっこりと笑うと店を後にした。




