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かぐら骨董店の祓い屋は弓を引く  作者: 野林緑里
矢が射抜く一輪の花
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美しい花には刺がある②

「いつも思うよ。もしも、俺が手を差しのべていたら、彼女は死なずにすんだんじゃないかって……」


そしたら、もしかしたら今頃、笑顔でいたのかもしれない。亮太郎には、わかっていた。彼女の視線がいつも自分に注がれていたこと。どれほどに想われていたかということを知っていたはずなのに、結局は彼女を裏切り、死へ追い詰めたのだ。


「麗は死んだ。死んだはずなのに……」

「ああ、確認は取れている。君が第一発見者だったのだろう?」


 遺体を見つけたのは亮太郎本人だ。昨晩から帰ってこないという彼女の親から連絡を受けた亮太郎が探した。彼女は学校の塀の外。電信柱のそばで生き絶えていた。


彼女は学校の屋上から飛び降りたのだ。




「でも、あれは麗だった」

「いや、江川樹里だ。君の言う少女じゃない」

「違う。あれは麗だ。おれには麗にか見えなかった! 甦ったんだ! 復讐するために……」


 亮太郎は頭を抱え込み、伏せた。


「園田さんへの復讐?」


 芦屋が尋ねる。


「違う! おれへの復讐だ! おれが裏切ったから……。だから……」



「君への復讐? でも、君は襲われてはいない。襲われたのは園田さんだ。君じゃない」


 亮太郎は尚孝を見る。それでも、怯えている。


「園田さんのあとは自分だと?」

「そうじゃない。園田先輩はとばっちりを受けただけだ! おれへの当て付けで園田先輩を襲っているんだ!」

「それはどういうことだ?」

「おれ、園田先輩と関係をもったんだ」


尚孝は目を見開いた。


「園田先輩に誘われて、つい……」

「おいおい、マジか。近頃の高校生は……」


尚孝は困惑した。


「だから、麗が勘違いして……」

「ちょっと、まて」

「え?」

「お前、見たな」


尚孝の言葉で亮太郎は怪訝な顔をする。


「なんの話ですか?」

「彼女の魂を見ただろう」

「魂? 」

「なんでもいい。彼女の気配とか感じなかったか? もしくは、最近夢をみた。いや違う」


 亮太郎はきょとんとした顔で尚孝を見る。


「君の元にだれか来なかったか? 例えば、黒ずくめの……」


 亮太郎がはっとする。


「来ました。黒いマントをした男。顔はみえなかったけど、手が皺だらけだったから、老人だと思います」

「そいつになにか言われなかったか?たとえば、彼女が許せないでいるとか。彼女の供養をしろとか」


 亮太郎はうなづいた。


「そうか……。そのためになにかしろと言われたかい」

「花を……。一輪の花を毎日あげろって……」

「彼女の自殺現場にか?」

「はい。紙を渡されました。なんか変な文字が書かれた紙に包んで、麗が死んだ場所にお供えしろと……。そしたら麗はゆるしてくれると……」


普通は信じないだろう。けれど、この少年はそれを信じた。彼らは巧みに、亮太郎を誘導したのだ。


「そういうことか……」

「芦屋刑事」


 そのとき、部下の叫び声が聞こえてきた。


「どうした。柿原」

「現れました。渋谷です」

「わかった。すぐ行く」

「あの……」


 亮太郎は不安な顔を芦屋に向ける。


「君はここにいなさい。柿原。後は頼む。おれは渋谷に向かう」

「はい。わかりました」


 尚孝は病室を出ると、麻美と目があった。


「大丈夫だ。君の友達は戻ってくる。君もここで待っていなさい」


 尚孝は麻美の肩をぽんとたたく。


「いくぞ」

「はい」


 尚孝の合図に数人の刑事たちが彼に続いて歩き出した。

 その様子を見守っていた麻美は亮太郎のほうを振り替える。

 亮太郎の顔は青いままだ。


「いったい、なにが起こっているの?」


 麻美は状況がいまいちわからずにいた。


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