骨董店での一時②
「いらっしゃい」
「あっ、わざわざ来てくれたのか。芦屋さん」
「くるさ。電話だけではイマイチ把握できない。それにあまり聞かれたくもないからな」
そういいながら、芦屋尚孝はサングラスを取りテーブルに置きながら、椅子に腰かけた。
「なにか飲みますか?」
「ああ。頼むよ」
「おい。澤村。俺も……」
「自分でいれろ」
「ちっ」
彼女は店の奥へといってしまった。朝矢は仏頂面で尚孝の前に腰かけた。
「相変わらずだな。幼馴染みだっけ?」
「そうだよ。ガキんとき、家が近所だったんだよ。つうか、知ってることだろう」
「確かに知ってる。お前らとは、それなりのつきあいだからな。でも、ただの幼馴染みなのか?」
「はあ? なに言ってんだよ。それ以外のなにものでもねえよ。それにこいつ、付き合ってるやついるし……」
「付き合っているやつ? 」
「芦屋さんもあったことあるだろう。 忘れたのか? ボケ」
「ああ、あの関西弁の子か。じゃあ、もうひとりの……」
「ねえよ! 論外だ」
朝矢の即答に尚孝は苦笑する。
「ハクシュン」
そのとき、背後からくしゃみが聞こえ来た。振り返ると、朝矢の同世代らしい男が鼻をさすっている。
いつの間に入ってきたのだろうか。
芦屋刑事は、ぎょっとした。
「よっ。トモ」
彼は左手で鼻をさすり、右手を軽く上げる。
「いつから、そこにいた? シゲ」
驚く芦屋と違い、朝矢の口調は冷静そのもの。
「さっき、帰ってきたんや」
「また、山男使ったな」
「いやあ。便利やでえ。こいつおったら、交通量ただやでえ」
そういう彼の背後から、もう一匹・狼の姿を現した。金色の毛色を持つ狼。
「たく、もう少し獣をいたわらぬか。人間」
「ええやんかあ。ほんに助かったで」
彼の背景に山男にまたがって、まるで馬のように狼を走らせている姿がありありと映し出される。
「おまえなあ」
「わー。山男だあ」
さっきまで野風と遊んでいたはずの夏樹が男と呼ばれた狼に抱き着いてきた。
「これこれ。突然、やめぬか」
「今度は山男遊んで」
「しかたない」
「鬼ごっこしようよ。鬼は僕だから、逃げてよねえ」
「おいおい。勝手に決めるな」
「数えるよ。いーち」
「山男。遊んでやれ」
「朝矢。わしはこやつを送ってきた……」
「いいから、遊んでやれ。後が面倒だ」
「……。承知した。主の申すままに……」
そういうと山男がその場から姿を消した。
「おお。刑事はん。久しぶりやなあ」
そういいながら、男は手を差し出した。
「高柳くんだったな」
「ああそうや。朝矢とは昔からの親友の高柳成都や」
「昔から?」
彼は怪訝な顔をする。
「まあ、あの頃はおらんかったからなあ……。ちょうど、京都に帰っとったんや」
「あら。帰ったの?」
「あっ、さくらーーーーーー」
成都という男は、彼女をみるなり両手を広げて近寄ってきた。
広げられた両手が彼に抱き着こうとしたが、避けられてしまい空を抱きしめる態勢になる。
「あれ?」
そのまま、成都の体が前へと倒れて、見事に床で顔面をぶつけた。
「やめてよね。せっかくのコーヒーがこぼれるわ」
桜花は、お盆で持ってきたコーヒーを芦屋刑事に差し出した。
「ありがとう」
「いいえ」
「さくら~。俺と久しぶりにあったんやでえ。そっけないよ。ひどいよ~」
「うるさいわよ」
桜花は背後で喚いている成都にあきれかえる
。
「彼女の彼氏?」
「一応……。俺にもわからん」




