97話 いざ雪原です
「そ、そんなにあるんだ……」
「結構あるね」
ファティマが驚く横でクーはいつもの調子であった。クーはそれならばと続け。
「ならほかのも買おう」
「どんなものがあるんですか?」
「いろいろある」
火守のほかに土守や風守、それに命守の購入を勧められた。
毒守なる特殊なものもあるが効果の種類も多く、また、癖の強いものばかりということで今回は見送ることとなる。
それはそれとして、着ける箇所や形状も悩みどころであった。
「見た目も重要」
クーが結晶板を操作すれば画像が表示される。指でスライドさせていき、どのようなものがあるかをミズキに見せていったが。
「よくわからないです」
「そう」
何度か操作して出てきたのは黒くて細長いものだった。
「これとか可愛い」
「猫ちゃん尻尾じゃないですか! ボクは嫌ですよ、それにどうやって着けるんですか!」
「くっつく」
クーが言うには腰に付けるだけで着脱が可能らしい。しかし、重要なところはそこではないとミズキは脱力する。
「もっと普通のがいいですよ……」
「こういうのはどうかな」
そう言ってファティマが見せたものは、兎を象った赤色のヘアクリップだった。
「か、可愛すぎないですか?」
ものすごく女の子らしいアクセサリーにミズキはたじろぐ。
「これにすべき。性能もいい」
「ボクには似合わないんじゃないかなぁ……?」
「絶対似合うと思うよ。それともやっぱり嫌だった……?」
いいものだというクーの推しにミズキは抵抗を試みるが、ファティマが悲しそうな表情をしたことで抵抗を断念する。
そうして命守はそのヘアクリップとなってしまった。
「ほかは、ほかは無難のにしましょう!」
結局、残りは腕輪型や護符といったものにした。次々落札していったが、取り寄せるのに時間が掛かるとのことで、直接各店舗へと取りに向かう。
全てを受け取ったあと、風守を付ければ突然体が軽くなった。
「すごいです! 体が軽くなりましたよ!」
風守の効果は動作の補助と風の守りだ。主要な効果は補助のほうで、上位のものとなればその効果はかなりのものとなる。
土守は守りの強化で、直接強化するタイプと障壁を張るタイプがあり、今回購入したものは直接強化するタイプだった。
こちらも上位のものになればかなりの防御力の強化が見込めるものだ。
最後に付けた兎型のヘアクリップである命守は、傷の回復と体力の回復、それと毒属性に対する抵抗力を上昇させる効果があるものだ。
どれもなんの効果に重点を置くかで多くの種類があり、上位のものや複数の効果を高めたものは、総じて信じられないほどの値段になる。
今回ミズキが購入したものは命守が特に高く、一二○万シリーグを越えていた。次に高い火守が五○万ほどで、残りの風守と土守は一五万ほどだった。
「可愛い」
「うん、よく似合ってるよ」
兎形のヘアクリップを付けると、クーとファティマに次々と褒められ、ミズキは顔を赤くしてしまう。
ファティマも腕輪型の火守を購入しており、『大雪原』へ行く準備はこうして整っていった。
*
『変転せし六光』の青い光が照りつけるじりじりとした暑さの中、準備を終えたミズキたちは、『森の都』の一角に設置されたポータルの前へと来ていた。
そして、ミズキを抱いたままのクーは器用に黄色の結晶板を操作している。
『白玉雪』の情報を集め位置を予想していたが、それもすぐに終わり、クーは結晶板を魔法箱へとしまい込んだ。
「行く」
クーが一言呟けば、三人はポータルの中へと消えていった。ポータルを通り過ぎればそこは眩しい銀の世界だ。穏やかな雪景色が遥か先まで続いている。
尖った山々が遠くに見え、辺りにはなだらかな丘が広がっていた。
いくら穏やかといってもそこは極寒の地だ。先ほどまで居た『森の都』との気温差は凄まじかった。
「寒いですぅぅぅぅ!?」
寒がるミズキが全身を震わせていた。ファティマも同様に手足を震わせ腕をさすっている。まずは厚手のテントを張ると三人は急いで中へと入った。
それからクーが火晶石ストーブを点け、外界との寒暖差を遮断する魔道具を設置する。そうしてようやく暖かさを確保することができた。
そしてミズキはうさ耳フード付きの防寒具へと着替えるとやっと一息つくことができた。そのミズキの感情に合わせてフードの耳はぴこぴこと動く。
その横でファティマも防寒効果の高い服へと着替えれば探索の準備が整った。
「この気温差はどうにかならないんですか」
「無理」
ミズキが愚痴を言うも、クーに一蹴されフードの耳が垂れてしまう。そしてクーは魔法箱から灯杖を取り出すと詠唱し始めた。




