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70話 亡霊の剣


「ぎゃああああお化けですぅぅぅぅ!?」


 ミズキが叫ぶ中、振るわれた剣が長椅子をなぎ払いこちらへと迫ってきた。


 二人は分かれるように回避し床に飛び込んでいた。着地に失敗したミズキは転がってしまっていたが急いで起き上がる。


 ファティマはすでに片手剣を抜き放っていた。


「これだけ大きな剣と打ち合えば何かわかるかもね……!」


 片手剣を構え、剣の魔物を見据えていた。ミズキはそれは駄目だと思った。

 今までの魔物とは訳が違うのだ。あの重量が振るわれたらたまったものではない。


 ミズキはファティマが危ないと思い、恐怖を押し込み長柄戦斧を握ると飛び出した。


 剣がすくい上げるように振るわれ、ミズキの長柄戦斧と交差する。


 重い金属音と共に火花が弾けミズキが衝撃で吹き飛ばされた。しかし、高い位置の壁に着地したミズキが再び跳躍する。


 亡霊へと斬りかかるがミズキの長柄戦斧は素通りしてしまう。


「ええ!?」


 剣以外には攻撃が当たらないようで、着地したミズキはそれならばと刀身を狙うことにする。


「〈魔力刃(ミラグイント)〉!」


 立ち向かったとはいえ、この恐怖の時間を早く終わらせたかった為の〈魔力刃〉だった。そのまま飛びかかり斬ろうとする。


 しかし、『ばとるん二号改』に魔力膜が形成された瞬間、爆発してしまった。


 体勢を崩した先に居るのは剣を持った亡霊だ。剣が振るわれミズキの腹部に剣のトゲが突き刺さった。


 そのまま振り回され投げ飛ばされてしまう。長椅子をなぎ倒し、ミズキがファティマの下に転がり込んだ。


「ミズキ!」


 ファティマが駆けつけ、〈回復〉を掛ければ潰された腹部がみるみるうちに回復していく。傷の治ったミズキが勢い良く起き上がり。


「なんで!?」


 なぜ『ばとるん二号改』が爆発したのかミズキはわからない。しかし、そのあいだにも迫ってきていた亡霊が剣を振り上げていた。


 咄嗟とっさに『ばとるん一号』を取り出しその一撃を防いだが、『ばとるん一号』は弾き飛ばされると同時に砕け散ってしまった。


「なんでええええ!?」

「ほかに武器はないの!?」


 ファティマがミズキに確認するが、ミズキの持っていた武器は一号と二号改のふたつだけだった。


「ないです! もうないですぅぅぅ!」


 ミズキがわたわたしていると何かに足を取られて転んでしまう。柄だけとなっていた二号改だった。とにかく何も無いよりはマシだと考え急いで拾う。


「自信はないけど私がやるしかないのかな!」


 ファティマが片手剣を握り剣を持つ亡霊と相対していた。


 剣と剣が振られ交差する。


 ファティマの片手剣が凄まじい勢いで弾かれミズキのおなかに突き刺さった。


「ぎゃあああああ!?」

「だ、大丈夫!?」


 転がり飛んでいったミズキに駆け寄ると、慣れた手つきで片手剣を引き抜き〈回復〉を掛けていく。

 そうすればミズキのおなかに開いた穴が瞬時に塞がっていった。


「死ぬかと思いました……!」


 傷の治ったミズキが飛び起きる。


「ごめんね、やっぱり私じゃ無理みたい」

「ど、どうしよう!?」

「逃げよう」

「な、なるほど……!」


 迫る亡霊は移動が遅いのか、迫ってきている最中だった。二人はもと来た通路から逃げようと走り始める。


 入り口に差しかかったところでまたもやミズキが転倒した。剣が刺さった際に飛んでいった『ばとるん二号改』の柄だ。


「そ、そうでした!」


 急いで拾い再び走りだす。入り口を通り過ぎた先にある階段を駆け上がっていき、ホールに出たところで二人は息を整えていた。


「はぁ、はぁ……ここまで逃げれば追って来ないですよね……?」

「だといいんだけど」


 ゴトッ……


 そんな何かが当たる音が階段のある通路から聞こえてきた。その音は続いている。そして、通路の中に亡霊の姿が見えた。


「うぎゃああああ!」


 走りだしたミズキは城の入り口へと向かい、扉を開けようとしたが扉はびくともしない。


「なんでえええ! なんでええええええ!?」


 ばんばん叩くが、白いもやに包まれた扉は依然として動かない。


「逃走防止かも……」


 なぜそんなものがあるのかミズキはわからなかった。武器もない、逃げ道もない。どうすればいいのか混乱する頭で考えとにかく叫ぶ。


「〈帰還(ディレット)〉! でぃれっとおおおお!」


 しかし、いつものように転送を待機している感覚は無く、不発であることがわかりミズキは絶望する。剣を持った亡霊が迫りつつあった。


 「こっち!」


 ファティマがミズキの腕を引いて走りだす。階段を登り今はとにかく離れることに専念した。


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