46話 探索前の休息
「不寝番の順番は決めたから、あとはてきとうに寝るだけね。アルクたちもそのまま寝てていいわ」
ルーリアがアルクたちに指示を出していく。
「え、いいんですか?」
「数も十分だし大丈夫よ、私も眠るつもりだから。食事の準備はできてるのかしら? 何かしているようには見えなかったけど……」
アルクの確認に答えたルーリアだったが、食事の準備がされていないことを疑問に思う。
今出ているものは、ジャラックがコーヒーを入れるために取り出した火晶石焜炉と鍋だけだからだ。
「それ、僕も気になっていたんだよね」
「固焼きパニネそのままは硬いぞ」
「うんうん、アルクなら問題はないだろうけど俺たちには硬いよね~」
アルクとペルナキアが続く。カレヒスも同様だった。
「それはですね!」
しかし、ミズキが得意げにランドセル型魔法箱を置くと、中に入っているものを取り出していく。
二本の串に刺さった大ぶりの肉だ。たれが適度に焦がされ、食欲をそそるなんともいえない芳香を漂わせていた。
次々と取り出していけば人数分があっという間に揃う。ミズキとジャラック以外の視線が、まるで焼きたてのようなそれに釘付けとなっていた。
「焼きたてよね?」
ルーリアがまじまじと見つめている。
「僕もそう思う」
「焼きたてだな」
アルクとペルナキアが同意し。
「どう見てもそうだよね~」
カレヒスはカラカラ笑っていた。ミズキがどうぞと言えば各々が食べ始め、すぐに串だけとなってしまった。
ジャラックが予備のコップを用意するとミズキが水筒から紅茶をそそいでいく。
「熱々ね?」
「湯気出てますよね」
「俺もそう見えるな」
「まぁそうだよねぇ」
先ほどと同じようようなやり取りがされる。
「なんでかしら?」
「ジャラックさんが言うにはボクの魔法箱は特別らしいのです! でしたよね? ジャラックさん」
ルーリアの疑問に答えたのはミズキだ。
「ええ、恐らくは中の時間が進まないか劣化が止まっているかと」
ミズキに話を振られたジャラックが、コーヒーをすすりながら自身の予想をのべていた。
「アルク。ミズキはジャラックとのコンビなのよね?」
「そのはずです」
「よくやったわ、アルク」
食事を終えたミズキたちは毛布に包まり睡眠をとっていた。
ルーリアは一緒に寝ることを固辞したミズキを説得し、今はミズキを抱き枕にして幸せそうにしている。
夜が明ける前にミズキは目を覚ます。自身を拘束する戒めからもなんとか脱し、日課としている素振りを始めた。
ひとつの型を続けるのではなく、多くの場合を想定した型をなぞっていった。
振り上げと振り下ろしはもちろんのこと、正面を切り上げたり柄で素早く突く動作など多種にわたる。
使いどころがあるか疑問なものもあるが、一応は行っていく。
最後に連撃を練習をするがまだ使える種類も少く、二連続までしか使えないが一心に続けていた。
そうしていると、夜空に見える光の靄が螺旋を描き一点に集中していく。
それはミズキがまだ慣れない箱庭の夜明け。爆発するように光輝くのは『全て慈しむ紫光』だ。爆光は次第に収まり大地を照らす。
その光にジャラックたちも目を覚ましたようだ。食事を終えたミズキたちは再び草原を進み、今は遺跡の跡地のような場所へと来ていた。
崩壊した建物に隠れるようにしてある入り口の前で、大共闘の者たちが待機している。
「ではまず回復薬を配ります。質の高いものを一人十個は行き渡るように用意したわ。後の返却も求めないから気兼ねなく使ってね」
ルーリアの指示で回復薬が配られていき、迷宮の探索方法についても話し始めた。
「各グループに配置されている私の結盟員に対して〈風の知らせ〉を使い、相互にやり取りして手分けして探索するわ。基本的に結盟員の指示に従ってくれればいいから面倒はないはずよ。質問はあるかしら」
「危なくなったらどうするんだ」
「勝てないと判断した時点で逃げていいし、そもそも交戦が目的じゃないから避けられる場合は避けていいわ。必要なときはほかのグループと合流できるように誘導もするから安心して。ほかにはないかしら」
ルーリアは反応がないことを確認すると、螺旋状の羽が飾りとなった長術杖を掲げ詠唱する。
「風は伝えてくれる、風は教えてくれる、広く早くどこまでも、〈風の知らせ〉」
黄色く光る波紋が広がり、周りに集まっていた者たちを包み込んでいった。
「これで私たちは離れていても意思を伝達できるようになったから、準備のできたグループから探索を開始よ」




