表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/175

32話 列車に乗って向かいます


「あれ、ポータルは使わないのですか?」

「失礼、もしかしてこちらに来てからの日が浅いので?」


 ミズキの様子に気づいたリアルトも立ち止まり、振り返ると遠慮がちに確認する。


「はい、最近来たばかりです」

「そうでしたか。おっと、先ほどのご質問でしたね。答えは私が庭人(ローナ)だからです。私たち庭人はあなた方人形とは違い、ポータルを使うことができませんからね」


 ポータルを使うにはカードが必要だからだ。人形ならば当然所持しているものだが、庭人は一部を除いて所持する者はいないとリアルトが説明する。


「そうだったのですか。すごく不便そうです……」

「不便ではありますが、足りない部分は人形の方々に補って頂いていますよ。それと例外的ではありますが、創精霊や大精霊に認められた者たちはポータルを使うことができます。っと今度はこちらです」


 ミズキが案内されたのは大通り横にある階段を降りた先だった。長い空間が広がり、どこか駅のプラットフォームのようにも見える。


 設置された椅子には、買いもの袋を手に持ち船をぐ者や、黄色の水晶板を触る者、立ったまま談笑する者たちが何かを待っているようだった。


 線上の段差を挟んだ向こう側にも、同じように待つ人々が見て取れる。


「こちらが『列車(イスニージス)』のプラットフォームです」


 『列車イスニージス』という言葉は聞きなれなかった。なんとなくイメージが伝わり想像はできるのだが、明確な答えを出すことができない。


「電車みいなものですか?」

「デンシャ? あまり聞きなれない響きですね。どういった意味があるのでしょう?」

「え? あ、気にしないでください」


 なんとなく聞いてみたがどうやら意味は通じないようだった。これも上手く翻訳されていないものなのだろう。


「そうですか。あ、来たみたいですよ」


 リンリンというベルの音が響き渡るなか、大通りの下をり下がるようにしてやってきたのはモノレールのようなものだった。


 木造の箱型が大通りの下を走り、箱を支える支柱が道の裏側にある溝へと差し込まれている。


 『列車』が滑り込んでくると低くうなる音が小さくなり、やがて目の前で停止した。


「おお、すごい!」

「では早速乗りましょう」


 中に入ると案外広く、両側にいくつも座席が並びミズキはバスのようだと思った。


 席のひとつにミズキたちは腰掛けると、再びベルの音が鳴り『列車』が動きだした。すぐにプラットフォームを飛び出し窓から見える景色は一変する。


 眼下に広がる大小様々な建物や通路、行き交う人々が流れていく。


 建物が密集しているため広大な視界ではないが、建物の中にすら入り込みアトラクションのようでもあった。


 流れゆく景色をミズキが眺めているとリアルトが話しかける。


「どうですか。この景色、実は結構気に入っているんですよ」

「ボクもなんだか楽しいのでこの流れる景色は好きです。もっと下だとまた違った景色になりそうですよね」


 ミズキの言葉をリアルトが否定する。


「いえ、中層や下層には『列車』はありませんよ。そのため、上層では案外横方向への移動は便利なんです。上下の移動だけは直通の昇降機が近くにないと難儀してしまいますが……」


 確かに横方向の移動はポータルが仕えない場合、凄まじく不便なものとなるだろう。


 横方向だけとはいえ列車によって移動できることは大きく、この巨大な街を徒歩で移動したいとは思えなかった。


「それにしても北部上層の家が欲しいとは珍しい方です」

「そんなに珍しいのですか?」

「ええ、実は同業の方々からあの辺り一帯の利権を買い取らされてしまったのですが、住みたいと言われた方は今まで一人も居なかったほどです」

「そ、そんなにですか……」


 誰も住みたがらないほどの騒音とはいかほどのものか、想像したミズキは息をむ。


「ええ、全く買い手が付かなくて困っていたのですよ」


 そんなミズキとは対照的にリアルトがカラカラと笑う。


「騒音を除外すれば最上層ですから日当たりもいいですし、周囲に工業施設も少ないいところなのですけどね」


 『列車』は何度か途中の駅に止まりながらも走り続けていた。ふと遠くで鐘の鳴る音が聞こえたとき、巨大な建物の中へと入っていく。


 大きく迂回うかいする円状の軌道を取り、横向きになるとそこで停止した。


「着いたのですか?」

「いえ、ひとまずここで乗り換えるんです。ここはちょうど『摩天楼(プリニバス)』の真下で、ここを中心に放射状に大通りと『列車』が通っているんです」

「へぇ~、実用的なんですね。『摩天楼』はどういった場所なんですか?」

「そうですね、一番有名なのは『千里眼ルダナール』と呼ばれる方が最上階に住んでおられるということでしょうか。なんでもお風呂がお好きで、最上階には『森の都』を一望できる露天風呂があるといううわさがあります」


 ほかには大浴場などもあると、行き交う人々を避けながら話していた。


「お風呂屋さんもあるのですか、今度行ってみたいです!」

「それ以外ですと有名な結盟の本拠地だったりもしますね。と、こちらです」


 リアルトについていくミズキだったが、予想以上に行き交う人が多く、はぐれないようにするだけでも苦労するほどだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし、面白いと思いましたらクリックしてくださると作者が喜びます。一日一回だけ投票できます。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ