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30話 競売所で換金です


 ミズキはリティスが何を言っているのかわからなかった。次第に目が見開かれ口が開いたまま閉じなくなってしまう。


 リティスはミズキが大事に取ってあった素材を、全て使ってしまったと言っているのだ。


「使ってしまったんですか?」


 リティスが顔を背けたままこくりと頷く。


「ボクのコレクション、全部……?」


 再び頷くリティス。


「ぁ、ぁぁ……」

「……ごめんなさい」


 多大なる犠牲を払いばとるん二号を手に入れたミズキ。傷心のままばとるん二号を引きずる姿はいたましく、とぼとぼと鏡へ歩いていく。


 ジャラックとの約束を果たすために、鏡の中へと消えていった。


   *


 夜天に覆われた『森の都』の町並みを、紫と橙色の光晶石がきらめき照らしていた。


 日中と変わらぬ喧騒けんそうのなかを人々は行き交う。ある者は行きつけの店に向かい、ある者は渡り通路の上で探索の成果を仲間たちに豪語ごうごしていた。


 そんなときにやってきたミズキがうろんげに辺りを見まわしていた。

 力なく風の導き石へと競売所を念じる。


 風が吹き目的地までのルートが頭の中へ入ってくると、うつむいたまま近くのポータルへと歩いていき、中へと消えていった。


 来ることがわかっていたのか目の前にはジャラックが居た。


「ミズキ?」


 心配そうに声を掛けるが、長柄戦斧を引きづるミズキからの返事はない。


「とりあえずそこに居ては邪魔になります。移動しましょう」


 ジャラックがその手を引き競売所へ向かった。


「一体どうしたのですか? 何があったのです?」

「ボクの……ボクの、コレクション……」

「コレクションですか?」

「全部、使われちゃいました……」


 そう声を絞り出すとばとるん二号を掲げて見せる。


「もしかして集めていた素材が使われてしまったのですか?」


 こくりと頷く。


「それはなんとも、残念でしたね……どうしましょうか。競売は今度にしますか?」

「いえ、ジャラックさんに迷惑になってしまうので行きます」

「わかりました」


 競売所は今いる上層の大通りに面した建物の中にあった。建物内は広く、カウンターが線のように室内を二分している。


 線の向こう側では職員と思われる者たちがいそがしそうにしている。それぞれの仕事をこなしているようだ。


 こちら側には受付と思われるカウンターの前に並ぶ者と、テーブルに座り談笑している者たちが居る。


 横にある壁では、文字と数字が書かれた板が複数人の手によって掛けかえられ続けている。


 高所にかけられた板は棒を使って器用にかけかえられていた。


 ミズキたちは受付のひとつへと向かい列に並んだ。順番が来ると魔法箱から今回集めた素材を取り出しカウンターの上に乗せていく。


 ジャラックが即売を依頼すると受付がそれらを手際よく裁定する。それもすぐに終わり、金額の書かれた紙が提示された。


「こちらの金額になりますが構いませんか?」

「ええ、構いませんよ」

「わかりました。ではこの明細を持ってあちらで提示金額を受け取ってください」


 受付が二枚の書類にサインすると片方をジャラックへと手渡した。


 指示された場所で書類を提示する。そうすると担当に現物とカードのどちらで支払うかで聞かれ、ジャラックがカードと答えていた。


「共同ですので二分割でお願いします」


 二人がそれぞれ顕示したカードに、職員が奥から持ってきたカードを合わせると小さく発光した。

 

「それでは金額をご確認ください」


 ジャラックがカードに記載された金額を確認すると職員に向かってうなずく。


 その横ではミズキがジャラックの服のすそを引っ張っていた。


「ジャラックさん、お金はどこにあるんです? カードを触れ合わせただけですよね?」

「ミズキは知りませんでしたか。このカードの中にお金が入っているんですよ」

「え、そうなんですか!?」


 ミズキがカードを顕示し確認すれば数字がいくつか書かれていた。


「少しいいですか?」


 ジャラックがミズキのカードをのぞき込み金額を確認する。


「ちゃんと入っていますね。確認もしましたしここを離れましょう」

「またのご利用をお待ちしています」


 少し離れたところでジャラックが振り向き。


「そういえば、カードは必要なときに目に見えるお金にすることも可能ですよ」


 そういうと手を広げ、その上にカードをかざすと虚空から丸い硬貨が何枚が転がった。


「おお、すごいです! 便利ですね!」


「ミズキにもできますよ」


 ミズキも同じように手の平にカードをかざせば、じゃらじゃらと硬貨が落ちてきた。


「おお、たくさん出ました!」


 手の平に乗り切らず、硬貨が何枚か落ちてしまう。


「金額を連想すれば出てくる量も調整できますよ」

「わかりました。このシリーグって書いてあるところがお金ですよね。結構入ってると思うんですけど、五○万シリーグって多いんですか? 少ないんですか?」


 ミズキが戻れと念じたら硬貨がカードに吸い込まれていき、書かれた金額が増えていった。


「結構多いと思いますよ。なにせ大型の魔物を二人で倒しましたからね。普通はもっと大人数でいきますよ」

「なるほど。家って買えるのかな……?」


 カードをじっと見ていたミズキが突然そんなことをつぶやいた。


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