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23話 世界の空


 辺りはまだ暗く、体を揺すられ目を覚ましたジャラックの目に飛び込んできたのは、のぞき込むミズキの顔であった。


「ミズキ?」

「ジャラックさんすごいですよ! 満天の星空です! 満天ですよ!」


 ジャラックは起き上がるとミズキと共に天幕から這い出る。そこに広がるのは柱のあいだを埋め尽くす全周満天の星空だった。


 ミズキが以前見たことのある星空と違い、天の川のような密度が夜空全域に広がっていた。そして驚くべきことに星の光が動いてもいる。


 信じられない光景に興奮冷めやらぬミズキが、ジャラックを起こしてしまったのも無理はない。そう思わせるほどの星が営む光は魅力的だった。


「星が、星が動いてますよ!」


 ミズキが興奮しながら夜空を指差していた。


「星は動くものでしょう」

「ボクの居た世界では動かないですよ! あれ、動いてはいましたね? でも、こんなに不規則には動いてなかったですよ!」


 ミズキの世界ではなるほど違うのだとジャラックは得心し、ミズキの世界はどう違うのだろうと興味が湧いていた。


「ミズキの世界ではどういった夜空なのですか?」

「えっと、ボクの世界の夜空はもっと暗いです。その代わりに地上って言っていいのかな、周りは光にあふれてましたよ。もちろん星の光がふらふら動くこともないですし規則的に動いてました」

「規則的にですか。それはなんとも面白いですねぇ」


 ミズキのこことはまるで違うといった話に、ジャラックはますます興味を引かれることとなった。


「ほかには月っていう白くて丸い大きな星があったんです。でもここには無くてびっくりしました」

「『変転せし六光(カラリム)』が丸いのですか? すごいですね、なぜ丸いのでしょう?」

「え、『変転せし六光』ってなんですか?」

「おや、知りませんでしたか。今も上に見える四角く光るものが『変転せし六光』ですよ」


 ジャラックはそういって上空にある正六面体を指し示した。


「え!? あの四角いのがお月様だったんですか!?」


 ミズキが信じられないといった様子で見上げていた。


「そうですよ。この箱庭を作ったと伝わる二人の創精霊のうちの一人が居ると言われてもいます」

「創精霊ですか……? 二人ということはもう一人はまさか太陽ですか……?」

「はい。今は見えませんが『全て慈しむ紫光(オールター)』と呼ばれています」

「やっぱり!」

「ミズキの世界では『全て慈しむ紫光』も違うのですか?」

「明るいのは同じなんですけどボクの世界では白色ですよ?」


 ミズキがこことの違いを説明する。


「白色ですか……すごく寒そうなのですが大丈夫なのですか?」」


 この世界で白は水や氷をつかさどる色だからだ。そんな寒い色をジャラックは想像してしまった。


「え、とても暖かいですよ? 寒いときもありますしすごく暑いときもありますけど……」

「すごい世界ですね……」


 太陽の違いにも驚いていたが、ジャラックは話を戻し、気になっていたことを尋ねる。


「『変転せし六光』が丸いのにも理由が?」


 ジャラックの知る常識だと月は四角いもので、丸い月など想像すらできない。その理由に関して大いに興味を引かれていた。


「理由っていうのかな、大きいものは丸いですよ?」


 しかし、ミズキが語ったのは説明にもなっていない説明だった。良くわからずジャラックは続きをうながした。


 ミズキの居た世界では、巨大なものほど細部のおうとつが相対的に小さくなり、物質が一箇所に集まる性質上丸くなるといったものだった。


「大きいものは丸い、信じられません……」


 ジャラックは驚愕きょうがくを隠さずにつぶやいていた。


「ボクだって月が四角くてびっくりでしたよ」

「では先ほどの星の動きが違うというのは?」

「ボクの住む世界だと星は動かないんです。厳密に言うと動いてるように見えないんです。けれどボクたちの住む星が回っているので、規則的に動いてるように見えるんですよ」


 星が動かないと思っていたジャラックはますます混乱してしまう。


「星に住む? 回る? 訳がわかりませんよ」

「え、この世界は回らないんですか?」

「天地がひっくり返ればみんな落ちてしまいますよ?」


 地面と空が動き、位置が逆転してしまったら空に向かって落ちていくのではないか。ジャラックはそう考えていた。


「え、でも太陽は地平に沈みますよね?」


 ミズキがきょとんとした表情で疑問に思ったことを口にする。


「『全て慈しむ紫光』は上空を規則的に旋回していますよ。それを利用して大体の自分の位置がわかるほどです」


 ここでの太陽は、ミズキが思っていたものとはやはり違った。


「それもびっくりです……ボクの世界とは全然違いますよ。太陽はずっと光っていますし、ボクたちの住む星が回転することで昼夜があるんです」

「全くわかりませんねぇ」


 ジャラックはうなると、ミズキが何か説明できそうなものがないかを考え始めた。思い立ったのは丸いものと明かりか何かを使い説明することだ。


 ミズキがジャラックに頼み光晶石ランタンを取り出してもらう。


 自身は巨大マカロンを取り出し、ジャラックの剣で縁に印として切込みを入れてもらった。


 光晶石ランタンで照らされた巨大マカロンを回し始める。自分たちの居る場所が昼のときは反対側が夜だということ。


 回し続け、今度は自分たちの場所が夜になることを説明していった。


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